ダンジョン改築のためのアレやソレ
盗賊退治などをこなして貯めたDP68。これでまずやる事と言えば、ダンジョンの充実化だ。
ではダンジョンの充実化とは?
階層を増やして迷路を作る?
罠満載の通路を作ってみる?
モンスターを多数作って徘徊させる?
頭を使う仕掛けを作って挑戦者の頭脳を試してみる?
……否、このダンジョンは俺の家と同義である。したがって一番に考えるのは、住環境の改善からだ。
ぶっちゃけ、椅子(玉座)しかないんだもん、このダンジョン。机も椅子もテーブルもベッドも無いし。あと日本人としては、お風呂は是非とも欲しい。
まずはメニューの【ダンジョン改築】から【階層増設:10DP】を選んで地上と玉座のある階層との間に四つの階層を新たに作った。
これで残りは28DP、思ったより一階層作るDPが少なかったので調子に乗ってしまった。ただ、広さは学校の体育館よりやや広め程度しかないので、改めてDPを獲得したら拡張しないといけないけど。
部屋や通路の配置はメニューの3Dマップを見ながら適当に配置した。あとからやり直せるし、そんなに広くないから直ぐ終わった。
ただ、デフォルトの部屋や通路(L字通路、直線通路、十字路など)は基本無料だが、特殊な用途の部屋はDPが別に必要になる。よく考えて配置や購入をしないとあっと言う間にDPが無くなってしまうな。
ちなみ階層に関しては、各階にフロアマスターを置いて各々にある程度管理を任せることにした。
第一階層:紅牙
第二階層:ユエ
第三階層:黒姫
第四階層:シルヴァリオン
第五階層:俺&スラりん
……この順番を決めるのが結構揉めた。紅牙は一番バッターというか、もっとも多く戦える第一階層で直ぐ決まってくれたんだけど、第四階層および第五階層がなかなか決まらなかった。
何せ第四階層はある意味最下層への最後の砦、黒姫とユエとシルヴァリオンが互いに譲らない譲らない。
挙げ句に、
「では、戦って勝者が決めると言うのは如何でしょうか? 真に強さが求められるのですから、これが一番適した決め方かと思います」
「――上等、まとめて相手になる」
「マスターノ前デ恥ヲカク事ニナルガ、イイノダナ?」
とか言って目の前でマジ勝負しようとするんだもん。慌てて間に入って門番イメージのあるシルヴァリオンに決めたが、今度は自分のフロアはいらないから第五層が良いとか言い出すし。
このフロアマスター分けはそのまんま自分の部屋というか生活圏が決まるわけだから、黒姫かユエを第五階層にすると俺が色々困るというか色っぽい展開になりかねない。
俺も健全な少年であるわけだから綺麗どころ二人に迫られるのは嫌じゃないけど、だからってホイホイ手を出せるほど軽いわけでもない。
何とか説得して上記の順で落ち着いてもらったわけだ。
それから細々した家具なんかを頼んで10DP消費、これで残り18DP。紅牙、黒姫、ユエの好みを聞きつつベッドや椅子、生活品を揃えていく。一つ何DP必要といった方式じゃなく、『10DPなら、この中から好きなだけ選んでよい』方式だったので消費DPも少なくてすんだ。
あとは10DPを使用して第五階層に温泉を設置。温度調節が自動で行われるうえに、給水&排泄も洗浄も勝手に行われる優れものだ。さすが異世界!
風呂代わりに10DPも使うなんてと思わなくも無いが、日本人に風呂は必要である。温泉ならなおよし。
「う~ん、色々やるには全然DPが足りないな。やっぱし最初に使い過ぎたか……後悔はしてないけど」
白と黒の大理石に似た光沢のある石で造られたモノトーンの浴場で、ドラゴンの頭を象った像の口から流れるお湯を肩に浴びながら、簡易メニューを見て考える。
てっとり早いのはやはり討伐系、モンスターなり人なりを倒す事だ。モンスターは不明だが、人に限っては『戦闘不能』に持ち込むだけでポイントが得られることは実証済み。
殺さなくて良いと言うのは精神衛生上かなり嬉しい。だからと言ってむやみやたらに人を襲うわけにもいかない。
サリーシャ領主との約束事には、『相手をする人間はダンジョン攻略に来た人間のみ』と明言してしまっている。これを破れば、領主軍はこのダンジョンに兵や冒険者を派遣するのは間違いない。
裏を返せば、脅威とならないならば早々敵に回ることも無いはずだ。俺の提案を飲んだのも気に入ったどうこうの話だけではなく、黒姫達と事を構えて兵に損失を出したくなかったという一面も大きい筈だ。
ダンジョンが領地内で頻出しているという言葉を信じれば、既に人手不足に陥っていても不思議じゃない。
「ま、DPの大量獲得とサリーシャ領主の信用を得る。この二つを両立させるには……」
1DPを消費して手に入れたこの大陸の地図をメニューから眺めながら、さらに5DP消費して新たな機能を追加する事で地図上に幾つか光点が現れる。
その一つをタップし、開いた情報を見て思案しながら同じように他の光点もタップしていく。
ズゥゥゥゥン……
――と、考えを巡らせていると地響きの様な音と共に振動が襲ってくる。少し前の自分ならすわ地震か!――と思うところだがそうじゃない。
そもそも、ダンジョンは一見すれば地下にあるように見えるが、その実、入り口を境に別の空間に作られているのだ。よって地震や雨漏りなどの影響を受けることはまずないし、逆にいくら迷宮を広くしようと外界に影響を与えることもない。
だったら、この振動は何だと言うと……
「またか……今日はどっちだ?」
浴場が完成してからと言うもの、俺が入っていると黒姫かユエのどちらかが必ずと言って良いほど乱入してくるのだ。
最初はとにかくビビッた。広い浴場に温泉きゃっほーっ!……っと浮かれて泳いでいたら、いきなり浴場のドアが開いて黒姫が入ってきたんだから。
あのシミ一つない白い裸身を小さな手ぬぐいでやばい所だけギリギリ隠した姿は、むしろ全裸よりも色気があってやばかった。湯気がやや視界を隠すものの、むしろそれがより艶めかしい雰囲気を……っていうか絶対分かってやってやがる。
「ご主人様。お隣、よろしいでしょうか?」
なんて邪気の欠片も無い笑顔で言われて俺はあっさりと陥落した………だろう、偶々一緒に湯に漬かっていた紅牙がいなければ。
紅牙に頼んで黒姫を追い出してもらったが、助かったのか残念だったのか自分でもイマイチわからなかったが、たぶん助かったんだろうな。鼻血は出してしまった、湯に混ぜて誤魔化したけど。
その後は浴場とダンジョンの通路の間にある更衣室で着替えを済ませたときに、ユエがやってきた……全裸で。こっちは全く隠そうともしないで堂々というか、お前さん部屋から素っ裸で来たのかと変に感心した。
ユエもスタイルは良いと思っていたけど……正直想像以上だった。確かにこれならメイド服も押し上げるわそりゃ。むしろミサイル出しても不思議じゃないと思った俺はきっとどうかしてた、たぶん。
「主様、背中流しに来た」
「あー、うん。もう上がった所なんだけど……」
「――残念」
ユエは耳も肩も尻尾もしょぼんと落として行ってしまった……全裸で。堂々としていたからこちらも変な気は起こさなかったけど、あれで黒姫みたいにこられたら一瞬で落とされていた。
あの胸囲はまさに驚異――なんて親父ギャグが頭をよぎった自分に愕然ともしたが。
そんなこんなでゆったり風呂に入るために、入浴中はシルヴァリオンに番犬役をお願いしたのだが、毎日黒姫かユエあるいは両方やってきて浴場に入ろうとドンパチを繰り広げているのだ。
手早く上がっていつもの学生服に着替えドアを開くと、既に戦闘は終わりシルヴァリオンが扉の横で控えているだけだった。いつも俺が浴場から出る気配を察して退散するのだが、まったく気が遣えるのか遣えないのか……
「今日も悪いな、シルヴァリオン」
「問題アリマセヌ、マスター」
シルヴァリオンを労い、そのまま一緒に玉座までいく。玉座に深く腰掛けメニューを開くと、【モンスター指示】から集合を使って皆を呼び寄せた。
玉座の前で傅く黒姫、紅牙、ユエ、シルヴァリオン、スラりん。両脇に控えたトリスと先日地獄から戻った牡丹姉さん。うん、いつも通りの配置だ。
「さて、ここ一週間ほど暇を持て余したと思うけど、そろそろ本格的に動いて行こうと思う。まずは何をするにもDPが必要なんで、それを中心に動いていきたい。色々考えたんだが……紅牙、ユエ」
「おう!」
「――ん」
二人の返事を視線を確認しつつメニューから地図をだし、全員に見えるように広げる。
俺達がいるダンジョンはグランセリア大陸を三分する国の一つ、フィール王国のブルネイ領だ。フィール王国は西に山々に囲まれた山岳国家であるゼンリア公国と、東に海に囲まれたリースヴァル帝国の間にある。
国土は主に草原や森が多く、中でもブルネイ領は領土こそ広いが交通の要所から外れ小規模のダンジョンが多い。つまりダンジョンから発生したモンスターがあちこちにおり、他の領土と比べて繁栄しているとは言い難い。
「二人にはこことここ、二か所を頼みたい」
さきほど新たに追加した機能を使い、地図上に現れた光点のうち現在地からほど近い二か所を指す。
「ほう、そうきますか。流石は太郎様、予想の斜め上をきますな」
「え、え、どういうことですか?」
自己完結したトリスと違い、牡丹姉さんはトリスの顔を地図を交互に見て首を捻る。これは俺の言い方が悪かったな。
「紅牙とユエには、この二か所のダンジョンを潰してもらいたい」
そう、新たに5DPで追加したのは【ダンジョン検索】の機能。モンスターを倒す事でDPが手に入るのなら、その発生源ともいえるダンジョンを攻略することにより大量のDP獲得につながる筈だ。
さらにダンジョンを潰して領地の安定に貢献すれば、サリーシャ領主のみならずフィール王国そのものから危険視される可能性は低くなるだろう。観光地化計画にはそれが絶対条件の一つだ。
選んだダンジョンはここよりほど近く、レベルが低いものだ。
ダンジョンのレベルは、
・モンスターの数と平均レベル
・階層の深さ、トラップの数と難度
・撃退者数
・ボスの強さ
これらの数値から総合して導き出されるらしい。メニューから見た情報はグラフ表示だったのでイマイチ具体的にわからなかったが、総合的なダンジョンレベルはどちらも【Lv5】だった。
ちなみにうちのダンジョンのレベルは【Lv68】。これはモンスター、即ち黒姫達のレベルが突き抜けているだけだろう。逆に言えば、黒姫達なら低レベルのダンジョンなら楽勝で攻略できる可能性が高い。
それを軽く説明すると、
「おお、ただ温泉を楽しんでただけじゃなかったんですね~」
――牡丹姉さん、俺が温泉に漬かっているだけで満足していると思ってた?
いやま、思う存分満喫してましたが。……お色気的な意味でも。
「ご主人様、それならばワタクシが参りますが……」
黒姫がやや不安を滲ませた上目遣いで訴えてくる。う、そういう顔されると酷く罪悪感が。
別にこの人選は、黒姫に実力的な不満があるとかそういうわけではないのに。
「黒姫、君が不足だとかそういうわけじゃないよ。ただ他のダンジョンと比べて近場とはいえ、往復には時間がかかる。出来れば移動は極力短期間で済ませて欲しい、その為の人選だ。だから、ええっと、そういう顔しないで欲しいな」
「そういう事でしたか。浅慮でものを申してしまい、申し訳ありませんでしたご主人様」
スッと穏やかな笑みに戻り頭を垂れる黒姫。さっきの表情は演技?――女って怖い。ただ人選に納得してもらえたみたいで良かった。
いくら忠誠心が高いとは言え、規格外の能力の持ち主ばかりだ。適当な人選で俺への評価が下がるような真似はしたくない。
「紅牙、ユエ。直ぐにでもいけるか?」
「おう、まかせろ!」
「――いつでも良い」
◇
ダンジョンの入り口は木々を取り払った広場の真ん中にある。ノーソン村への焼けてしまった家への木材の提供、そしてこちらの利便性を兼ねて伐採させてもらったのだ。
う~ん、遮る木々がないせいか頂点に差し掛かった太陽の光が眩しい……
「あ、みなさん。こんにちは~ッ!」
全員で紅牙とユエの見送りに出ているとバスケットを抱えたティルがやってきた。ここ最近、毎日のように差し入れのパンを村から持ってきてくれている。
この体になってからあまり食べなくとも平気なんだけど、それはそれとして好意は嬉しいのでありがたく受け取っていた。ただ村の近場とは言え森は危ないので、黒姫の分身狼を一匹連れ添わせているが。
「みなさん珍しいですね、全員でお外に出てるって。どこかにお出かけですか?」
既に彼女は俺がダンジョンマスターでここがダンジョンだと知っているが、特に態度は変えなかった。曰く、『え、だってみなさん良い人達ですよね?』だと。
きっとこの子は性善説の信奉者になれるな。
「ちょっと遠出するんだよ、って言っても紅牙とユエだけなんだけど。それじゃ二人とも、頼めるか?」
「うっし、ちょっくら掃除に行ってくるぜ!」
「――ん、掃除は得意」
「お掃除、ですか?」
なんだかよくわかりません、そう顔に書いてあるティルを置いといてまずは紅牙が大きく吼える。咆哮だけで鼓膜を打ち木々を大きく揺らし鳥を羽ばたかせたが、真に驚くべきはその後。
紅牙の全身が紅蓮の炎に染まり、その炎はどんどん膨れ上がる。広場ぎりぎりまで膨らんだかと思うと炎は形を変え、四足歩行する翼を持つ生き物の姿をとった。
最後に炎が消え、そこに現れたのは神秘的な真紅の鱗を持つ巨大な――ドラゴン。強靭な四肢に巨大な翼、大地を叩く長い尾に凶悪な牙を供えた獰猛な顔。
ティルは口を開いたまま固まっている――俺と同じく。知っているのと直接見るのではやっぱり全然違うね、ちょっとちびりそうだ。
「グラアアァァァァァーーーーッ!!」
ドラゴン形態だと人語を喋れないのか、一度吠えるとその翼を大きく羽ばたかせて大空へと舞い上がり、先ほど教えたダンジョンの方角へと飛んで行ってしまった。
「…………うわぁ、【リザードマン】の方って、ドラゴンに変身できたんですね。知りませんでした」
「いや、紅牙は【リザードマン】じゃないし」
ティルの呟きに突っ込みをいれる。ちうか今まで【リザードマン】だと思ってたのか?
今度はユエが俺達から離れて広場に立ち、スルリとメイド服を脱い……なんで脱いでんの!?
「ご主人様、見てはいけません!」
「あ、良い所でって痛い痛い! 黒姫、爪が食い込んでる!」
えーい、自分もほぼ裸で風呂場に侵入してきたくせに理不尽な! 直接迫られる状況じゃなければ見たいのはしょうがないだろう、男の子だもん!
「うわ~、ユエさん。おっぱいおっきい……」
「ありゃ、大きいと思ってたけど、あれは負けちゃうな~」
ティルと牡丹姉さんが何か言ってるが、そっちに関してはノーコメントで……と言うか爪が本格的に痛くてそれどころじゃない。
ようやく黒姫が手を離したときには、先ほどのドラゴン形態の紅牙より半回りほど大きな、灰色の狼が俺達を見下ろしていた。元の世界では神話で世界を喰らうと言われた神、フェンリル。
名前が一緒なだけでイコールでないだろうが、その姿は神と呼ぶに相応しい神々しさと威厳を放っているように感じた。
『主様、行ってくる』
こっちは紅牙と違ってちゃんと喋れるらしく、一度頭を下げてから器用に脱いであったメイド服を加えて駆けていった……大地を揺らしながら。
ちょっと失敗したかな、出発は人目を引かない夜の方が良かっただろう。まぁ、見送ってしまった以上しょうがないか。
ちなみにティルはというと、また固まっている。気持ちは分かる。予備知識があった俺もかなり驚いたんだ、ティルは俺以上に……
「――何食べたら、あんなにおっぱいが大きくなるんでしょうか。帰ってきたら聞いてみなきゃ」
「そっちか!?」
俺、この子の感性ちょっとわかんない。
◇
紅牙とユエを見送ってやってきたのはノーソン村。ここ最近は毎日のように来ているので、村人の警戒心も既に氷解している。
――さすがにスラりんが横を通ると仰け反りつつ離れるが。
「おお、ようこそいらっしゃいました」
「こんにちは、カール村長。もう柵の方はほとんど出来上がってきましたね」
やってきた村長に挨拶を返しながらグルッと村を囲う木の柵を見る。柵というのは頼りないものだが、実際は森で切った丸太を使って村を囲う砦みたいな物だ。
これまでも村の柵はあったのだが、獣や低級のモンスター程度の対策でしかなかったらしく盗賊などには無力。そこで俺たちダンジョン組の協力の下、新たに村を守るためのものをこしらえたわけだ。
協力と言っても、村で戦力になりそうな大人はほとんど先日の盗賊襲撃で怪我をしていたので、ほとんど紅牙やユエ頼みだったが。
そもそも村自体に十代後半から三十代までの若者が少ない。出稼ぎか、あるいは若者特有の都会ドリームでも夢見て旅立ったのかもしれない。
「次は地面を舗装して、宿屋を作って、村への道を舗装して、特産作って商人呼び込んで……ま、いっぺんには無理か」
「よろしいのですかな、村のためにそこまでしていただいて?」
「むしろこっちの計画に村を巻き込むようなものですからね。協力と出資ぐらいしますよ」
普通にダンジョンで暮らす分にお金はほとんど使わないし、巻き込む村への迷惑分と思ってもらおう。まだお金は少ないけど。
「建物とか道の舗装はやっぱり大きな町に行って頼んだ方が良いかな?」
「太郎様、ある程度の規模の町には大抵ドワーフの大工職人がいます。多少値は張るでしょうが、腕は確かなのでご一考なされてもよろしいかと」
トリスの言葉に内心『おお、ドワーフ!』と驚きながら、それもいいなと答える。
「はい! ロココ調の宿屋を作ってみましょう!」
「ロココ調とはなんでしょうか?」
牡丹姉さんのよくわからない提案に黒姫が首を傾げる。ロココ調の宿屋ってどんなだ? そこはかとなくセレブな雰囲気がしなくもないが、確実に周囲から浮くわ。
「兎にも角にも計画を進めるのに必要なのはお金とDPか」
「ご主人様、それならばあの二人が巧くやってくださるでしょう。ご主人様の直属の配下として、ワタクシと並ぶ者達です。何の心配もいりません」
普段はあまり仲が良い様子を見せない黒姫が、そんな事を言う。性格的に合う合わないはあっても、その能力と忠誠心には信頼を置いているようだ。
そのことに関しては、俺もまったく同感だ。
「だな。こちらも準備して待つか」
ダンジョンの攻略者には懸賞金が出る。例え低レベルのものであっても、結構な額が支払われるようになっている。
それは【ダンジョン検索】の機能で確認済みだ。
領地の平和に貢献し、お金が手に入り、DPも手に入る。まったくダンジョン攻略とは良いこと尽くめだ……ダンジョンマスターのセリフじゃないな、これ。