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第伍拾話 An act of going hunting in a field③

未だにスマホや他のパソコンでどう文章が表示されているのか分かっていません。


ごきげんよう作者です(♥ó㉨ò)


前回から、少し書き方を変えていますがどうでしょうか?


細かく文を改行して、間に一行入れています。


しかし、文を途中で切るタイミングが表示によってまちまちなので、長い文だと間の一行が入らず読み難いですね。これが一行で表示される人が何人いるんだかいないんだか。


↑とかいい例だわー!

第伍拾話 An act of going hunting in a field③


 何やら盛り上がっている高校生三人を放置して、銭形は光を屋上の隅に呼んだ。手には地図が握られていることを確認した光は、何か進展があったのだと確信した。


光の予想通り、銭形は進展があった事を最初に告げると徐に地図を開いた。


「えっとな、今いるのがここだ。」


 銭形はそう言うと地図の一角にある白い部分の多い場所を示した。なるほど、確かにもう見慣れた駐車場の形が地図上で白く抜き取られている。


しかし、そこにはまだ何も書かれていなかった。まだ新しいこの施設は地図に載っていなかったに違いない。


 頷きながら光は銭形の手から地図を毟り取ると、周囲の建物名を調べた。家の土地の形に四角く切り取られた空白が道に沿って並ぶこの一角に目立った建物は無い。


まぁ、いつも暇つぶしに周囲を眺めているのである程度は分かっていたが、この近辺で新しい物資の補給は無理そうだった。


せいぜい一軒家を巡って家捜しするくらいしか道は残されておらず、光は深い溜息を吐く。


 銭形は光の反応に別に落胆した素振りも見せずに地図の一角を指差した。そこはここから直線距離で五キロ程外れた山中で、ただ曲がりくねった道が地図の端まで伸びているだけだ。


光はそれを見て、銭形に視線を移す。銭形はその目を見返して一言言った。


「ここに俺の会社や他の企業で合同出資していた解体作業場があるんだ。」


「解体作業場?」


 銭形の言葉を光はそのまま鸚鵡返しする。いまいちピンと来ていない様子に、銭形は説明を始めた。


「俺の仕事は電気屋だったんだが、けっこう機材や車輌も使うんだ。毎回使うわけでもないから、最初はリースなんかに頼ってたんだが。」


「それで?」


「農業と同じで、期間限定でしか使わない車輌なんかは何社かで金を出し合って購入して一箇所にまとめて置いておくんだよ。そして期間を調節して使う。」


「それがそこにあるの?」


「そうだ。鍵は金庫に保管してるんだが、番号は俺が知ってる。」


「なんで解体作業?」


「色々壊して運ぶ事も多いからな、それに請負で廃材なんかにして売ったりよ。」


「でも解体する車なんか狩りで使えるの?」


 光は銭形に不思議そうな視線を向けていた。それで銭形は大体理解する。要するに光は解体作業場という言葉で何やらサン○ーバードの様なドリルでも付いている大型機械を想像したのだろう。


「これだから女ってやつは・・・。」


「・・・何よ?」


「いいか姐さん、ドリルもでっかい腕も付いてない普通のトラックだぞ。運搬用のクレーンがついたやつな。」


「・・・知ってた。」


「嘘付け。」


「知ってたもんっ!」


 語尾に『もん』とかついた時点で光の負けだった。自分の言葉に光は真っ赤になって俯いてしまう。


「まぁ知ってたって事でいいが、話の続きいいか?」


 銭形の言葉に光は赤い顔のまま無言で頷く。


「まず目的地は山の中だ。坂道を登っていけば地図には無いがこの辺りに金網フェンスで囲まれたうちの解体作業場がある。そこに確か三台くらいあったはずだ。」


「それで?」


「鍵は俺が居れば開けられる。燃料は冬の休憩所のストーブ用に灯油がいくらか常備してたから問題ないと思う。オイルが腐ってたりバッテリーが上がってるかもしれないが、三台あれば何とかなるだろ。」


「動かせそうなの?」


「ま、俺もこれだけ長い事放置されたのに乗ったことは無いから半々くらいと言っておこう。」


「とっつぁんはそれで命賭けられるの?」


「死ぬ気なんかこれっぽちも無いが?」


 銭形は頼もしくそう言って光に親指を立ててみせる。その笑顔は輝いており、光には死亡フラグにしか見えなかった。


「・・・まぁいいわ。じゃあ皆を呼んで作戦を練りましょう。」


 光はそう言って、地図を掴むと屋上を突っ切って階段に消えた。





 銭形の言った計画はいたってシンプルだった。市街地を避けて大回りに幹線道路の外れまで行き、そこからしばらく進んだ先にある山中を抜ける道路に沿って目的地を目指す。


問題はこのモールは市街地に囲まれている事と、皆にスキルが何も備わっていない事だった。まず銃器は音が大き過ぎるので使えないし、何より弾が貴重すぎる。


最悪の場合、今ある弾が尽きるともう補給は出来そうもない。そう都合よく自衛隊さんや警察官の成れの果てがこの辺を徘徊してくれているわけではない。


第一、徘徊しているのなら弾なんか撃ち尽くした人しかいないだろう。武器が尽きて逃げ回っているうちに殺されたと考えるのが普通だ。


 斎藤が弾を大量に手に入れたのは本当に幸運が重なった事と、何よりこの地獄の幕開けだったからと考えたほうがいい。今やそれから数ヶ月が経過している。


それだけの期間、弾を大切に温存しているのはどこかに潜伏して難を逃れた人か偉い人だけだろうし、そんな連中がのこのこ現れて武器を譲ってくれるわけがない。


なので、手作りで質のいい、それでいて扱いやすい武器が必要だという結論に至った。皆で思案を重ね、導き出した結果、最も適しているのは槍だと意見もまとまった。


 これは、斎藤が逃げる際に作った手作りの槍が非常に扱いやすく、実際それで敵を撃退した事も理由だった。


死体はその体格に関わらず非常に軽いこと、そして知能が低いことはすでに分かっているので、足を払って転がし、頭を槍で貫くのが最も効率の良い倒し方だと言えた。


骨格も脆くなっており、頭蓋を貫くのはそう難しくない。実際、真澄の模造刀でも頭は簡単に貫通できた。


 しかしその反面、力は非常に強く捕まるとまず逃げ切れない。なので、ナイフや刀で接近戦を挑むのは自殺行為だ。


「俺よく死ななかったもんだな・・・。」


 真澄は皆の意見を聞きながら、池で死体に襲われた時の事を思い出した。ものすごい力で水の中に引きずり込まれた時の事は忘れたくても忘れられない。


それから、銭形の指導で皆は槍造りを開始した。まず必要なのは軽いナイフだ。重すぎると、女性には扱えない。


そして本体になる竹などの棒も必要だったが、これは売り場にあった箒などで大量に確保できた。


樫か何かのかなり硬い木で出来た箒は非常に軽く丈夫で、皆はその先に刃物をきつく固定して自分用の槍を造った。


刃物の固定には工夫がなされ、接着剤や紐、それにパテや布などでかなり強く地面に打ち付けてもビクともしないものが出来上がった。


 そしてもう一つ試行錯誤されたのが弓矢だ。これはクロスボウが一つしかないため、飛び道具として何かないか考えた末行き着いたあまりにも妥当な武器だった。


クロスボウの弦も補助弦を使って取替えは可能だが、これも限りがある。おいそれとその辺りの店に売っているものでもないし、何より毎回矢を番えるのに足で踏んで弦を引き上げる作業は危険だった。


なので、移動しながら矢を番えられる和弓がいいのではないかと意外にも優が意見を出したのだ。


 和弓は威力を求めると、とても造るのが難しいものだ。竹も乾いた物を裂いて何本も同じ物を重ね合わせ、熱い湯に浸した布を巻いたり蒸したりして地道に曲げる作業もある。


かといって一本の竹では威力が低く、子供の玩具に毛が生えた程度の物しか出来なかった。


そのため、何故か知識を豊富に持っていた優が少女達で弓造りチームを結成し、一ヶ月かけて十数本の箒を犠牲にしやっと二組の弓矢を完成させた。


しかし、出来上がった物はあまりにも威力を出す事に特化しすぎていたため、引けるのは真澄と銭形だけで、この二人が結局狙撃班として訓練をする羽目になった。


 そして、約二ヶ月を費やして何とか皆、形になる程度にスキルを上げる事に成功した。





 その日、空は大寒の日本晴れで澄みきっており、雲はほとんど無かった。


モールの屋上に繋がる梯子の下には、異様な集団が降り立っていた。皆がスキー用の大きなゴーグルをつけ、頭には自転車用や作業用のメットを被っている。


そして、口は厚い布で覆われどう見ても覆面をした変質者の集団だった。これは、死体の血や肉片が次の死体を生む直接の原因と推測した光と斎藤の案で装備を義務付けられたのだ。


 今日の目的はモールから五百メートルほどにある病院だった。薬局も併設されたそこである物を手に入れるのが目的だ。


降り立ったのは五名。リーダーの光、そして真澄と斎藤と銭形の男性三名、そして一番すばしっこく、ある意味最も冷静に動けると自分で志願した未来が最後に地面に降り立った。


 斎藤と光は用心のために拳銃を携帯したが、弾は三発だけしか入っていない。これはもし失敗して皆が帰らなかった場合に残されるのが飛鳥と女子高生二人と子供二人だけだったため、用心で残したのだ。


元より銃を使うつもりもないし、失敗する気もないから大丈夫だと斎藤は笑っていたが、地面に立った斎藤はすでに足がガクガクと傍目で分かるほど痙攣し、とても頼りなく見えた。


「びびんな、練習通りやれば死にゃしねえから。」


 銭形がそう小声で囁いて斎藤を奮い立たせようとしたが、斎藤はすでに真っ青で病人の様に虚ろな目で銭形を見返し力なく乾いた笑いを発しただけだった。


その様子にやれやれと頭を掻いた光だったが、心境は似たようなものだった。あの死体の恐怖は知っているし、いくら完璧に思える戦闘法も実際に試したわけではない。


皆が不安だった。押し黙って皆が自分の槍を持ち、穂先に付けていた鞘を外して背中のリュックにしまう。小さなカチャカチャと鳴る音だけがしばらく続いていたが、真澄がそれを見つけて声を発した。


「来ましたね。」


 そう言って真澄が指した方向に皆が一斉に目を向ける。いや、一人だけ反対を見た者が居た。未来だ。


皆が一点に視線を集中すれば背後が疎かになる。なので、必ず背後を確認する人間を最初から決めていたのだ。今回はそれが未来だった。


「こちら目標なし。」


 小さな声が背後の安全を確保し、銭形が真澄の指した方向へゆっくりと移動する。そこに居たのはボロボロに擦り切れたサマーニットを羽織った女性の死体だった。


元の歳は推測でしかないが、多分三十前後だろう。ヨタヨタとした足取りで確実に五人を目指している。


 銭形はその女性に迷い無く近付き女性の背後に回る。それに釣られて女性の死体は銭形を追うように反転した。


その瞬間、女性の死体は背後から真澄の槍で膝の裏を突かれた。槍はほとんど抵抗なく女性の膝裏に突き刺さる。真澄は躊躇うことなく槍を小さく横に振った。


その一撃で女性の死体は足が変な方向に曲がり、体重を支えきれずその場に崩れ落ちた。


 足を破壊された死体は、それでも銭形を追うのを止めずにズルズルと足を引き摺りながら匍匐前進を始めたが、銭形はその眉間に容赦なく槍を突き刺した。


それであっさりと死体は事切れた。スルリと抜かれた槍の先に薄茶色の体液が滴る。血も最早赤ではない。


「簡単だな、予想よりかなり簡単に殺せる。」


「そうね、次はいきなり後頭部から刺してみましょう。足を刺しても痛がりもしないし、いらない手順は省いていきましょう。」


 光の声に斎藤が小さく頷く。それを合図に、光が予め決めていたサインを指で作り指示を出していく。


モールの裏は狭く、前後以外に横から挟撃される事はない。なので、前後を警戒しながら皆が適度に散開して進んだ。百メートルも進むと、モールの建物の端に着く。


そして、そこから開けた空間に出た。モールを囲むように作られている駐車場だった。車輌はモール閉店後の惨劇だったためか、かなり少ない。従業員の物は専用の駐車場があるのでそちらだろう。


「トラックの裏に一体います。」


 未来の声に、斎藤がゆっくりとトラックを遠巻きに回る。その反対から、銭形が回り込む。


そこに居たのはこれまたボロボロになった老婦人だった。死ぬ前に齧られたのか、腕が皮一枚で繋がり、ブラブラと揺れている。


斎藤はトラックの箱部分を軽くコンコンと叩いて、婦人の注意を自分に向けた。ゆっくりと振り返ったその顔は、白く濁った眼球が半分飛び出すように剥き出しになっている。


「う・・・。」


 小さくそう呻いた斎藤だったが、その顔面の真ん中から鈍く光る穂先が突き出した。銭形の槍が今度は頭を一発で射抜いたのだ。


「油断すんじゃねえぞ。」


 銭形が一瞬怯んだ斎藤にそう小声で注意を促し、また駐車場を散開して進む。目的の場所は、駐車場の先にある二車線の道路をずっと下った先だ。まだまだ道は長い。


その後、駐車場に居た十体程の死体はあっという間に五人によって片付けられた。相手がまだコチラに気付く前に頭を確実に潰していけば、そう恐いものではない。


だが、油断して捉まれれば終わりだ。いくら簡単に倒せても、これはコンティニューのきかない現実なのだ。


 やがて五人は、駐車場の出入り口に辿り着いた。道は二車線で比較的広いが、所々に乗り捨てられた車が点在しているため見通しは悪い。影に隠れている死体には十分に注意しなければならない。


隠れるほどの知能は奴らにはないと知ってはいるのだが、いつか見た目の黒い死体が最大のネックだった。その事を光と真澄は忘れておらず、皆に最大級の注意を呼びかけていた。


トレーラーを川に落としたあれは確実に知能がある。そう思う方が恐い現実だったが逆に安全でもある。そうであって欲しくはないのが本音だが、注意しすぎる事は無い。


 幸い、道路に点在する車の影に隠れている死体は居なかった。どいつもこいつも五人の出す衣擦れの音や僅かな匂いに反応してノソリと道路に姿を現した。


その都度、皆は冷静に焦ることなく死体を倒していった。移動は出来るだけ速く最短距離を行ったが、それでも皆が病院の入り口に辿り着いたのはモールを出てから三十分は経過していた。


 この病院に来たのは、医療品は勿論だがプロテクターを作るためだった。病院、特に骨折などの外科がある病院には湯に漬けて柔らかくして形を変えられるギプスがあるのだ。


この規模の病院なら、全員分のギプスがあるに違いない。これで腕や脛など、主に体の末端を覆う軽いプロテクターを作ろうと鈴子が提案したのだ。


比較的近い病院は、移動の練習にも最適だったのも理由だ。いきなり遠出して全滅しては意味が無いのも皆分かっていた。


 病院の入り口は、当然といえば当然だが硬く施錠されており、侵入は難しかった。しかしそれは、中に入れさえすればある程度の安全を確保できるという意味だ。


中で死んだ者さえ片付ければ安全に探索できる。なので、二階の窓を一つ壊して侵入する事は事前に決められていた。


 銭形はまず登れそうな場所を探したが、病院はモールの様に梯子など付いておらず、結局鉤状の金具で作っておいたロープを玄関フードの屋根に引っ掛けて銭形が腕力だけで登っていった。


その音で近くを徘徊していた死体が三体寄ってきたが、斎藤と真澄であっさりと倒してしまった。囲まれる前に倒せば槍の利便性が失われることは無い。


 銭形は上から見ていたが、下にロープを降ろすとまず軽い未来を捉まらせ、一気に上に引き上げる。次に光を未来と二人で引っ張り上げ、さらに三人で斎藤を、そして最後に真澄を全員で引っ張り上げた。


五人が乗った玄関フードの屋根はベコンベコンと嫌な音を立てていたが、それで死体が寄ってくる気配は無かった。周囲に他の死体はいないらしい。


 そこで五人は休憩を入れることにした。銭形のリュックから魔法瓶が出され、中から湯気の立つ琥珀色の液体が紙コップに注がれる。


皆は手袋を脱ぐと、手に死体の体液が付着していないか入念にチェックしてからコップを持つと、指に口が付かないようにおちょぼ口で飲んだ。


しつこいようだが、注意しすぎる事はない。やがて魔法瓶は空になり、皆が温まると再び手袋をはめて準備を整えた。


 そして、窓から中を確認して死体が居ない事を確認すると、真澄が布テープを何枚も重ねて窓ガラスに貼り、銭形が金槌であのホテルのドアを破ったようにガラスを割った。


鍵を開けると、静かに窓を開け中に侵入する。そこは、入院用の病室でベッドが六つ並んだ部屋だった。すぐに皆はベッドの下を確認したが、死体は横たわっていなかった。


 入念にチェックをすると、やがてまた光が指で指示を出す。そして、銭形を先頭にしてフォーメーションを組むと、全員で病室を後にした。





 病院内は、思った以上に静かだった。想像した医師やナースの死体はおらず中は全くの無人だったが、その理由はすぐに判明した。


「移動した後か・・・。」


 悔しそうな斎藤の声が意外に大きく響いた。病院は、すでに避難所に引っ越した後で何も残されていなかった。医療用具は大きな機械以外は全て持ち出され、ほとんどの診察室はもぬけの殻だった。


しかし、ギプスはすぐに見つかった。四角い白いシートの様なそれは、外科の棚の中にダンボールで大量に残されていた。必要な量以外は残されたのだろう。


麻酔や薬品関係は粗方無くなっていたため、これは移動ではなく略奪の後かもしれないと皆は考えた。よく見ると乱雑に開けっ放しになった引き出しや散乱した書類も多い。


 慌てて移動したと思い込んだが、これは火事場泥棒が正解だろう。その証拠に、注射器や聴診器などはかなり多く発見した。薬以外は放置されたようだ。


そうなれば、隣の薬局も同じ有様かもしれないと考えたが、予想通り薬局はさらに悲惨な状況だった。明らかにドアが破壊され、薬品のほとんどが持ち出されていた。


時期的にはモールがまだ警護されていた時だろう。銃で武装した人間が居ては手が出せなかったに違いない。


 だが、最低の収穫はあった。後は戻るだけだと全員が帰路に着いた時、それは現れた。


見た目は普通の死体だった。さすがに慣れてきた斎藤は、億劫に感じながら近くの車輌を叩いてそれの注意を引いた。そして、それが自分に向けて歩き出した事を確認すると槍で頭を穿った。


しかし、それは命中せずに死体の手で弾かれた。一瞬の出来事に、斎藤は呆気に取られたが、すぐに叫び声を上げた。


 その死体は、払って顔面の横を通り抜けた槍を掴んだのだ。


「槍を放せっ!!!」


 金切り声が横から響き、斎藤は慌てて槍を離して後方に飛びのく。刹那、死体の後ろから真澄が頭を貫いた。


死体は、しばらく槍を握ったまま硬直したが、やがて前のめりになりドサリと音を立てて倒れると動かなくなった。


「こいつ・・・、あかんやつや。」


 狼狽して関西弁が出た斎藤を無視して、光は倒れた死体を槍でつついた。死体がピクリともしない事を確認すると、やがて徐に足で死体をひっくり返した。


その顔面には槍が貫通した傷が大きく口を開け、薄茶色の体液がトロトロと流れ出していた。そして、その死体は眼球が墨でも流し込んだように真っ黒だった。


 光は穂先でその眼球を器用に抉り出した。そして転がして調べてみたが、瞳が黒いわけではなく、その眼球自体が真っ黒に変色している事を確認した。


まるで黒いピンポン玉の様なそれは、かつて見た黒目の死体のそれと同じだった。


「こいつら、やっぱり他にも居たのね。その辺に居る普通の死体とは別種なのが今確定したわ・・・。」


 そう言って光は、目玉を抜かれた死体の頭を蹴っ飛ばした。すると首がもげ、ゴロンゴロンと道端に転がっていった。やはりかなり脆い。


そうこうしている内に、また別の死体が音に誘われ姿を現した。こいつらは本当にウンザリするほど数が居る。


「囲まれる前に逃げるぞ。」


 まだ何かしようとしていた光に銭形が声をかけた。


「待って、こいつ警官だわ。」


「鉄砲持ってますっ!」


 そう言って未来が首の無くなった死体の懐から黒光りする鉄の塊を取り出した。死体は普通のスーツ姿だったが、中に洋画などでよく見るガンホルスターを装着していたのを光と未来は見逃さなかったのだ。


だが、銃創に弾は入っていなかった。それでも何か無いかと物色していた光と未来は、ポケットの奥にあった弾を一発だけ発見した。


「無いよりはマシだったわね。」


 そう言うと光と未来はすぐに銭形の後を小走りに追いかけた。





 女子トイレで光と未来は服を脱ぐと、銭形に作らせた簡易シャワーで湯浴みをしていた。


上の容器に最初水を貯めて、それから適量の熱湯を入れてぬるま湯にする。限られた量だが、無いよりはあった方がいい。


お互い交互に体を洗って湯を被る。男性陣は隣の男子トイレでバケツに入れた水でガタガタ震えながら体を拭いている事を考えると、女性で良かったと二人はニンマリ笑った。


 今日着た服はこの後屋上で燃やす予定だったので、二人は用意していた真新しい服を着ると火を入れた一斗缶の前に座って暖を取った。


そこにまだ髪の濡れている三人が加わり、今日の無事を称えあった。辺りはすでに暗く、赤々と燃える火以外の灯かりはない。そこにランプを持ったモールの五人が食事を運んできた。


 今日は残った食材で比較的豪華な食事だった。そしてお酒と少量のチョコレートもデザートに振舞われた。


「本当に待ってる方は心配で胃が痛かったですよ。」


 そう言ったのは飛鳥だった。その横で鈴子と優が二人がかりで未来の頭をグリグリと撫でている。


「いやー、あんたやるじゃない。唯のチビッ子だと思ってたけどお姉さん感心したわー。」


「んだんだ、未来のくせにやるもんだわー。」


「痛いよやめてよ痛いよ。」


 そう言っている未来もホッとしたような笑みを浮かべている。


「父ちゃん生きてたなっ!」


「あったりまえだのクラッカーよっ!電気屋なめんなよ。」


 そう言って銭形は健太郎を膝の上に座らせて焼酎をチビチビやっている。まず父ちゃんと言われている事に何の違和感もないのが不思議だ。そして焼酎が死ぬほど似合っているのもらしい。


「で、ある程度やれそうな事は分かったわけで、次は本格的に遠出なわけで。」


 そう言ったのはすでに酔っ払い始めた斎藤だった。某北の国の息子さんみたいな口調になっている。


「これで終わりじゃないんだからあんまりはしゃいだら駄目よ。」


「まぁまぁ、今日はいいじゃないですか。」


 相変わらず空気を読めない光と緩和剤になっている真澄。だが、口では厳しい事を言っている光も腕に眠った花梨を抱いていた。しかもちゃっかりお湯で割った焼酎もグビグビやっている。


だが、確かに今日はまだ序の口なのだ。しばしの休息の後、今度は今日の十倍以上の野外活動になる。多分一日で辿り着けず、野営も経験する事になるだろう。


出来れば日の長い夏に決行したかったが、それまでとても食料が保たない。だから、危険を承知で外に出る。


 皆、口には出さないが不安や恐怖と戦っているのだ。だからこそ、ホッと気を休める瞬間が必要になる。だから、たまには羽目を外す。


だからこそ、人は人を求めるのかもしれない。明日はその人が帰らないかもしれないこんな世界でも。そう思いながら、皆は揺れる火を囲んでいつまでも語り合っていた。

健太郎と花梨の名前を覚えていた人が何人いたでしょうか?


もうすぐペナントレースも終わりですね。寂しい・・・。


ニコニコの生放送で三窓とかやって野球見てる作者には厳しい冬ですハィ


小説書けよってツッコミは無しで(´・ω・`)



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