第漆話 脱出路
更新早いよ。どうなってんの!?
書けたら載っけちゃえ病が流行っています。皆さんも体調にはくれぐれも用心してください。
第漆話 脱出路
2人でカップル島に辿り着く。島は直径10mもなく。円形のベンチの上に雨を避ける屋根があるだけであった。問題があったのはトイレが無いということだった。昨日も移動中、何度か土倉光のトイレのために公衆トイレなどに寄っていたが、今回はトイレ自体がない。
「失念していたわ・・・。桜井、すぐに脱出よっ!」
「アホなこと言わないでください・・・。トイレくらいその辺に穴を掘ってしてくださいよ。命とどっちが大事なんですか?」
「あんたに見られるくらいなら死を選ぶわ・・・。」
「見ませんから・・・。俺は反対側を向いてるんで好きなだけどうぞ。終わったら教えてください。」
「・・・本気かしら?」
「本気ですよ。これから先、こういう場面が何回あると思ってるんですか?慣れてください。」
「こっち向いたら殺すわよ・・・。」
土倉光は女だ。プライドも高い。どんなに屈辱的なことか真澄も理解しているが、やはり命と天秤に掛けると比べるまでもないのである。真澄は釣り道具を取り出してルアーをつけ投げてみた。この池は河川の水を引き込んでいる。近年、大量に放流された外来魚のブラックバスが繁殖しているはずである。スズキの仲間であるブラックバスは、ソテーなどで美味しく頂けると本には書いてあった。逆に鯉などは泥を吐かせないと臭くて食えたものではないらしい。軽い腹ごしらえ程度なら、ブラックバスが遥かに使えると思ったのだ。
(しかし、昔は川にブラックバスなんか居なかったよな。スポーツフィッシングとか言って、釣りたい馬鹿がどこの川や池にもバスを放流したらしいからな。今や外来魚が害来魚だよ。まぁこれも人間の責任なんだろうな。滅びて当然だこんな動物。自然が黙ってないよ。地球は一個の生物だって説もあったな。ガイア理論だったっけ?もしかして人間を淘汰するために地球がゾンビを出現させたとか?まさかね、寄生○じゃあるまいし・・・。)
頭の中でトンデモ説が出たが、すぐに否定する。あり得ない話である。
「・・・終わったわよ。」
「あ、お疲れ様っす。やった場所は石でも積んでてください。俺も地雷発掘とかしたくないっぐはぁっ!」
「あんたは一言多いのよっ!デリカシーを持ちなさいっ!」
「御意・・・・。」
土倉光に後ろから蹴飛ばされた真澄は、言動に注意しようと心から思っていた。
★
釣り開始から1時間、やっと小さなブラックバスを釣り上げた。意外にも魚は少ないのかもしれない。錦鯉はたくさん泳いでいるが、他の魚はほとんど見えない。そのとき、真っ黒な魚影が目の前を横切っていった。蛇のようにうねうねと体をくねられせながら、悠然と泳ぐ魚影は不気味でさえあった。大きさも他の錦鯉より大きく、1mくらいはある。初めて見る魚だった。
「せ、先輩っ!あの気持ち悪い魚なんですかっ!?もしかしてゾンビ化した変種じゃっ!?」
「魚がゾンビ化?ああ、あれはライギョよ。正式にはカムルチーって言うの。タイワンドジョウ科の魚の総称で日本では全部ライギョって言うわよ。知らないの?」
馬鹿にしたような目で真澄をチラリと見る土倉光。真澄は釣り初心者である。ニュースなどで問題視されているブラックバスは知っていても、あんな気味の悪い魚など今まで縁もなかった。
「ねぇ桜井、あんたもしかして、釣り素人なんじゃないの?」
「へ?ええまぁ、素人ですよ。昔に少し釣堀に行った事があるくらいでして。」
「うわぁ・・・、ダサイわね。ちょっと貸してみなさいっ!」
真澄はダサイと酷評され、竿を奪い取られる。正直な話カチンときたが、土倉光が綺麗な放物線を描かせながらルアーを飛ばす様を見て唖然としてしまった。明らかに経験者のテクニックだ。ヒョロヒョロと風に流されながら飛んでいた自分のルアーとはあまりにも動きが違っていた。水の上をまるで生きているように動き回るルアー。数回のキャストで、巨大な影がルアーを捕らえていた。土倉光は慣れた様子でリールをクリクリと巻きながら竿を操って魚を引き寄せる。そして水の中に手を突っ込み、勢いよく引っ張り上げた。40cmは悠に超えるブラックバスである。先ほど釣り上げた20cmにも満たない真澄のブラックバスが子供に見えた。
「ざっとこんなもんよ。でもこれって食べられるのかしら?」
「何でも白身で淡白な身はソテーや唐揚げに最適なんだそうっすよ。寄生虫がいる場合があるので生で食べないようにって書いてます。」
食材も揃ったので、土倉光が血抜きをして鱗を飛ばした魚を綺麗に3枚におろしていく。なかなかの腕前だ。さすがは女性というところか。携帯コンロでフライパンを熱していた真澄にバターを溶かす指示を出し、自分は塩コショウを切り身にふって下味を付ける。
「先輩って料理するんですか?」
「ええ、土日は大体自炊するわよ。花嫁修業みたいなものよ。」
「手捌きも手際も申し分ないっすね。良い奥さんになれますよっ!」
「今の世の中で奥さんも糞もないと思うけど?あんたがもらってくれるのかしら?」
「え?ああ、えっと・・・。」
「冗談よ、真に受けないで。ちょっと、バター焦げだしてるじゃないっ!ほら貸して。」
言葉に詰まってバターを焦がした真澄からフライパンを奪い取ると、ジューっといい音をさせながらバスの切り身をバターで焼いていく。油でソテーしなかったのは、バターで川魚独特の生臭さを消すためだそうだ。串焼きくらいしか思いつかなかった真澄には驚くべき工夫と才能である。つくづく女性が一緒で良かったと思う。
「さぁ、出来たわよ。フォークとお皿を出して頂きましょう。」
ブラックバスのバターソテーは驚くほど美味かった。今まで、缶詰やブロック栄養食にゼリーと味気の無い物ばかり食べていたせいもあったが、それを差し引いても美味い。生臭さの原因は皮であると判断した土倉光は綺麗に皮も剥いであったため、両面がしっかりとキツネ色に焼け食べやすかった。
「いけるわね。こんな美味しい魚だったのねぇ。逃がさずに数匹持ち帰って冷凍すればよかったなぁ。」
やはり土倉光は趣味で釣りをやっていたようだ。
「これ保存食に出来ないっすかね?」
真澄が意見を出してみる。土倉光は持参したサバイバルブックをペラペラ開いて、あるページを少し読んだ後答えた。
「無理ね。魚だと燻製がいいみたいけど、ここは木が無さ過ぎる。煙で一日中燻すって書いてあるわ。公園で生木を切り倒してここまで運ぶしかないわよ?そんなリスキーな事はご免だわ。とりあえず明日まで休みましょう。あの鉄柵を取り除けばスワンボートも川に出せるかもしれないわよ?川まで300mくらいよね。早く海まで出たほうが安全だわ。」
土倉光はそう言って、池の水を折りたたみ式の布のバケツに汲んで体を拭き始めた。池の水は澄んでいたが、やはり清潔ではない。それでも水には変わりないので、真澄もそれに倣う。
「ちょっと上を脱ぐからこっち見ないでよね。見たら殺すわよ。」
「では俺も脱いで拭きますから、見たら殺しますね?」
「見たかないわよ、そんな貧相な体なんか。もっと筋肉を付けてガチムチになったら見てあげるわ。」
真澄は自分の日に焼けていない白い体をまじまじと見つめ、小さく溜息を吐くしかなかった。
★
一応清潔を保つと、再度池の周囲を見渡す。ゾンビは全部で30体は居た。見える範囲でこれだけ居るとなると、公園全体だと200や300は居そうである。真澄は少し後悔していた。もう脱出は無理かもしれない。ゾンビはこれから増え続けるだろう。現在は殺された人がほとんどだが、ライフラインが全て停止した今、餓死や脱水症状、気の狂った者同士の殺し合いなど、死人はどんどん増える。自衛隊がやられてから、繁華街は目に見えてゾンビが増加していた。立て篭もりの連中の命も風前の灯火であった。好転する要素は1つも無いのである。早いうちに公園を出る必要があった。
「桜井、ちょっと鉄柵が外せそうか見に行くわよ。ゾンビは池の反対側におびき寄せるわ。手伝って。」
土倉光も同じ事を考えていたようだ。2人してスワンボートに飛び乗ると、鉄柵とは反対の湖岸を目指す。ゾンビは気付いていない。スワンボートは漕ぐのを止め、慣性の法則のままゆっくりと湖岸を目指していた。ゾンビが近くに居ない場所を探す。池の柵のそばに、少しだけ池にせり出している場所があるのを見つける。柵の高さは1mちょっとぐらいあり、子供が池に落ちない程度のものだった。土倉光は迷わずにそこに飛び移る。
「私がゾンビを引き寄せるから、あんたは待機してて。」
「え?大丈夫なんでしょうね?」
土倉光の暴挙に驚きながら真澄は聞き返した。
「大丈夫よ、あそこにある石を全部池に投げ落とすだけだから。危なかったら飛び込むわ。こんなことで熊ブザーは使えない。」
そう言い残すと、そそくさと小走りで去っていった。土倉光が向かった先には、湖岸の煉瓦道を補修するために運んだらしい煉瓦が積まれている。土倉光は煉瓦に辿り着き、周囲を確認している。ゾンビは3~40m先に数体居るだけだった。土倉光とスワンボートの距離は25mほどである。土倉光はおもむろに煉瓦を掴むと、池にポイポイ投げ始める。ゾンビが気付き、土倉光を目指して移動を始めた。ゾンビの動きは泥酔者が千鳥足で歩く程度である。真澄は気が気では無かったが、しばらく見守る。土倉光は煉瓦を出来るだけ遠くに投げていたので、ゾンビとの距離はまだまだある。たくさんの波紋が出来るあたりに、ゾンビはすでに30体ほど集まっている。土倉光は、そのゾンビに注意を集中していた。池は丸い。当然土倉光側を回ってくるゾンビのことが完全に思慮の外になっていたのだ。
「先輩っ!戻ってください。後ろにもゾンビが近付いてますっ!」
真澄はすでに土倉光の背後20mにゾンビが歩いているのに気付き、大声で警告を送る。土倉光はハッとして振り返り、慌ててスワンボートに戻る。スワンボートに飛び乗ると、2人は全速でバックした。真澄の声に反応したゾンビ達が、すでに湖岸の柵まで迫っていた。
「マズイっすね。もしかして興奮させただけなんじゃ・・・?」
2人は方向転換し、対岸にある水の排出口の鉄柵へ向かう。この水路は深さが1mほどで、コンクリートで舗装されていた。スワンボートで抜けられるギリギリである。幅もそんなに余裕は無い。しかし、意外に水流の勢いがあり、一気に加速すれば河川まで出られそうであった。ただ水門などの障害物がなければである。鉄柵は幸い、張ってある金網を撤去すれば、上部を固定してある鎖を外すだけで水路は開ける作りであった。問題はその先である。2人はまた集まりだしたゾンビを避け、カップル島に引き返すことにした。
★
カップル島に戻ると、どちらともなく安堵した。ボートを河川に運ぶ可能性を見出せたし、ゾンビ達から離れた安堵感もある。お互いに顔も見合わせて、ニンマリと笑い合った。
「いけそうじゃないっ!鎖はこれで切れるし、あとは熊のブザーでゾンビをおびき寄せるだけねっ!」
糸鋸を取り出し、土倉光は浮かれている。河川まで出れば助かると思っているのだろうか。
「いえ、先輩。まだ問題がありますよ。」
「何よ?」
「川の支流が合流する場所って必ず関所みたいな水門がありませんでしたっけ?」
「あ・・・。」
「それに1個とは限りませんよ。途中で足止めを食らうと命に関わります。ですから、俺が水路を下って何も無いか確認してきます。」
真澄はそう言うと、服を脱ぎ、ショートパンツを履く。ベルトにハンドアックスと糸鋸の装備されているナイフを付けると、意味が分かっていない土倉光に説明を始めた。
「ゾンビは匂いと音を頼りに獲物を探しているのは間違いないでしょう。だから、水の中に居れば気付かれないと思うんです。ゆっくりと音を立てずに移動すれば、陸を歩くよりは格段に安全でしょう。だから、水路を開けて、そのまま水路を下ります。幸い水深は1mくらいある。屈んで移動すれば頭だけ出して行けるし。」
真澄はそう言うと、池に静かに入っていく。
「ちょっとっ!待ちなさい。あなたが戻らなければ私も死ぬじゃない。戻れる保証はあるんでしょうねっ!?」
「そんな保証ないっすよ。でもやらなきゃどの道ここで死ぬだけです。大丈夫っすよ。俺も死ぬ気はありません。」
真澄は土倉光を諭して、池に身を沈めていった。
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池は思ったより深く、ヌルヌルとした湖底はすぐに終わり足が付かなくなった。真澄は人並みには泳げるので、ゆっくりと平泳ぎで進む。一度完全に潜って、頭を水で濯ぐ。先ほどかなり汗を掻いた気がしたのだ。真澄はすぐに鉄柵まで泳ぎ着いた。慎重に音を立てないように金網の強度を探った。ペンチでもあればすぐにでも撤去可能であった。真澄は一度泳いで島に戻る。土倉光からペンチを受け取り、再度鉄柵に向かう。悪戦苦闘したが、1時間ほどで金網は完全に撤去された。あとは鎖をどうにかするだけだったが、ボートを繋でいた鎖よりも明らかに太く、頑丈な鎖だった。真澄は糸鋸を取り出すと、周囲をキョロキョロと窺いながらシュコシュコと鎖を切り始める。なんとか鎖を削っているのが分かる。時間がかかりそうだったが、何とか成りそうだった。周辺にゾンビは居ない。真澄は鎖に集中していく。あと少しで完全に鎖が切れる。そう思った時、背後に気配を感じた。
★
それは奇妙な光景だった。黒い藻のような物がゆっくりと水面を滑っている。少しずつ藻が盛り上がり、真澄の背後3mほどに迫っていた。気付いたのは土倉光だった。真澄に接近するゾンビがいればすぐに警告しようと、双眼鏡を片手にずっと見張っていたのだ。藻はどんどん盛り上がり真澄に近付いていく。真澄も滴り落ちる水音で藻の存在に気付いた。それは頭に湖底の藻を大量に巻きつけたゾンビだったのだ。湖底は岸に近付くにつれて浅くなる。そこを歩くゾンビの頭がどんどんと水面に現れ、まるで藻が盛り上がったように見えたのである。真澄はゾンビだと確認した時、死を覚悟した。藻の下から伸びた腕はすでに真澄の背後1mほどに迫っていたのだ。
「うわああああああああっ!!!」
ゾンビが真澄に踊りかかる。ザブンッと大きな水音が辺りに響き、巨大な波紋を残して2つの影は水中に消えた。土倉光は突然の出来事に呆けていたが、真澄はそのまま浮かび上がってこない。その事実に体から力が抜け、ペタリと腰を抜かしたように座り込んでしまう。視界が見る見るうちにぼやけていく。
「桜井・・・、桜井・・・。」
そう呟くしかなかった。随分長い間そうしていた気がしたが、いきなり水飛沫が上がる。藻の化物の頭が水中から急に飛び出したのだ。
「きゃああああああああああああっ!!!」
絶叫する土倉光。その時、微かに人間の腕が藻の化物の首に何かを突き刺しているのが見えた。藻が水中に沈み、そこには真澄が立っていた。生きていたのだ。
「うげええええええええっ!!ゲホッゲホッゲホッゲホッ!!!」
騒ぎを聞きつけたゾンビが水路に集まってくる。真澄は大慌てで水路の鉄柵に蹴りを入れる。ガシャリと音が響き渡り、水路がゆっくりと開いた。
★
藻の化物に襲い掛かられた瞬間、真澄は咄嗟に右手で奴の頭を掴んだ。運良く親指が目に突き刺さり、眼窩に指が引っかかった。
(ナイフッ!ナイフはどこだっ!?)
狂ったように暴れ真澄の体にゾンビの手が襲い掛かる。腕を全力で突っ張り、足を何とかゾンビと体の間に突っ込み、攻撃を防ぐ。水中でもつれ合う化物と真澄。数十秒はそうしていただろうか。真澄は左手で何とかナイフの柄を持つことに成功した。そのまま引き抜き、化物の喉に突き刺す。顎と喉の間に突き刺さったナイフは、そのまま渾身の力で喉元に押し込まれた。運良くナイフの先が脳に達したのだろう。真澄はゾンビの力がゆっくりと抜けるのを感じた。そのまま、ナイフごとゾンビを上に押し上げ、何とか空気を吸うことに成功した。水中でゾンビの動きも鈍く、緩慢になっていたため撃退できたのだろう。本当に危ない紙一重の勝利だ。勢いよく空気を吸い込み、飲んだ大量の水のせいでむせ返る。やっとパニックを抜け出し辺りを見回すと、真澄の周囲にゾンビが集まりだしていた。真澄は慌てたが、もうすぐで鎖が切れる瞬間だったことを思い出し、ダメ元で水路の鉄柵に蹴りを入れた。残り数mmの鎖は断ち切られ、水流に押されてゆっくりと水路は開いていった。
★
島に戻ってきた真澄を土倉光は思わず抱きしめる。体中がガタガタと震えていた。死んだと思った瞬間の喪失感はとても耐え難いものだった。情けない後輩だが、心の底では頼りにしていたのだ。女1人でこの地獄を脱出するのは100%無理である。彼の協力は必須だった。そんな打算的な考えの奥底に、この男を失いたくないという彼女の願望が隠れていたのだ。その感情が一気に堰を切る。
「し・・・、死んだと思ったじゃないっ!なんて間抜けなのよっ!頼むから私を一人にしないでっ!無茶なことしないでっ!!!」
「な・・、何すか先輩!?生きてますから安心してください。俺が先にくたばるはずが無いでしょう?」
「煩いっ!頼むからしばらく黙っててっ!!」
そう叫ぶと、土倉光はずっと真澄を抱きしめていた。
★
やっと落ち着いた土倉光は、ゆっくりと真澄の背中に回していた腕を放した。真澄はよく分かっておらず固まっていたが、開放されると同時に現実に戻ってきた。
「あ、えっと?心配かけました?」
「当たり前でしょっ!あんたが居ないと私が詰むのよ。自分が死んだくらい悲しかったわ・・・。」
「すんません、先輩がそこまで俺を想ってくれてたなんて。」
「想うってのは違うわよ。私は自分の命が脅かされて悲しかったのよ。」
「そ、そうっすか・・・。」
勿論、土倉光の強がりだ。しかし真澄は、この冷徹な先輩が言うのならそうだろうと思うことにした。
「あ、水路開いてますね。これで川までの道は開けました。後は障害物の確認を。」
「ダメよ、今回のことで思い知ったわ。あなたは私の傍を離れないこと、いいわね?」
「え?じゃあ、一緒に行きますか?」
「そうさせてもらう。その前に作戦会議よ。」
土倉光はそう言ってベンチに座る。そこで分かったことを話し出した。
「ゾンビは水死しない。水の中を歩き回ってるみたいね。浮かんで来ない理由は分からないけど、この島も全然安全じゃ無くなったわね。今回は水中でガチャガチャと水門が音を出してたんだと思うわ。水中も音が伝わるから、それを辿ってきたと思うのが正解かしら?」
「たぶんそうでしょうね。それと、糸鋸を失くしました。あとは先輩の1本しかありません。忘れないようにお願いします。」
「ふぅ・・・、分かったわ。意外に使えるアイテムだったけど、命があっただけめっけもんよね?」
「そうっすね。命には代えられないですからね。」
「じゃ、向こうのゾンビが落ち着いたら行くわよ。私は着替えてくる。覗くなよ?」
「覗かないっすよ。ここで寝転がっておきます。」
そして10分後、水着にTシャツを着た土倉光が現れた。真澄は視線がエロくなったが、土倉光は何も言わなかった。どこで水着を着るつもりだったのだろうか。持っている理由がいまいち分からない。
「水に入る構想は持ってたからね。夏の残り物の水着がランジェリーショップにあったからついでに持ってきてただけよ。役に立って良かったわ。あんたのために持ってたわけじゃないわよ?」
真澄の疑問を察した土倉光は、すましてそう語った。
★
結局その日は、ゾンビ達が散り散りになった時には夕暮れが迫っていた。2人は大事を取ってスワンボートで一泊することにする。島はいつ水中を歩くゾンビに襲撃されるか分からないからだ。池の中央なら水深もあり、ゾンビが下から現れる心配もほとんど無い。ゆっくりと寝る訳にもいかず、1人ずつ見張りをする。やはり水流で外周に近付くので、見張る間はずっとボートを操る必要があり、かなり体力が必要となった。一度経験していたが、昼間の出来事で体力、気力とも大きく消費している。2人は3時間交代で2度に分けて睡眠を取ることにした。しかし次の日の朝になっても、2人の体から気だるさは抜けなかった。仕方なく、2人は池でもう一泊することを余儀なくされた。痛いロスであるが、体調も万全でない状態で無理をすることは出来ない。どちらが欠けても脱出は出来なくなる。万が一の失敗も許されないのだ。お互いに不可欠、一蓮托生の状況だからこそ、焦ることなく作戦への万全の体制は整った。
結果発表
Q、光姉さんは好きですか?
A、好き3人 嫌い7人 踏まれたい88人
圧倒的多数で踏まれたい人が多かったです。(結果はあくまでも作者の脳内で集計されています。)
作品の進行度として、島25話、本土9話まで書き上がっています。まだ誤字脱字、変な言葉遣い、エロさのチェックが終わっていませんが、来週の更新は出来そうです。
何度も言いますが、作者のモチベーションは読者様の反応です。感想をねだってるわけじゃ無いんだか(ry
そろそろアホな後書きに嫌気が差してきた人手を挙げてみて・・・(´・ω・`)