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第参話 絶望

遅くなって申し訳ないです。

仕事が忙しかとですたい(・ิω・ิ)

第参話 絶望


 しばらくぼんやりしていた真澄だったが、流しにいって血を洗い流す。虎徹に付着した血も綺麗に洗い流し、乾いたタオルで水滴を拭き取ると、鞘に収めた。チンッという音が周囲に虚しく響き渡る。


「なんでこんなことに・・・。俺はただ、あの人達を助けたかったんだ・・・。助けたかっただけなんだよっ!」


言いようの無い怒りに支配された真澄は、壁を思い切り殴りつける。ベコンッと壁がへこんだが、同時に鋭い痛みが拳に走った。


「ぐああっ!いててててて。」


どうやら拳を傷めたらしい。ジンジンと痺れ、鈍痛が続く。散乱した食料をかき集め、血を拭き取っていく。無残な親子の遺体は、3人並べてシーツをかけた。そのあと、元凶であるニートの死体を滅茶苦茶に蹴飛ばし、ベランダから外に放り投げる。まだ血の乾いていない死体は、あっと言う間にゾンビが群がった。


「屑が・・・、ニートって奴は何の役にも立たないくせに人を不幸にする。殺して清々したぜ・・・。」


元凶のニートに対する怒りがまた沸いたが、もう壁を殴るのは止めた。これ以上自分を傷つけても意味は無いのだ。ペットボトルを開け、喉を潤す。そのまま壁に寄りかかり、ズルズルと座り込んでしまった。





 どれだけ時間が経っただろうか。外は夕焼けに染まり、赤い光が差し込んでいた。呆けて外を眺めていた真澄の背後で、カチャリと音がする。玄関が開いたのだ。


「しまったっ!鍵もかけて無かったかっ!くそったれがっ!!」


慌てて虎徹を抜き玄関に急ぐ。そこには山寺茜が立っていた。


「あ、あのね・・・。土倉先輩が、そろそろ迎えに行ってきなさいって。」


山寺茜の言葉に、真澄はばつの悪い顔をする。


「無茶苦茶な悪口言って出てきたからな、今さらだよ。俺はこっちで単独行動することにした。」


「そっか、じゃあ私もこっちに来ちゃおうかな?先輩は口煩いしっ!」


その言葉に真澄はつい顔をほころばせてしまう。


「そうするか?でも俺に襲われちゃうかもしれないぜぇっ!?」


「やんっ!その時は命がけで私を守ってもらうからねっ!それだけの価値はあるわよ?責任は取ってもらわなくちゃね。」


「言ってろ。じゃあお前の荷物も運ばないとなぁ、服は奥さんのがあるから、食料と水だなっ!」


「だねっ!じゃあ私は荷物持ってくるわね。」


「馬鹿、俺が1回で持ってきたほうが安全だろ?俺が行くよ。」


「そっか、そうだねっ!お願いしちゃおうかな?」


「おう、まかせろっ!」


2人で次の行動を決めて、真澄が部屋を出ようとすると、山寺茜は3人の遺体を見つけた。


「あ・・・、結局3人とも死んだんだね・・・。あのニートみたいな奴でしょ?実は窓から見てたのよ。」


「ああ、可哀想なことをしたよ。俺が来なければ死ななかったかもしれない・・・。」


「そんなことないよ・・・。真澄は助けようとしたんだし、この人達も恨んでなんかいないと思う。」


「だといいんだけどなぁ。んじゃ行ってくるよっ!」


「頼んだわよっ!」


3人に向かって手を合わせると、にこやかに手を振って真澄を送り出した山寺茜だった。





 山寺茜が持参していたリセッ○ュを体中に吹きつけ、真澄は慎重に外に出た。階段を2Fまで降りたところで、悲鳴のようなものが聞こえた気がした。嫌な予感がして、真澄は3Fに引き返す。


「茜っ!どうし・・・。」


そこには、起き上がった親娘に手足をガッチリと抑えられ、首を噛み切られて痙攣する山寺茜の姿があった。口からゴボゴボと血を吹き出し、首筋からピュウピュウと血が蛇口のように流れ出している。すでに大きな血溜まりが出来て、その傷が致命傷であることを顕著に物語っている。もう瞳は虚ろに潤み、口はパクパクと何かを呟いているようだった。


「死んだ者は全てゾンビになる・・・。なぜ失念していたんだ俺は・・・。」


真澄は1人で山寺茜をこの部屋に置いた自分の馬鹿さ加減に愕然としたが、次の瞬間、雄叫びを上げて虎徹を振り回した。リセッ○ュ効果で存在に気付いていなかった親娘は、あっさりと頭を叩き割られその場に崩れ落ちた。その後、何度も山寺茜に語りかけたが、何も答えないまま、彼女はその生涯を終えた。真澄は黙ったまま、食料と水をまとめると、彼女が迷い出てこないように、大刀を構えた。まるで眠っているようなその顔を傷つけるのは躊躇われ、横を向かせ側頭部に虎徹を突き立てる。そのまま顔を正面に向け、冷たくなった両手を胸の前に組ませると、血に染まったシーツをかけて、マンションを後にした。





 自宅の前に立つと、ノックをする間もなくドアが開く。心配そうな顔をした土倉光が顔を出す。蒼白な顔と一人で立っている真澄を見て全てを察した土倉光は、何も聞かずに真澄の頭を抱えて擦ってくれた。


「先輩・・・、俺・・・、俺・・・、間違ってましたか・・・?何を間違って・・・。ふえええええええええ。」


土倉光に頭を抱かれた真澄は、一気に堰を切った感情のままに一晩泣き続けた。その間、土倉光は優しく真澄を慰め続けた。まるで母親のように優しく。


「あなたは何も間違ってないわ、人として当たり前の選択をしただけ。だから何も間違ってないの。」


優しい抱擁は、次第に真澄を穏やかな眠りへといざなっていった。





 次の日、真澄は土倉光の顔をまともに見れなかった。昨晩は情け無い泣き顔をずっと晒していたのだ。普通の男なら顔から火が出そうなくらいの羞恥心が芽生える。しかし、ベッドでずっと真澄を抱きしめてくれていた土倉光は、特に気にした風もなく真澄を真っ直ぐにみつめていた。


「おはよう。よく眠れたかしら?」


「え、あー、あの・・・、はい。」


「それは良かったわ。今日からは気持ちを切り替えてね?死んだ人は戻らないんだから、いつまでもメソメソしてちゃダメよ?」


「あ、はい。そうですよね。どうも・・・。」


「何を照れてるのよっ!こっちまで恥ずかしくなるじゃないっ!!!」


バンッと真澄の肩を叩く土倉光。彼女にしても真澄の態度は気恥ずかしいらしい。


「うっすっ!じゃあ元気出していきますかっ!」


「そうこなくっちゃね。やっとらしくなってきたじゃない。」


しかし、2人にはすでにやることが無くなっていた。蛇口を捻ってまだ水が出ることを確認すると、ペットボトルの水を入れ替えていく。その作業も台所と風呂場で別れて作業すると、30分ほどで終わってしまう。TVは点かない。当然PCも使えない。あとは何もすることが無くなる。部屋でぼんやりとするだけだった。


「暇ねぇ・・・。」


「暇ですねぇ・・・。」


「何か漫画とか無いの?」


「全てDL書庫ですからノートPCとメモリの中にしかないですねぇ。」


「使えないわねぇ。」


「そこは俺のせいじゃないかと?」


あまりにも暇なので2人して外を見る。ゾンビさんは今日も元気に歩き回っている。こうやって見ると、まるで徘徊老人のようだ。


「何か間抜けよねぇ・・・、あんなのに自衛隊は全滅させられたの?」


「ですよねぇ、昨日戦いましたが、けっこう脆いっすよ?」


「あ、あれってカップルじゃない?」


上を見上げると5Fのベランダに男女が現れていた。真澄を見ると怯えたような顔をしている。


「あー、俺は殺人犯だと思われてますんで。実際殺しましたが・・・。」


「それでいいの?誤解解いておこうか?」


「いえ、他人と関わるなって先輩の考えが、今ならよく分かります。むしろ好都合だと思うんで放置しましょう。」


「それでいいなら放置しましょう。」


結局やることも無く、2人はベッドに腰掛けて雑談するしかなかった。





 その夜、真澄は虎徹とロト○剣を磨いていた。少しでも刃先を尖らせて、突き味を上げておこうと考えていたのだ。いつかはここを出て奴らと戦わねばならないかもしれない。武器の手入れは必要だった。水のシャワーを浴びた土倉光が、髪を拭きながら戻ってくる。まだ水だけは機能していた。


「何やってるの?」


「え?武器の手入れですよ。いつまた襲われるか分からないでしょう。」


「あんたみたいな非力な坊やで戦えるのかしら?」


「俺だって男ですからね、先輩よりはイケると思いますよ?」


「あら、言うわね・・・。腕相撲でもしてみるかしら?」


「いやいや、負けるわけないですから。するまでもないですよ?」


「すごい自信ね。じゃあ私は両手でいくわ、あんたは利き手でいいわよ。」


「どうしてもやるんですか?」


「今さら怖じ気付いたかしら?」


カチンときた真澄は受けて立つことにした。テーブルに向かい合って座る。土倉光は真澄の左手を両手で握った。真澄は元々左利きで、昔矯正したため現在は両利きである。意外に小さく柔らかい土倉光の手の感触にドキリとしたが、勝負を負けるわけにはいかない。


「意外に大きい手ね。まんざら吹いてるわけじゃないんだ?」


「だから言ったでしょう?やめるなら今ですよ。」


「両手で負けるわけないでしょ?レディゴッ!」


「あ、ずるいっ!」


土倉光の不意打ちに、一気に持っていかれそうになったが、意外に力が無いことに気付く。余裕で元の位置まで盛り返した。


「くっ!やるじゃない。」


顔を真っ赤にして体重までかけてくる土倉光の子供っぽさに苦笑しつつ、そのままジリジリと反対側に手を倒していく。テーブルに手が付くスレスレでわざと力を緩め、苦戦を装う。


「負けないわよおおおおおっ!」


「やりますね先輩、でも男には負けられない戦いがあるんすよっ!」


ニヤニヤしながらゆっくりと土倉光の手をテーブルに押し付けた。勝負が決し、呆然とする土倉光、勝ち誇る真澄。


「ワ、ワンモアセッ!(One more set)」


まだ諦めきれない土倉光は、次は右手での勝負を挑む。今の勝負で両手の力を分かってしまった真澄は、勝ちが分かっていながら、土倉光をからかうために賭けを持ち出した。


「敗者が勝負を持ちかけるなら、何か賭けませんか?」


「何を賭けるの?私は何でもいいわよっ!次は負けないんだから。」


「ん~、じゃあ一晩好きにさせてもらおうかな?」


「な、何を?」


「先輩をですよ。何でも言うことを聞くってことでどうです?勿論俺も同じ条件で。」


「い、いいわよっ!受けて立とうじゃない。」


相当の負けず嫌いだ。賭けの意味を分かっているのだろうか。


「ではやりましょう。セット、レディー」





 勝負はあっさりと決着した。真澄が負けるはずがない。今度は手加減抜きで一気に両手をテーブルに押し付ける。


「こんな馬鹿なことって無いわっ!インチキだ、絶対インチキだわっ!」


負けた土倉光は、顔面蒼白でうろたえる。


「両手まで使っておいて、今さら反故にしようったって無駄ですよっ!さぁ好きにさせてもらいますからね?」


「ま、待ちなさいっ!待って、私にも心の準備が要るわ・・・。」


そう言うと土倉光はベッドに横になり、目を閉じてしまった。まるでまな板の鯉状態である。真っ赤な顔をして唇はわなわなと震えていた。よく見ると手が小刻みに震えている。


「クックック・・・、アッハッハッハッハッハッハッハッ!」


真澄は堪らず笑い出す。別に好きにすると言ってもSEXを要求するわけではない。真に受けた土倉光の態度が可愛くてついからかっただけなのだ。


「もういいっすよ先輩、可愛いとこ見れただけで十分っすわ、アッハッハッハッハッハッ!」


しかし、土倉光は我慢できなかった。笑い転げる真澄の側頭部に蹴りを入れる。


「年上を馬鹿にしてっ!あんた最低だわっ!!!」


マジ切れにびびった真澄は、途端に態度を180度変えて土下座して謝る。


「すんませんでしたあああああああああああっ!!!」


「今さら遅いっ!そうね?代わりに私の言うことを何でも聞くなら許してあげるわっ!」


「それで許していただけるなら・・・。」


ニヤリと笑う土倉光。まんまと真澄を罠に嵌めたのだ。


「あ、確信犯かああああああっ!!!」


「もう遅いわよ。明日一日あんたは私のオ・モ・チャッ!」


「嵌められたっ!!!」





 水の補給と入れ替えを全て1人でやらされた真澄は、現在マッサージ中である。今日1日は土倉光の丁稚なのだ。足や肩などグイグイと押していく。柔らかな体の感触に、これはこれで役得だと思うことにした。ドサクサに紛れて胸や太ももを触ろうとしたが、ことごとくガードされる。敵もなかなかである。一種の焦らしプレイだと思うことにした。


「邪な考え持っちゃダメよっ!私の体に触れようなんて10年早いわ。」


「もう触ってますが?」


「馬鹿ね、肝心な場所は触らせてないでしょう?」


「ですよね。昨日思う存分触っておけばよかった。」


「もう遅いわよ、後悔先に立たずって言うでしょ。」


「ですね。女って恐いっすわ。ゾンビより恐ろしい。」


馬鹿な会話をしつつ、マッサージを終わらせた真澄は、外の様子を窺う。最近はやることも無いので、暇さえあれば外を見ている。いつ救助があるか分からないのだ。外は相変わらずゾンビさん達以外は動くものも無い。


「外の状況は好転なしですね。5Fのカップルも今日はまだ見て無いし、そろそろ死んだかな?」


「食料なしだとそろそろ限界よね。せいぜい7日くらいしか生きられないと思うわ。」


また他愛も無い会話をする。その時、遠くから何やらエンジン音らしき音が聞こえた。





 エンジン音の正体は、自衛隊の車だった。1台だけでこちらに迫ってくる。迷彩服を着た自衛官が、アサルトライフルのような銃で、寄ってきたゾンビの頭を効率よく撃ち抜いていく。どうやら頭部が弱点という情報は伝わっているらしい。日本では手に入らないような重装備だ。米軍払い下げの兵器だろう。


「せ、先輩っ!自衛隊ですよ。やっと救助が来ましたっ!!!」


真澄は興奮気味に土倉光に報告する。土倉光はベッドに寝転んでいたが、バッと跳ね起き、その勢いのまま真澄を床に押し倒した。


「ちょっとっ!何するんですかっ!こんな時に盛ってもダメですよっ!アッー!!!」


「ちょっと黙りなさいっ!静かにして・・・。」


「先輩?」


「あんたは少しだけお利口になったと思ったけどまだまだね・・・。すぐに信用するんじゃないわよ。」


「どういう意味ですか?」


「しばらく様子を見ましょう。自衛隊ってのは単独じゃ行動しないはずよ。」


「あ、そう言えば何々小隊とか中隊とか言いますよね。確かに怪しいかも。」


2人はカーテンの隙間から様子を窺うことにした。自衛隊の車輌がアパートの前に来る。対面のマンションから例のカップルが手を振りながら何か叫んでいたが、自衛官が下りてこいというジェスチャーをすると、数分してマンションの前に現れた。真澄のアパートからも、3人ほどが出てくる。自衛官が何事か喋っている。離れているためよく聞こえない。


「・・・くりょう・・るのか・・・うはな・・・。」


パーンッ


乾いた音が響き渡り、カップルの男のほうが倒れた。


パンッパンッ


続いてアパートから出てきた3人のうち、男2人が倒れた。残されたのは女2人と自衛官だけだった。


「ちょっ!撃ち殺しましたよ・・・。どうなってんだ?」


「静かに・・・、まだ何かする気よ・・・。」


残された女2人は膝をつかされ、頭の後ろで手を組まされていた。自衛官はその手を荒縄で縛り拘束していく。車輌の後ろであるホロ部分が開き、女2人はそこに詰め込まれた。中には若い女性ばかり10人くらいが拘束されて転がされていた。それに明らかに略奪したであろう食料の山も乗せられていた。


「そういうことか・・・、食料があれば食料、無ければ女を連れ帰ってるのか。最悪だ・・・。」


「自衛隊はもうダメね。独立愚連隊状態で、略奪し放題だわ。野放しにされた野獣も同然ね。弾を撃ち尽くすまで暴虐の限りを尽くすわよ。だから人間は信用できない。守るはずの人間が武力行使で一般人から搾取するなんて・・・。」


最悪の現実を目にして、2人は絶望するしかなかった。自衛隊は、女たちを乗せたまま、何処かへ消え去っていた。

ボツにした最大の理由が、話が暗いことと主役クラスがアッーする冒険しすぎな点だったのですが、敢えて修正しませんでした。


だって全部書き直しになるんだもん(´・ω・`)

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