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街へいきましょう、そうしましょう

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【モンスターを50匹倒した:20DP】

【剣士を倒した:5DP

※巨乳好きのためボーナスDP発生:200DP】

【冒険者と仲良くなった:5DP】

【ダンジョンマスター≪ノーブルゴーレム≫を倒した:50DP】

【モンスターを100匹退治した:40DP】

【ダンジョンマスター≪ビッグスライム≫を倒した:55DP】

【称号[裸エプロン紳士]を得た:50DP】


合計425DP 獲得

アドバイス:もっと巨乳好きを狩れ、狩り尽くせっ!

=============================


 今回のDP獲得は突っ込みどころが多いな。


 剣士って冒険者だよね? 倒したってなに? しかも何でその後に仲良くなってるの?

 巨乳好き倒したボーナス多過ぎだろ。そして最後のアドバイスじゃなくて命令か願望になってるし。

 最後の称号って何だよ!? 性癖カミングアウトしてないし(く、口には出してない)、何気にポイント高いぞ!?


 ……DPがたくさん貰えたから、文句は敢えて口には出さない。


 DPを大量にゲット出来たので、このDPをスラりんを除く黒姫、紅牙、ユエ、シルヴァリオンに80DPずつ分配して自由にさせる。トリスが俺にくれた物と同様に、機能を制限した腕輪を各人にプレゼント済みだ。


 フロアを好きに改装するなり、部下となるモンスターを生み出すなり、欲しい物を購入するなり好きにするだろう。俺の端末から購入内容を確認できるし、俺もいちいち各人に合わせて購入を考えたり代行するのは面倒だから構わない。


 俺も残ったDPの使い道を考えながら、ユエに会いにポータルを使って第二階層へ移動する。


 ポータルはダンジョンに住人登録した者しか使えない、各階へ自由に移動できる魔方陣。ティルも既に登録してある。


 ――方向音痴なのか、五階層まであるもののさして広くも複雑でもないダンジョン内で迷い、見つけた時に泣きながら怒られた為だ。ぶっちゃけ俺に非があるか疑問だが(そもそもダンジョン=“迷”宮の事だよな?)、泣く子には勝てんかった。


「……あれ?」


 二階層に来たはずが、何故か降り注ぐ太陽の光。頬を撫でる風、風に揺れてサラサラと鳴る草、緑の匂い。


 どう見ても草原……いや、広場と言った方が良いか。離れた周囲に取り囲むように木々がびっしりと並んで生えている。あれは壁代わりだろう、きっとここは外界に見えるだけのダンジョンなんだ。


 ダンジョン改築の欄に【墓場セット】とか【草原セット】とかあったし。


「――主様、いらっしゃい」


 振り向くと一軒のログハウスが建っていて、そこからユエが出てきたところだった。


「ユエに頼みが有って来たんだけど、随分と大胆に作り替えたもんだね」


 前はそれこそ石製の通路と部屋しかなかった。


「――ん、やっぱり外を感じられる方が良い」

「そうそう、引き籠ってると不健康だし……ってダンジョンマスターの台詞じゃないな」


 とはいえ、こんな風に外をダンジョン内で再現できるとは思わなかった。まぁこの空や太陽だって、たぶん映像を映しているとかそんな感じの偽者だろうが。


 まさにインドア系アウトドア。


「部下とか召喚しなかったのか?」

「内装と家でポイントかなり使った。今はいない」


 衝動買いしたのか? なんだかユエとは近いものを感じるような気もする。あるいはマスターと生み出されたモンスターというのは、親子のように似ている部分があるものなんだろうか?


「主様、入ってお茶でも飲む?」

「いや、今日はユエに頼み事があってさ。ほら、ダンジョン潰したおかげで証が二つ手に入っただろ? それを領都まで行って換金しようかと思って。ついでに、サリーシャ領主に挨拶行こうかとね」


 あとは良いドワーフの職人がいたら仕事頼みたいし、エルフとかホビットとか他の種族がいるなら是非とも見てみたい。


 ――世間一般的には、それらの種族より(ダンジョンマスター)の方が珍しいだろうけどな!


「そういう訳で、ユエと黒姫には一緒についてきてもら……」

「直ぐ準備する」


 皆まで言わせずログハウスに戻るユエ。最後まで言わせてもらえなくて寂しい気もするが、ダンジョンの入り口で待つ声をかけポータルで第三階層に移動する。


「――今度は夜空に満月か、随分とわかりやすいな」


 今度はダンジョンらしい迷路に出た。


 黒い大理石のような材質の通路に、ぼんやりとした光を放つ魔法の照明。フロアの天井はユエの所と同じように一見して大空の様に見えるが、あっちと違ってこちらは満月が浮かぶ夜空だ。


 吸血鬼がいるダンジョンならば、まさにうってつけの雰囲気を醸し出していると言えるな。


「ご主人様ではありませんか。ワタクシめに何が御用でしょうか?」

 

 振り返ると黒姫がこちらの姿を認め優雅に一礼した所だった。ポータルはフロアの主の待機場所の傍に設定されているから、直ぐに会えて助かる。


 会いに行く度に迷路を抜けるのは面倒だしな。


 黒姫にも領都に行くので同行して欲しい旨を伝えると二つ返事で了解、すぐに準備すると言ってくれた。


「留守中の事を下の者に言い含めてきますので、少々お時間を頂けますかご主人様?」

「ああ、構わないよ。黒姫は部下を召喚したんだ?」


 俺の問いに頷くと、軽く両手を打ち合わせる黒姫。何しているんだと思ったら、頭上から羽音が聞こえてきた。


「うおっ!?」


 俺の頭の直ぐ上を通過したのは巨大な蝙蝠。それが黒姫の横に着地……したかと思うと、今度は黒姫の背後から黒くてユラユラした何かが立ち昇る。


 ――影だ。黒姫の影が立ち昇り、黒姫より頭半個分ほど背の高い、長髪の女性のシルエットとなる。そしてその影絵の様なものは厚みを持ち、まるで黒の絵の具で塗りつぶされた裸身のようになり、黒姫の傍で膝を着いた。


「【シャドウストーカー】と【ジャイアントバット】でございます。戦闘能力はさして高くありませんが、指揮や雑務を任すには丁度良いと思い召喚致しました」


 黒姫の言葉が終わると蝙蝠は俺に向かってキィと小さく鳴き、影女は大げさに一礼して見せた。まぁ、ご主人様(黒姫)のご主人様(俺)だもんな。


 紹介してもらった後、前言の通り留守中に関する事で何やら部下に言い始めたので一声掛けてその場を後にした。


 別にまだ冒険者が来るわけでもないだろうし、特別言う事があるとも思えな……あ、ティルが来ていたりするか。間違って襲ったら、既に俺含めティルを『友人扱い』している側近連中に、塵も残さず消滅させられる事は想像に容易い。


 特に自分の武勇伝を語りたがる紅牙とか、興味深々で聞き上手なティルの事を一番気に入っているからな。


 紅牙とシルヴァリオン、スラりんは残念ながら留守番してもらうよう既に伝えてある。流石に都会に行くには悪目立ちし過ぎるからしょうがない。


 今度はダンジョンの入り口にポータルで移動すると、青い空を眺めながらはしゃぐ牡丹姉さんがいた。今回はトリスが定期報告で冥界に行っちゃって、牡丹姉さんが代わりに案内してくれるらしい。


「あ、太郎さん。準備はどうですか?」

「あとは準備を待つだけですよ。あの二人なそう待たせることも無いでしょう」

「ですね~」


 いつもの着物姿では目立つので、薄紅色の貫頭衣に着替えた牡丹姉さんがデジカメを手で弄びながら言う。完全に観光気分だな、なんか不安だ。


「お待たせいたしました、ご主人様」

「――きた」


 お、来たか。


「それじゃ、早速出発しますか」


 言いながら腕輪で簡易メニューを開き、大陸のマップを開く。新たに50DPも消費して購入した新機能【マップ転送】を使って領都マーズをタップする。


 この機能は行った事がある場所に、指定範囲の人や物を移動できる瞬間移動できる機能だ。本来マーズは未到達なので使えないのだが、DPを10消費すれば行けるようになったので良しとする。


 ポイントの無駄遣いのような気もするが、マーズまで馬車で最低十日以上はかかる。ユエや紅牙と使っての移動なら早いだろうけど、流石にあの姿を晒しながら街道を突き進むのは頂けない。


 ――うん。俺も乗る勇気、ちょっと無いし。


『【10DP】消費で領都マーズまで移動します。よろしいですか? YES/NO 』


 YES、をタップした瞬間周囲に光が溢れた。その眩しさに思わず手で目を覆うが、光が収まり手を退けた時には景色が変わっていた。


 草原に鎮座した城壁に囲まれた大きな街。街道は整備され巨大な門に続き、衛兵が出入りするものをチェックしている。


「おおっ、凄いな~。映画のセットみたいだ」

「まるで指輪とかポッターみたいですねぇ~」


 意外と俗な鬼人の牡丹姉さんとは、こういう時に話が合うから良い。


「ファンタジーとかSFとかだと、あまり碌な目に遭いませんけどね」

「ホントですよね~。怪獣映画だと豪快に破壊されたり、パニック映画だと閉じ込められてゾンビやエイリアンの襲撃にあったりしますよね」

「それで爆弾でまとめて吹っ飛ばされたりね~~……やめとこ、変なフラグ立ちそうだし」

「そ、そうですねよね、あははははは」


 こう、変なフラグ的会話もやってしまうけど。



□ANOTHER SIDE□



「ほう、来たか。予想よりもかなり早いな」


 意匠を凝らした机に肘をついて書類を眺めていた女性は、側近の報告を受けて僅かに目を細める。


 やや赤みの混じった長い金髪をまとめて肩から前に下ろした、中世的な容貌の人物。ブルネイ領領主、サリーシャ・ブルネイ侯爵。


 領都の中心に位置する城の政務室。そこで自分の片腕とも言える人物から報告を受けていた。


顎鬚をたくわえ、その分頭髪が心許ない老人。執政官バラムス・ニュート、サリーシャの祖父の代からブルネイ家を影から支えてきた人物だ。


「お嬢様が渡した徽章を持った者が四名。風貌から間違いはないかと」


 徽章はノーソンを離れる際にサリーシャが太郎に渡していたものだ。多用は出来ないが、街に入り便宜を促す程度なら可能である。


「バムラス、領内……ノーソンの周辺地域にあるダンジョンが二つ、討伐されたという報告が昨日来ていたな?」

「ええ、私もそう記憶しております」


 早過ぎるな…っという言葉をサリーシャは口の中に飲み込む。


 ダンジョンは発見されると、冒険者組合の係員によってマーカーと呼ばれる魔法石が設置される。このマーカーは魔法の込められた地図と連動しており、常にダンジョンの魔力を察知して地図に光点を示し続ける事が出来る。


 もっともその魔力を受け取る範囲にも限りがあり、各冒険者支部が常に地図をチェックしている。もし光点が消えるような事があればまず領主であるサリーシャに早馬が来る。


 それが昨日の報告なのだが、それに対して太郎一行が来るのが早すぎるのだ。彼女の読みならばまずは信用を得る為にダンジョンの一つ二つ潰してから来るかと思ったのだが、移動時間がどう考えても足りない。


 もしかすると彼女が言った「遊びに来るといい」を、額面通りに受け取ったのだろうか?


「――いや、私達の知らぬ移動手段がある可能性も捨てれんな」


 何せ少し前に、ノーソンの近くで古代竜と狼神を見たという情報もある。まさかそれが太郎の配下とは考えられないが、だからといって除外して考えていいものでもない。


 サリーシャは頭を振ると、バラムスに向かって尋ねる。


「太郎達は?」

「こちらの手配した馬車でここへ向かっておられます。――が、本当にここに招き入れてもよろしかったのですかな?」

「構わん、下手に街中で面倒を起こされても困る。どれを連れているにせよ、下手にモンスターの類だと冒険者などに知られればどれほどの被害が出るかわからん。それならば多少危険でも目に見える場所で監視したほうがマシだ」

「ほう、それでいざとなればご自分で武勇を振るわれるおつもりで?」


 バラムスの揶揄するような含みにサリーシャはムッとしたような表情を浮かべる。それが導き出す答えは、ズバリ図星だ。


「お嬢様自ら剣を持つことは許されません、お分かりですな? ブルネイ侯爵閣下」

「ふん、こういう時だけ閣下呼ばわりか。まったく、どちらが上だかわかったものではないな」

「それは勿論、お嬢様でございます」


 伊達にブルネイ領主三代に渡って執政官の任を行ってきたわけではなく、バラムスは完全にサリーシャをやり込んでいる。理はバラムスにあり、さらにバラムスに取ってサリーシャは主君であり孫のようでもある。


それがわかっているからこそ、サリーシャも彼には強く出られないのだ。


「ふぅ……わかった、何かあった時は城に詰めている騎士団に任せる。だが相手の正体がわからない事には有効な手が打てないな」

「ノーソンの住人とちょっかいを“かけさせた”騎士団の若手からの話を聞くに、少なくとも黒衣の少女は吸血種の一種ではないかと思われます」

「吸血種、不死族の一つか……だが、奴らは闇神の祝福を受けた存在。光神の守護に有る陽光の元では存在できないはずだが?」


 この世界においてもヴァンパイアは日光に弱く、日の光に晒されるとその身は焼け灰になってしまう。


「あくまで能力から推測しただけですので。しかし、他にこれといって当てはまるモノがないのも確か」

「では仮にヴァンパイアと仮定してだが……唯でさえヴァンパイアは単独の戦闘力が高い。そして自尊心が高く、自分と同等以上の存在しか並び立つのは許さない……ならば、少なくともあの場にいたのは、ヴァンパイアと同等以上の力を持っていることになるな」

「推測に推測を重ねもてしょうがないかと」

「わかっている……が、冥界の使者が接触していたと村人も言っていた。ならばそうおかしな真似はしない……となればいいがな」


 冥界の使者とは太郎に荷物を届けた郵便局員を指す。そしてこの世界において、冥界に関わるものの権威というのは存外高かったりする。


 生と死、魂の輪廻を司る冥界に関わるもなら、太郎もみだりに騒乱を起こしたりしないだろうという考えだ。無論、楽観的な考えと言われればそれまでなのだが。


「やはり太郎を懐柔するのが一番だな…………年下は割りと好みだしな」

「お嬢様?」

「冗談だ」


 バラムスのジト目を振り払うように逃れ、サリーシャは椅子から腰をあげる。


 街門からこの城まで多少距離があるとはいえ、あと数刻もしないうちにやってくるだろう。


 腹の探り合いになる公算が高いとは言え客人は客人、持て成す準備をしなければ……


「サリーシャ様っ!」


 と、サリーシャが考えたところで不躾に部屋に飛び込んでくる者がいた。騎士団、それも若い新入りの一人だ。


 仮にも領主の部屋にノック一つなしに入ってくることは、不敬罪に問われてもおかしくはないが冒険者上がりのサリーシャはそこらへんは鷹揚であった。


「何が有ったか知らないが、少し落ち着け。それでは騎士は務まらないぞ?」

「はっ、も、申し訳ございません! 次からは騎士に相応しい振る舞いを……」

「火急の用件があったのでないのか? でなければふざけた戯言を抜かすその首、ここで刎ねるぞ?」


 サリーシャの一瞥に薄ら寒いものを感じ取ったのか、騎士の動きが一瞬固まり顔面が蒼白となる。


「は、はっ! ただいま街中の『十字路の広場』におきまして、正体不明のモンスターが暴れているとの知らせが入りました!」

「……なに?」


 さらに眼光が増したその視線に晒され、思わず粗相をしそうになったとかないとか……



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