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第捨壱話 檻

待 た せ た な !


遅れてすみません。本当にすみません。作者が悪いわけじゃないんです。会社が悪いんです。


首括ってきますね(´・ω・`)

第捨壱話 檻


 真澄は資料館の狭い展示の廊下を慎重に進んで行った。土倉光が1体だけゾンビを倒していたが、まだ居ない保証は無い。壁には名も知らない画家の描いた絵画が等間隔を空けて展示されていた。真澄に絵心など無かったが、これが美術品と呼ばれる理由は何となく分かる気がした。素人が描いた絵とは違う、何か訴えかけてくるような迫力がどの絵画にも満ち溢れている。まるで生きているような肖像画や落書きのようなタッチでありながら異様な存在感を放つ物まで、ジャンルを問わずに展示されていて、ゾンビに対する警戒心が徐々に薄れて絵の虜になってしまっている。


(平和な時はこんな物に興味は無かったけど、もう作り出せる人間が少なくなってしまったと考えると貴重だな・・・。文化の崩壊が人類の絶滅なのかもしれない。自衛隊や各国の軍隊がほぼ死んだ今となっては、人類の繁栄は無理なんだろうか?)


美術品の美しさは、現在の絶望を大きく際立たせる存在となって真澄の心に打ち寄せ、否が負うにも心を沈ませる。真澄のそんな心境などいざ知らず、学生達は西洋の剣や斧の展示物を発見し浮かれた声を上げていた。見ると歴史資料の展示品に武器になりそうな物が多数展示されている。これで学生達も装備を整えられたので一安心と言った所だろうか。デブが斧、チビが片手剣を手に取り、女子学生達も小さな装飾の施された短剣を腰に付けていた。果たしてゾンビ相手に短剣での戦闘など出来るが疑問だったが、無いよりはマシである。


「後は武器になりそうな物は無いわね。早くこんな密閉空間から脱出しましょう。こんな所でゾンビの集団に遭遇でもしたら死人が出るわ。桜井、ぼんやりしてないで帰るわよ。ん?ちょっと桜井?」


まだ感傷に浸っていた真澄に土倉光が怪訝な顔をしながら話しかけた。何故か急にしんみりしてしまった後輩を見て首を傾げている。


「何をへこんでるのよ?あんたも欲しい物があったのなら言えばいいじゃない。いくらゾンビの気配が無いからって油断してると足元を掬われるわよ。ほら、気合を入れ直しなさいっ!」


土倉光が真澄の背中を軽く叩きながら急かす。彼女なりに気を使っているらしい。真澄が弱気になると土倉光も危険に晒される可能性が飛躍的に上がるのだ。たまには空気を読んだのだろう。


「ん?ああ、すみません。ちょっと考え事をしてたら気分が暗くなっちゃいました。もう大丈夫ッすよ。」


「そう?ならいいけどさ。あんたがそんな調子だと私も危なくなるんだから、考え事は安全な場所でしてよね。それに今の現状を考えるのは、ハッキリ言って危険だわ。この先、希望が無いのはもう分かってるんだから、生き残ることだけ考えて。」


「そんなハッキリと断言しないでくださいよ。まだ人間が生き残ってどこか安全な場所があるかもしれないんですから・・・。」


「そんな都合のいい妄想は止めておきなさい。逆に人の多い場所に行くほうがよっぽど危険よ。食料が無くなると大惨事になるのは目に見えてるんだから、コロニーをみつけても私は避けるわよ。この先はあんたと私だけ。パートナーがしっかりしてくれないと困るわ。」


「ずっと2人っきりかぁ。ちょっと寂しいっすね。」


「信用できる人間なら仲間に加えてもいいけど、そんな人居るかしら?少なくとも学生達は足を引っ張るお荷物だと思うし、この先生きている人間に遭遇する機会も減るわよ。私達が目指すのは人が出来るだけ居ない生活できる場所なんだからね。そこまで辿り着くまでは気を抜く暇なんて無いと覚悟しておいたほうがいいわ。」


どこまでも現実的な土倉光の物言いに苦笑いをしつつ、真澄は来た道を戻り始めた。


「おいっ!お前ら早く来ないと置いてっちまうぜっ!?」


斧を手に入れたデブが急に調子付いて、遅れた2人に大声で注意した。





 資料館を出ると、真澄と土倉光は一度遊覧船に戻ることにした。学生達はまだ探索していないホテルを見てくると言い、2人と別れる。遊覧船に戻ると、スワンボートを遊覧船の桟橋とは逆のほうに縄で結びつける。こうしておけば、もしゾンビの大群が押し寄せても、遊覧船が砦となり容易に侵入は許さないだろう。その間にスワンボートに安全に乗り逃げることが出来る。海に出てしまえばゾンビなど全く恐れるに足りない。逃走経路を確保すると、2人は新調した服の吟味をして新しいバッグに畳んで収納していく。水に浮くように作られたアタッシュケースを4つ入手していたのだ。これでスワンボートに乗らない分も持ち運びが出来るようになった。服はいくらあっても困ることは無い。出来るだけ全ての季節を乗り切れるように服をチョイスしていく。その作業で30分ほど黙々と作業していると、慌てた様子の委員長が2人の所に戻ってきた。


「あら、もうホテル探検はいいのかしら?他の人が居ないけど何かあったの?」


頬を紅潮させた委員長を見て、何かしらあったことは想像が付く。土倉光が眉を顰めながら質問した。


「せ、生存者が居たんですっ!ホテルの最上階で火災装置を作動させてシャッターを降ろして立て篭もってたんですよっ!」


「生存者?何でゾンビも居ないのに立て篭もってたの?何人くらい居たか詳しく話して。」


生存者と聞いて土倉光はさらに眉を顰める。この状況で立て篭もる理由が無い。この施設で何かあったことは分かったが、それは決して良い事ではなかったことが推測できたのだ。





 学生達5人は、大人2人と別れた後、調子に乗ってホテルの探索に出ていた。中は豪華な装飾がなされ綺麗に保たれており、ゾンビが入りこんだ形跡は無い。従業員の姿は無く、物音一つしなかった。ホテル内はかなり広く、2班に別れ探索することにする。


「優ちゃんと弘美は右のほうを調べてみて。柳君は護衛で一緒について行ってよ。私は大西君と左のほうを調べるわ。」


委員長がさっさと班分けをして探索を開始する。他の者から文句も出ず、すんなりと探索は開始された。委員長とチビは右の通路を3人が歩いて行くのを見送ると、ロビーに展示してあるホテルの地図眺める。


(時間はたっぷりあるし、焦ることは無いわ。あの2人も今のうちに私達と別れる準備を始めてるかもしれないし、時間はかけた方がいいわね。皆には悪いけど、私達は独力で生きていくしかない。武器も手に入れたし、5人居ればどうにか安全な場所に辿り着けるかもしれない。問題は柳君が暴走する可能性と女3人が体力的に参る可能性ね・・・。やっぱり移動は船がいいのかな?でもスワンボートは土倉さんが死守するだろうし、乗ってきたボートだと漕ぐ道具が無いわね。なんとかオールになる物をみつけないと危険かもしれないなぁ。あ、でも遊覧船は安全そうだから、モモンガ浜を拠点に近くのスーパーなんかで物資を調達できれば、5人で耐えられるかもしれない。物資調達で外に出ないといけないけど、あの2人もうまく逃げられたから私達が出来ない道理は無いわねっ!でも柳はそこで死んでくれないかな?そんな都合よくいかないかもしれないけど、1回噛まれてくれたら見捨てる理由にはなるわ。ああ、でもそんなこと考えたら人としてどうなのかしら・・・。私ってけっこう残酷ね。いつからこんな人間になっちゃったんだろ・・・。生きていくためには必要な考えなのは理解できるけど、やっぱり非道よねぇ。ああ、悩んじゃうわ。もうどこかで死んでくれたらラッキーと考えてうまく誘導だけしましょ。ああ、ダメダメ、最低だ私。どうしてこんな考えばかり浮かぶのかしら。でも私がしっかりしないと皆が死んでしまうかもしれない。一体どうしたらいいのかしらっ!?リーダーは悩み多き生き物なのね・・・。)


「渡会さん?深刻な顔してどうしたの?」


ブツブツ言いながらフリーズした委員長を不思議そうな顔で眺めながら、チビが委員長の顔の前で手をヒラヒラさせた。委員長はハッとして顔を上げると、溜息を吐く。その様子を見てチビはさらに首を傾げる。


「疲れたんなら少し休む?ここはゾンビ達も居ないみたいだし、探索は3人に任せて僕等はここで待っててもいいんだよ。柳君なんか文句の1つも言いそうだけど、女の子なんだから無理しないでね?僕も護衛って口実でサボれるし。」


「いえ、何でもないわよ。ちょっと考え事をしただけだから。一息つけたし、早く探索しちゃいましょうっ!」


「そう?何でもないならいいんだけどさぁ・・・。」


なおも委員長の様子を窺いながら、チビは手にした西洋の剣を肩に担ぐ。この剣は日本刀のように切れ味は期待できず、剣の重さで敵の鎧や骨を砕くように作られた物らしい。随分と古い物のようだが、他にまともな武器など無かったので仕方なく持ってきたのだ。小柄な大西少年には少々荷が重い武器である。使いこなせるとも思えないが、自衛手段としてあったほうがいいのだ。委員長も装飾の施された短剣を腰に下げているが、カッターナイフと攻撃力が然程変わらない程度の物である。刃が硬いので折れにくいのが利点だが、リーチで考えると格闘するようなものなので委員長には戦って欲しくなかった。短い腕に短い刃物、格闘技は素人である。殺してくれと言っているようなものだ。チビはゾンビなどと戦いたくはないが、せめて女の子を逃がす程度の時間稼ぎはするつもりだった。そんなチビの心配など気にする事も無く、委員長はさっさと左の通路の奥に進んでいた。





 このホテルは4階建てで、2~3Fは全てが客室で調べても大した利点は無さそうだった。1Fにあった厨房や売店も食料はほとんど残っておらず、収穫は何も無かった。3Fで先に探索に出た3人と合流し、残すは4Fだけとなっていた。


「なぁ、ここをこれ以上調べても何も無いんじゃねぇか?」


「そうね、食料になりそうな物も無かったし。未来、もういいんじゃない?」


デブとギャルが揃って探索の中止を申し出る。今日は一日中ずっと緊張状態が続いていたため、早く戻って休みたいのだろう。この広いモモンガ浜を一日で探索しきることに無理があったのだ。


「そうね、今日のところは引き上げましょうか。」


委員長はアッサリと探索の中止に同意した。時間にして1時間程度しかかけていないが、今日は朝から緊張状態が続いたので休息も必要と考えたのだ。手に入れた物をザックにしまいこむと、さっさと階段を降りようとした。その時、不意に廊下に備え付けられていたスピーカーから音声が流れた。


「誰か居るのか?居たら4Fまで上がってきてくれ。」


放送はそれだけだった。声の感じだと初老の男性という印象である。5人は驚きで顔を見合わせる。


「おいおいおいっ!生き残りが居たよっ!」


デブが大声で喚く。まだこのホテルにゾンビが居ない保証など無いのだ。委員長は顔を顰めながら注意する。しかしデブはお構い無しに大声で続けた。


「これぜってー食料とか持ってるだろっ!早く保護してもらおうぜっ!あんなおっかない大人2人なんかに頼らなくて済むぜっ!」


「柳君・・・、まず落ち着いて。相手が紳士的な大人とは限らないのよ。むしろ狂ってる可能性のほうが高いわ。慎重に行動しましょう。まず相手がどこに居るか確認しないと・・・。」


「4Fに来いって言ってただろうが。さっさと行こうぜ。」


デブはもう階段を上がって行った。女子2名もそれに続く。


「ちょっとっ!あなた達までそんな軽はずみなことしないでっ!」


「未来ちゃん、まずは相手を確認しないと。食料とか持ってて保護してくれるかもしれないでしょう?私も柳に賛成だわ。悪人だったらまた桜井さん達にくっつけばいいんだし、損は無いわっ!」


貧乳B|(小林弘美)がそう言って階段を上がる。ギャルも首を竦めるポーズだけして後に続いた。チビだけが残っていたが、やがて階段に向き直った。


「大西君まで・・・。もういいわ。私は桜井さん達に報告に行ってくるけど、決して軽はずみな行動はしないように皆を見ててね。」


「了解だよ、渡会さん。外はまだ安全か分からないから、油断しないようにね?僕は皆が馬鹿な真似をしないように様子を窺っておくよ。でも抑止力にはならないから期待しないでね。」





 委員長が走り去った後、チビは階段を駆け上がった。やはり生き残りの人間は気になる。すでに上に着いていた3人は、上がった先のフロアーで立ち往生していた。廊下の両側にシャッターが下りており、どちらにも進めなくなっていたのだ。


「あれ?どうなってるの?」


チビが腕組みをしていたギャルに問う。ギャルはチラリとチビを見ると小さく首を横に振っただけだった。


「おいっ!4Fまで来たぞっ!さっさとシャッターを開けろっ!」


デブが斧を振りかざして怒鳴った。確実に逆効果だと思いつつ、他の3人は顔を見合わせるしかない。放送で上に上がって来いと言われたが、明確にどうしてくれるとか無かったのだ。相手の意図を測りかねる。デブはなおもシャッターを蹴るなどしていたが、一向に相手から反応が無い。


「やめなさい柳っ!相手を威嚇してどうすんのよ。あんた馬鹿なんじゃない?」


ギャルがデブに注意する。先ほど斧を手に入れてから、明らかに態度が肥大化している醜悪な少年に辟易していたのだ。貧乳Bも同じ意見らしく、厳しい目でデブを睨んでいた。


「何だよ?呼ばれて来たんだ。遠慮なんかいらないだろう?相手のほうが失礼じゃねぇのかっ!?」


「あんたの態度見たら、あたしだって開ける気を失くすわよ。斧を振り回す馬鹿をわざわざ招き入れると思う?そこにカメラあるでしょ。それできっと観察してるんだわ。」


チラリと天井近くに備え付けられている防犯カメラを見ながらギャルが冷静に答えた。


「その通りだ。」


不意にスピーカーから声が流れた。先ほどの初老の声である。声の主に向かってまだ凄もうとしたデブを女子2人が睨みつけて黙らせた後に、チビが代表して話すことになった。


「あの、僕等は近くの高校に立て篭もっていた生徒です。あなたは誰ですか?」


「わしはこのホテルのオーナーだよ。騒ぎが起こったときに4Fのオーナー室の居たから、防災シャッターを操作して立て篭もったんだ。ここは地下に通じるシェルターへの直通の梯子があるしな。食料や水、電気なんかも1年ほどは耐えられるように出来ている。残念ながら従業員達は皆逃げてしまったんだがね。」


「どうして従業員さんは逃げちゃったんですか?モモンガ浜はほとんどゾンビが居ない安全な場所だったはずですけど?」


先ほどまで探索して遭遇したゾンビは資料館の1匹だけだった。完全にではないが、奇跡的にゾンビの襲撃を免れた場所である。この場所に居て、なぜわざわざ危険な外に出て行くのかが分からない。


「家族が心配だとか食料が無いとかが主な原因かな。このシャッターは下りた途端に上がらなくなってな。地下シェルターの入り口も開かなくなっちまったんだ。」


「なんだとっ!じゃあ俺らはどうすればいいんだっ!?」


「窓から食い物と水は手渡し出来るかもしれん。あ、屋上から下にロープを下ろせばこっちに来れるかもな?」


「屋上はどっちだっ!?さっさと案内しやがれジジイっ!!!」


「柳っ!」


相変わらずの高慢な態度に貧乳Bが叫ぶようにデブの名を呼んで制止する。眉を顰めながら見ていたギャルが変わって会話を始めた。


「で、オーナーさん。屋上へはどうやって行けばいいんですか?見たところ両側がシャッターでここがデッドエンドですけど?」


「待ちなさい。わしが居るのが右のシャッターだ。左は開く。ゾンビが屋上に行ったら困るから閉めてあるだけだ。開くからそこから来なさい。」


「分かりました。」


「さっさと開けねぇかジジイッ!」


「柳・・・。いい加減にしないと入れてもらえなくなるわよ。」


「ねぇ?桜井さん達と度会さんはどうするの?」


チビが訊ねると、デブが火が点いたように喚いた。


「あんな連中を入れるわけねえだろうがっ!あのヘナチョコ野郎どもを入れたらまた仕切るぜ。そんなの真っ平だ。渡会1人なら連れてってくれるんじゃねえのか?居ないほうが悪いんだよボケがっ!」


「未来を入れないなんてあり得ないわよ。それにオーナーさんの意向も聞かないと話にならないわ。」


ギャルが冷たい目でデブを睨みながら詰め寄る。


「もうっ!喧嘩してる場合じゃないでしょ。」


貧乳Bが止めに入る。その時、またスピーカーから声が流れた。


「どうもそこの肥満体は助ける気が無くなるな。」


「何だとっ!ジジイがっ!殺されてえのかっ!?」


「・・・・・開けるの止めた方が良さそうじゃな。」


「待ってっ!私達を見捨てないでっ!」


どうしてここまで話を拗れさせるのだろうか。デブ一人の言動で皆がせっかくの希望を失いそうになる。


「・・・わしに危害を加えないと誓えるか?」


『誓います。』


デブ以外の3人の声が揃う。デブだけが不満な顔をしていたが、やがて小声で小さく同じ言葉を呟いた。


「なら開けてやろう。楽しんでくれたまえ。」


「?」


ギギギギッと音が鳴りながら左のシャッターがゆっくりと上がっていった。明るい声を上げた3人を尻目に、デブがサッと身軽な動きでシャッターを潜る。


「はっ!馬鹿なジジイだ。今すぐぶっ殺してやアッーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


『!!!?』


シャッターの向こうでデブの悲鳴が聞こえた。他の3人がシャッターの傍に駆け寄り腰あたりまで上がったシャッターを下から覗き込む。


そこにはたくさんの足が見えており、デブの手らしき物がヒクヒクと動きながら足の間から見え隠れしていた。


「ちょっとっ!嘘でしょっ!!!」


叫んで素早くシャッターから離れたのはギャルとチビだった。貧乳Bはあまりの出来事に固まってしまっている。


「弘美っ!早く離れなさいっ!逃げるのよっ!!!」


「え?あ・・・。きゃあっ!」


貧乳Bは顔を上げ逃げようと踵を返そうとしたが、シャッターの下から伸びてきた手に足を絡め取られる。


「アッー!離してっ!やだっ!ちょっとっ!痛っ!アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


貧乳Bは開ききっていないシャッターの中にズルズルと引きずり込まれていった。


「もうダメよっ!大西逃げないとっ!」


「フハハハハハハハッ!この盗人どもがっ!そいつらはそこに立て篭もった従業員を餌におびき寄せて集めた奴らだ。300人はいるぞっ!逃げられるかな?ハハハハハハハハハッ!!!」


狂ったような笑い声がスピーカーの音割れの嫌なノイズと共にホテル中に響き渡った。





 真澄と土倉光は委員長と一緒にホテルへ急いでいた。何やらノイズの混じった声が響いていた。距離があるせいかよく聞き取れない。嫌な予感は加速度的に高まっていく。


「先輩、おかしな雰囲気ですね・・・。」


「ええ、急ぎましょう。」


「早く行きましょうっ!あの声の主はちょっと信用できない感じでしたから。」


3人はホテルの玄関ロビーの前まで辿り着いたが、それ以上進むことが出来なくなった。ホテルの入り口はピッタリと閉じられ、オートロックでもかかったかのように微動だにしなくなっていたのだ。


「あれっ!?おかしい、さっきまで自動で開いてたのに・・・。」


「フハハハハハハハッ!この盗人どもがっ!そいつらはそこに立て篭もった従業員を餌におびき寄せて集めた奴らだ。300人はいるぞっ!逃げられるかな?ハハハハハハハハハッ!!!」


『!!!!』


ホテル内部のスピーカーから聞こえた声に3人は青ざめた。これは罠だ。入り口の施錠は意図的なものに間違いないだろう。このホテルの機能を制御できる位置にいるオーナーを名乗る初老の声の主の仕業に違いなかった。


「桜井っ!このガラスをぶち破らないと中の子達が殺されるわっ!!!」


「分かってますっ!でもどうやれば・・・。」


「早くしてっ!皆殺されちゃうっ!!!」


ガラスは分厚く、素手やナイフではビクともしないだろう。真澄は近くに放置してあった陶器で出来た犬の置物を引っ張ってくると、玄関のガラスに向かって投げつける。置物はかなりの重量があったが、ガラスに当たると鈍い音で跳ね返され、地面に落ちて粉々に砕け散った。ガラスには少しだけ傷が付いただけである。


「マジですかっ!!!これ石でもないと無理っすよっ!」


「早く探してきてっ!」


「了解っ!」


真澄と土倉光はさらに固い物を探しに走り去る。委員長は入り口でオロオロしながら待つしかなかった。そこに凄まじい形相のギャルとチビが階段を駆け下りてくるのが目に入る。


「優ちゃんっ!大西君っ!他の2人はっ!?」


「未来っ!弘美と柳はもう無理よっ!あんたそこで何してんのっ!?」


「渡会さん無事だったんだねっ!?早く逃げないと殺されるよっ!あれ?何で開かないんだこれっ!!??」


「ちょっと・・・、嘘でしょっ!!!もうアレが降りてきちゃうじゃないっ!冗談じゃ無いわよ。大西、他の出口を探すわよっ!」


委員長と2人はドアに阻まれどうすることも出来ない。ギャルが意外に冷静な判断で他の出口を探すことを思いついたが、それも無駄になった。玄関ロビーから左右に伸びた廊下の防火シャッターらしきものが音を立てて下りてしまったのだ。最早2人は袋の鼠である。


「クハハハハッ!泥棒猫どもを簡単に逃がすわけが無いだろうっ!嬲り殺しにしてやるからなっ!」


スピーカーの声は最初の印象とはガラリと変わり、狂喜に染まったものに変貌していた。


「そんな・・・、もう無理よ・・・。」


ギャルがガックリとその場に崩れ落ちる。チビは手にした片手剣でガラスをガンガン殴っていたが、やがて手を止めて同じように座り込んでしまった。3人に打つ手は無くなってしまったのだ。そして委員長は、ガラスの向こう側にある階段の踊り場に無数の影が蠢きだすのをただ黙って見るしかなかった。

えー、長期に渡って休載して申し訳なかった。だが反省はしていな(ry


ぶっちゃけ定時で帰れたのが1ヶ月ぶりくらいです。土日もほぼ無く、あっても買い物や歯医者でほぼ潰れました。日本の労働基準法は破るために存在するのを改めて思い知った感じですね。


最近PCを起動したのが、借りてきたDVDパラノーマルなんとかを見たときだけだという悲しい現実で察してあげてください。


これからもしばらく忙しい時期が続きます。年末までには落ち着けばいいかな・・・。


近況報告のほうが多くなりそうですが、愛想を尽かさずに生暖かく見守ってくださいヾ(๑・ิ⋖⋗・ิ๑)ノ゛

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