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第弐話 人間の本質

日曜日を1日使って修正できたのがこれだけ(´・ω・`)


本編は全く書けてないので、日曜日に1話ずつが関の山かも。

第弐話 人間の本質


 桜井真澄は焦っていた。この上なく焦っていた。今女が寝ているベッドの布団の下には、彼の宝がザックザクである。そう、決して他人に見せられない、彼だけの宝物が。


(まずいぞ・・・、ベッドの下のブツのことをすっかり忘れてたぜ・・・。なんであの女は他人のベッドでスヤスヤと熟睡してるんだよ?普通は遠慮してソファーとかで寝るだろう。まだ気付いてないが時間の問題だ・・・。ベッドの違和感に気付くのも時間の問題だぞっ!)


真澄はコソコソとベッドに忍び寄る。電気は消され、辺りは外の街灯の光でうっすらと見えるだけだった。忍び足でベッドの横に辿り着いた真澄の足に柔らかいものが触れた。驚いて後退りすると、ベッドの下に山寺茜がタオルケットに包まってスヤスヤと寝息を立てている。


(くっ!敵は2段構えの防御網を敷いている。万事休すかっ!いや、まだだ。まだ終わらんよっ!)


山寺茜に触れないように大股で跨いで、真澄はベッドの布団の下に手を突っ込む。あった。何冊かの薄い大判の小冊子を引っ張り出した。


(フフフ、やっと我が手に戻ったか・・・。これさえ手に入ればこんな所に用はな・・)


「何してるのかしら?桜井・・・。」


真澄は心臓が破裂したかと思った。寝ぼけ眼を擦りながら、敵のGが起き上がったのだ。Dはまだ寝息を立てている。


「いえ・・・、特に何もしてないですよ。忘れ物がこっちにあったので取りに来ただけです・・・。」


小声でGに言い訳をする。Dを起こさないために大声は出せなかった。冷や汗が脇の下を伝い、体に流れていく。


「嘘を吐くんじゃないわよ。明らかに体に触れられた感触があったわよ。何しようとしてたのかな?」


Gが真澄を追い詰めていく。真澄は窮地に立たされていた。Gは腕組みをして真澄をジトリと睨んでいる。こんもりとした胸が強調され、谷間が形成されていた。真澄はゴクリと唾を飲み込む。


(く、敵の新型は化物か・・・、なんて凶器を隠し持ってやがる。このままではこちらの武器の存在がばれてしまう・・・。)


すでに真澄は背中に隠している怪しい小冊子を隠しきれる自信が無くなっていた。前屈みにならざるを得なくなっていたからだ。薄いジャージでは、暗闇でもテントの存在がばれる。もじもじと内股で頭が垂れてくる。


「ほほぅ、こんな状況でいい度胸ね?それに隠し持ってるものをそろそろ出しなさい。」


(ぐはっ!ばれている。全てお見通しだったのかっ!)


真澄は観念して怪しい小冊子を差し出した。


「何?なんだ、ただのエロ同人じゃない・・・。ビックリしたわよ。そんなもんで抜く気だったの?」


「い、いえ。抜くとかじゃなく見つかる前に隠そうかと・・・。」


「馬鹿ねぇ、男の子がエロ本を持ってないほうが気持ち悪いわよ。それより玄関のノブは回らないようにきつく縛ったんでしょうね?」


「はい、一応俺の力ではビクともしないくらいに縛ってありますけど・・・。」


「よろしい、じゃあ侵入はされなくなったわね。よし、寝ていいわよ。」


「ではお言葉に甘えまして。」


真澄は毛布を手に取ると玄関に向かおうとする。


「どこ行くの?この部屋で寝ていいわよ?」


「いや、女性2人と同じ部屋というわけには・・・。」


「私が構わないって言ってるでしょっ!こっちきなさい。あなたの部屋で何を遠慮してるのよ。」


「では、僕はこっちで・・・。」


部屋の隅に腰を下ろそうとすると、また文句を言われる。


「いつ襲われるか分からないんだから、しっかり疲れが取れる場所で寝なさい。ここ空いてるわよ。」


そう言って土倉光はベッドに手招きする。真澄はフラフラと砂糖水に誘われるカブト虫のようにベッドに向かってしまう。


「よしよし、お姉さんが癒してあげるからゆっくり眠りなさい。」


もう何がなんだか分からなくなっていた真澄は、柔らかい女の胸元に顔を埋めて甘い眠りにいざなわれていった。





 次の日の朝、外にはもう逃げ惑う人々の悲鳴も聞こえなくなっていた。食われて死んだ者と篭城した者に完全に二分されてしまったようだ。窓から外を窺うと、目に前のマンションにもベランダや窓から下を窺う人間の姿が見て取れる。土倉光は、思っていた通りの状況に溜息を吐いていた。ついでに後ろの騒ぎにも溜息を吐く。


「なんであんたが先輩と一緒にベッドで寝ていたかを聞いてんのよっ!正直に答えなさいっ!」


吼えているのは新人の女のほうである。


「あ・・・ありのまま昨夜起こった事を話すぜ!『俺は奴の前でエロ同人を手に入れたと思ったらいつの間にかベッドで胸に顔を埋めていた。』な・・・、何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった・・・。頭がどうにかなりそうだった・・・。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わっぐはあっ!」


「ふざけてポル○レフを出してる場合かっ!ちゃんと説明しなさいっ!!!」


イラッとした女のほうが男のほうに蹴りを入れている。


「ごめんなちゃい・・・。ついカッとなってやった。だが反省はしていな痛いっ!」


「ふざけるなあああああああああああああああっ!!!!」


怒り狂った新人の女のほうは男のほうを枕で袋叩きにしている。男のほうが土倉光に助け舟を要求している。


「先輩っ!黙って見てないで何か言ってっ!僕殺されちゃうからっ!!!」


「もう煩いわね・・・。溜まってそうだったから2、3発おっぱいで抜いてやっただけよ。これで満足?」


「何でそんなこじれる嘘をっ!あ、山寺さん・・・。待って、落ち着いて・・・。模造刀はヤバイから、それ刺さると死んじゃうからっ!お願いやめてええええええええっ!!!!」


「所詮男は乳かあああああっ!!殺すっ!殺しきるううううっ!!!」


どこから持ち出したのか分からない日本刀をスラリと抜き、山寺茜はジリジリと真澄を壁に追い詰めていた。


「ちょっとっ!そんな刀どこにあったのよ!?」


土倉光は日本刀に驚き、声を上げた。山寺茜はハッと我に返る。


「え?あ、これはそこのクローゼットにありました。あと西洋の刀と脇差みたいな短いのもありますよ?」


「桜井、あんた何でそんなもんを持ってるのよ?」


「え?ああそれはですね。僕は時代劇を見るのが趣味なので実物も持ってるんですよ。模造刀ですけどね。」


「斬れないの?」


「斬れないっすよ。でも切っ先は尖ってるので人に刺さりますから危ないっす。ちなみに茜が持ってるのが虎徹です。脇差とセットで12万円もした俺のお宝っすよ。西洋のはロト○剣ですね。ゲームに出てくる最強の剣です。これは3万くらいだったかな。」


「作りはどうなってるの?頑丈に出来てる?」


「もちろん頑丈ですよ。刀身が斬れないだけであとはガチで日本刀ですから。ロト○剣のほうは少し弱いかも。」


「そう、日本刀は使えるってことね?」


「ノンノンノンッ!お姉さん、長曽禰興里(ながそねおきさと)の名刀ですよ。しっかり虎徹と言ってくださいな。」


「そんなことはどうでもいいのよっ!もしかしたらゾンビと戦う可能性もあるんだから、しっかり情報は持っておきたいだけよ。でも、武器があっただけ幸いだわ。でかしたわよっ!」


「あざっすっ!でも今助けてもらわないと、俺は永久に戦力にならなくなりますが・・・。」


まだ真澄は山寺茜に追い詰められたままなのだ。


「山寺さん、その辺で許してあげなさい。彼も男なんだから魔が差すこともあるわよ。笑って許すのも女の度量よ。」


「あ、はい。今殺しちゃったらマズイですもんね。今回は許してあげるわ。」


「あ、ありがとうございます?」


(なんでだ?この会話おかしくねぇか?俺が茜の恋人で浮気相手が先輩か?どうしてこうなった???)





 昨日買い込んだ食料で朝食を済ませると、TVで情報収集をすることにする。ネットは見ない。嘘の報告や2chなんか何の役にも立たないと真澄が主張したからだ。


「今を面白がって嘘の情報をホイホイ流して遊んでる屑が必ずいます。信用できる情報はやっぱりTVやラジオですよ。」


得意げに言いながらTVのスイッチを入れる。


ザーーーーーーーーーー


「・・・・・・・・・。」


ザーーー ザーーーーー ザーーーーーー


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ザーザッザッザッザッザッザッザーーーーーーーーーーーー


「・・・・・・・・・・・・・・・壊れたかな?」


「元が壊れたんでしょうよ。やっぱり壊滅しちゃったかな?」


土倉光がアッサリと認めたくない現実を口にする。1つだけ映るチャンネルを発見したが、テロップが流れるだけの簡易放送だった。


「ふむふむ、現在は自衛隊、米軍、各国軍事が全て復旧作業中っと。すぐに救助が始まるので慌てずに家に鍵をかけて、決して屋外に出ないようにお願いしますか。教科書の例文みたいな文章ね。要は略奪や暴走はお控えください。とりあえず現状は最悪ですって意味にもなるわね。これじゃ何日もこの部屋に缶詰だわ・・・。」


「仕方ない、何も無いよりはマシです。ネットでも見てみましょう。」


真澄はPCを起動させ、ゾンビ情報関連で検索をかける。


「何々?世界オワタ\(^o^)/ アメリコ終了のお知らせ(;ω;) 俺無双が始まる(`・ω・´)シャキーン 馬鹿ばっかり。桜井の言った通りね。これじゃ話にならないわ。」


「ですね・・・。あ、でもゾンビの特性スレもあります。念のために見ておきましょう。内容は見れば分かるし、いつまで電気やネットが正常に動いてるかわかりませんからね。」





 3時間ほどPCの前に座っていた真澄だったが、得た情報の箇条書きを2人に見せる。


【ゾンビ抹殺方法・ゾンビからの逃走方法】


・ゾンビの弱点は主に頭部、他は意味無し。


・ゾンビは目で人の存在を確認しているのでは無い。匂い、音が主な判別方法である。嗅覚は犬並み(確認済み)


・外に出るにはファブ○ーズやリセッ○ュなどでよく消臭を行ったあと、ゾンビから出来るだけ離れて避けながら進むべし。


・香水や発汗防止スプレーも有効。しかし油断は禁物である。


・ゾンビは非常に腕力が強いため、捕まると詰みである。だが動きが鈍いため、小走りで逃走可能。いかに囲まれずに進むかが肝。


・戦う場合はバットや鉄パイプで頭を攻撃する。銃があれば尚良し。しかし発砲音でゾンビさん集合のお知らせになるので、サイレンサーがあれば是非使うべきである。


・噛まれるとアウト。噛まれただけでゾンビ化の報告有り。死んだ者は皆ゾンビ化。避難所などの人口密集地帯は避けるほうが良い。


【結論】無理。篭城が無難





 箇条書きにタイプされた報告書を読んで、2人は溜息を吐いた。


「あんた3時間調べて分かったのがこれだけなの?」


「真澄、いくらなんでも情報が少なすぎるわよ。それに信用できるのこれ?」


しばらく報告書を睨んでいた土倉光が、何かを閃いたように顔を上げる。


「ちょっと実験するわよ。桜井、パンツ脱いで寄越しなさい。」


「はい?」


土倉光が真澄のズボンを脱がしにかかる。必死で抵抗したが山寺茜も協力し、ズボンは膝下までずり下ろされた。


「ま、待ってっ!脱ぐ。脱ぎますからっ!無理やりは嫌あああああああああっ!!!」


真澄の悲しい悲鳴がこだました。


 脱衣所で脱いだ真澄のパンツを受け取ると、土倉光は糸を取り出して針でパンツに結び付けていく。引っ張っても切れないことを確認すると、おもむろに窓を開けてパンツを外に放る。下を歩いていたゾンビ数体がヨタヨタとパンツに歩み寄り、狂ったようにパンツを奪いあった。


「ふむ、匂いに敏感って本当みたいね。それにヨタヨタと歩いているってことは、動きが鈍いのも本当だわ。次は消臭して投げてみるわよ。慎重に引っ張らないと折角の黄ばみパンツが台無しだわ。」


すでにビリビリに破かれたパンツの残骸をゆっくりと引き寄せる。ゾンビの唾液がべっとりと付いたソレに部屋にあったリセッ○ュをスプレーして、再度外に放り投げた。ゾンビは布キレに全く反応しなくなっていた。消臭で効果抜群だという事実を手に入れる。


「ふむ、あとは目が見えてないってのも確認したいわね。桜井、ちょっと外をマラソンしてこない?」


「・・・・・・・すると思いますか?」


「だよね。山寺さ・・」


「しませんっ!!!」


「困ったわね・・・。私は絶対嫌だし、どうしよっかな?」


土倉光は顎に拳を当てて小首を傾げて考えている。無駄に可愛いポーズだ。そのとき、対面のマンションから男が叫んだ。


「おーいっ!そっちは何人生きてる?食料なんかあれば分けてくれないかっ!?」


土倉光は何かを思いついたような顔をした。そして食料部屋からカップ麺を2個持ってくる。


「済みません、あともうコレだけしかないんです。1個お譲りしますんで、取りに来れますか?」


(うはっ!超嘘吐き。悪魔かこの女狐がっ!)


「すまんが取りに行けない。どうにかしてくれないかっ!?」


「では投げますよっ!あ、手が滑っちゃったっ!」


カップ麺は大きく外れ、壁にぶつかって下に落ちる。先ほどからゾンビ達は2人のやり取りに大興奮して動きが活発になっていた。


「何してんだっ!もう取れないじゃないかっ!!!もう1個の方を投げろっ!!!」


対面の男が大声で怒鳴る。食料を分けてもらって太い態度だ。真澄はカチンと来た。


「分けてもらった分際で何言ってんだお前はっ!欲しけりゃ自分で取りに行ってこいっ!」


そこに悪魔が助言をする。


「こいつらは目が見えてないそうです。でも匂いで分かるらしいので、ファブ○ーズかリセッ○ュで完全に消臭すればみつからないかもしれませんよっ!?パンツの実験で消臭が有効なのは分かってます。あとはご自分で判断してから実行するかどうか決めてくださいっ!」


(あ、そういうことか・・・。この女マジで鬼だ・・・。わざと投げそこなったな・・・。)


「本当なんだろうなっ!?分かってるならそっちで実行してくれ。こっちは消臭アイテムが無いんだよっ!」


「お風呂に入ればいいかもしれませんっ!私達はまだ1個あるので、そんなリスクは負えないですっ!そちらの意思に任せますのでご自由にっ!この1個は何があってもお譲りしませんからっ!」


土倉光はそう言うと窓を閉めてしまう。何事か男が叫んでいたが、やがて声がしなくなった。


「さて、音に敏感なのも分かったわ。あとはあのオッちゃんに働いてもらうだけよ。」


土倉光はそういうと、蛇口をひねって水をゴクゴク飲んでいる。断水するまでは蛇口の水を飲むように2人にも命令していた。


「土倉先輩って・・・、鬼ですね・・・。」


分かりきったことを山寺茜は再確認するように呟いた。





 男が動き出したのは翌日だった。風呂上りなのだろう、まだ濡れた頭のまま、恐る恐る階段を降りていく。夕飯のカップ麺を啜りながら真澄と土倉光はカーテンの隙間から様子を窺っていた。男はついに、マンションの入り口まで到着した。あとは扉を開ければカップ麺まで10mである。しかし、マンション前にはゾンビが5体ほど徘徊している。男は意を決して入り口から外へ踏み出した。そしてカップ麺ににじり寄っていく。マンションを見ると、数人が顔を出し、男の行動を見守っている。もしかすると家族なのかもしれない。


「うわ、先輩っ!あの人の家族も見てるんじゃないですか?俺達すっげぇ悪いことしたんじゃ?」


「しっ!黙って見なさい。今は他人なんかどうでもいいのよ。私が生き残るのが大事なんだから。」


「私達じゃないんですね・・・。」


ゾンビは特に男に気付いた気配は無い。男はなんとかカップ麺を拾うと、一目散に入り口へ走り出した。それがいけなかったらしい。途端にゾンビが男に向き直る。あっと言う間にゾンビに囲まれ、男は血塗れになっていった。断末魔の声を聞きながら、土倉光は満足いく結果を得られたように頷いている。


「やっぱり目は見えてないわね。最後は焦って走らずに行けば彼は助かってたわよ。完全に判断ミスだわ。」


冷静に結論を出す土倉光に呆れつつ、真澄は泣き崩れた男の奥さんらしき女性に心の中で陳謝していた。





 ゾンビ発生から早くも3日経った。今日は8月30日だ。もうTVは点かなくなっていた。遂に電気が止まったのだ。発電所がやられたらしい。水ももうすぐ止まるだろう。ガス関係は全て電気始動のため、当然全滅だ。そのことを考慮してカップ麺から消化していたが、まだカップ麺は山のように残っている。携帯コンロを引っ張り出したが、ボンベは2本しかなかったので、数日もてばいいほうだ。まだ対面のマンションには人が生き残っていた。真澄のアパートにも数人は生存者がいる。時折、トイレを流す音やシャワー音が聞こえてくるのだ。対面は3Fに3人、これは例の男の家族、妻と娘2人である。4Fに2人、たぶんカップルだ。5、6Fは0、7Fに1人、いかにもニートですといった風情の30代くらいの男である。どこも食料は無さそうである。この家にはまだ2ヶ月は暮らせそうな食料が残っていた。真澄は、食料に関しては土倉光に感謝していたが、他に関しては、彼女を軽蔑の眼差しで見るしかなかった。先日も、対面のマンションから食料の有無を聞かれた時に、血色の良い顔で抜け抜けと「ありません」とのたまった。真澄は先日の旦那見殺しの件もあったので、残された家族に食料を少し分けることを進言したが、あっさり却下されている。


「あの家族に分ければ、上のカップルとニートも必ず来るわよ。今の食料だと、3人でせいぜい2ヶ月だわ。自衛隊が壊滅してるのに、他人まで面倒見きれないわよ。どうしても渡したければ、あなたの分を持っていきなさい。」


そう冷たくあしらわれた。本当に悪魔のような女であった。一緒に仕事をしているときは、こんな女とは思っていなかった。日に日に怒りは鬱積していき、3日目ついに真澄はキレた。


「先輩っ!俺の分の食料をまとめさせていただきます。俺は向こうのマンションに行ってあの家族の世話をしますので、この部屋には戻りませんっ!あとは好きに使ってくれて結構です。服も持っていきますので、残った服で何とかしてください。玄関の縛りは解かせていただきますので、俺が出て行った後にご自分で再度結んでください。」


そう宣言して、アタッシュケースに服を詰め込みだした真澄を、山寺茜は必死に引き止めた。しかし、真澄の決意は固く、梃子でも動きそうにない。風呂敷に自分の分の食料を全て詰め、体中にリセッ○ュを振って玄関を出て行った。そして用心しながらマンションに近付く。


消臭しているので、ゾンビは気付かずにウロウロしているだけだった。マンションに入って数分後、例の家族の居る家の中に真澄の姿があった。


「馬鹿な男ね・・・。わざわざ自分から地獄に飛び込むなんて・・・。」


そう呟いた土倉光の目に涙が滲んでいた。そして、悲しそうに続けた。


「彼、きっと後悔するわよ・・・。」





 しばらく家族に食料を食べさせていた真澄は、水のことを思い出し、再び自宅に戻った。ペットボトルの水と模造刀の二振りを持つと、ちらりと2人を一瞥しただけで玄関を出て行った。しかし、真澄を待っていたのは惨劇であった。


「戻りました。お腹は膨れたでしょうか?」


真澄が戻ったことを告げるが、家の中から返事は無い。まだ若い妻と幼い娘が2人いるはずなのだが、家はシーンと静まり返っていた。


「あれ?戻りましたよ・・・。」


おかしいと思いつつ、ペットボトルの袋を玄関に置く。模造刀は脇差のほうを腰に差し、大刀を左手に持っていつでも抜けるようにした。


もしかしたらゾンビが今の隙に入り込んだのかもしれない。


「奥さん?おチビちゃん達?どこへ行ったんですか?」


そのとき、不意に影から何者かが飛び出してきた。


「うげっ!ゾンビが入り込んだかっ!?」


真澄は大刀を抜く暇がなく、取り落としてしまう。影ともつれ合いながら、何とか脇差を抜き、腹に突き立てた。ゾンビは頭を狙わないと意味が無いとレポートしていたことなど、どこかに飛んでしまっている。


「うぎゃあああああああああああっ!!!」


なんとゾンビは腹に脇差を突き刺され、のた打ち回った。チャンスとばかりに大刀を拾い上げ、頭目掛けて突き下ろす。ガスッという嫌な音と感触が全身を駆け巡り、ゾクッと悪寒が走った。動かなくなったゾンビを確認して、3人を探す。散乱した食料の中に、3人は血を流して倒れていた。3人とも刺殺であった。凶器に使われたと思われる包丁が横に突き立っている。


「なんでだ?どうして?ゾンビじゃなかったのか!?」


慌てて先ほど息の根を止めたゾンビの顔を確認する。それは7Fに居たニート男だった。真澄が家を出た隙にこの家に入り込み、食料を全て奪おうとしたのだろう。抵抗した奥さんをまず殺し、泣き叫んだ2人の娘も刺し殺されてしまったのだ。その時、背後に人影が現れた。


上の階に住んでいたカップルが降りてきていたのだ。


「きゃあああああああああああああっ!!!人殺しっ!!!」


女が叫ぶ。男のほうが女を庇うようにして逃げ出した。


「違う・・・、違うんだっ!!!俺じゃないんだよっ!!!」


真澄は虚しくそう叫んだが、2人は聞きもせずに逃げていった。


今回はギャグ多目でお送りしました。

日本刀は折れない、曲がらない、鉈の重さと剃刀の切れ味。世界最強の刃物です。模造刀だってきっと強いはずさっ!実際に先で突っつかれるとチクチクするくらい痛いっす。体重をかければ頭蓋骨も粉砕だっ!


と思いたい(`・ω・´)

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