# エピソード18 ## 「戦わない戦争」
# エピソード18
## 「戦わない戦争」
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王国軍五万。
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アルカディア二千。
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両軍が向かい合う。
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風が吹く。
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誰も動かない。
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緊張で空気が張り裂けそうだった。
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兵士たちは槍を握る。
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弓兵たちは弦に手をかける。
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騎士たちは馬を落ち着かせる。
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「始まるぞ……。」
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誰もが思った。
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戦争が。
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しかし。
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次の瞬間。
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シンが前へ歩き出した。
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一人で。
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「おい!」
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ガルドが叫ぶ。
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「危ない!」
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リリアも青ざめる。
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だが。
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シンは止まらない。
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そのまま。
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王国軍の前まで歩く。
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五万の兵士が見ている。
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アルバートも見ている。
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そして。
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シンは言った。
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「ちょっと聞いてくれ。」
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全員。
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「……は?」
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兵士たちも固まる。
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貴族たちも固まる。
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アルバートですら黙る。
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シンは続ける。
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「俺は戦争したくない。」
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ざわつく。
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「当たり前だろ。」
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「痛いし。」
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「怖いし。」
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「死にたくないし。」
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兵士たちから笑いが漏れる。
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緊張が少しだけ崩れる。
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シンは指差した。
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王国軍の兵士たちを。
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「なあ。」
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「お前ら。」
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「本当に俺たちと戦いたいか?」
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静寂。
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兵士たちは顔を見合わせる。
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本音を言えば。
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戦いたくない。
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彼らは仕事で来ただけだ。
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恨みなんてない。
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その時。
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一人の若い兵士が呟く。
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「別に……。」
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周囲が驚く。
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貴族たちが睨む。
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だが。
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もう止まらない。
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「俺もだ。」
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「戦いたくない。」
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「家族いるし。」
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「帰りたい。」
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少しずつ。
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本音が漏れ始める。
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アルバートは黙って見ていた。
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シンは笑う。
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「だよな。」
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そして。
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大声で言った。
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「じゃあ聞く!」
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「ここにいる兵士で!」
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「子供いるやつ!」
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ざわざわ。
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何百人。
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いや。
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何千人も手を挙げる。
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「妻がいるやつ!」
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さらに手が上がる。
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「守りたい人がいるやつ!」
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ほとんど全員だった。
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シンは頷く。
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「俺も同じだ。」
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そして後ろを見る。
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アルカディア。
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リリア。
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ノエル。
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ミーナ。
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カイン。
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村長。
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子供たち。
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「俺にも守りたい人がいる。」
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静寂。
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その時だった。
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アルバートが前へ出る。
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兵士たちが道を開ける。
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老人はシンを見る。
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「だから何だ。」
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シンも見る。
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「だから。」
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「戦争は無駄だ。」
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「……。」
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「俺たちは同じだ。」
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「守りたいものがある。」
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「それだけだ。」
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アルバートは黙る。
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二十年前。
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息子を失った日を思い出す。
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血まみれの戦場。
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帰ってこなかった息子。
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あの日。
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自分は誓った。
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強い国を作ると。
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二度と失わないために。
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しかし。
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今目の前にいる青年も。
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同じことを言っている。
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守りたいと。
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方法が違うだけで。
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願いは同じだった。
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その時。
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後ろから声。
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「議長。」
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クラウスだった。
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「もう十分ではありませんか。」
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「……。」
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「私は見ました。」
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「この国に必要なのは。」
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「恐怖ではなく希望です。」
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続いて。
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カインが前に出る。
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「俺は才能なしって言われた。」
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「でも違った。」
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「ここで初めて生きてて良かったと思えた。」
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ノエル。
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「私も。」
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リリア。
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「私もです。」
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次々と人が前へ出る。
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元奴隷。
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職人。
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老人。
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子供。
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みんな語る。
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自分が救われたことを。
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自分の居場所を見つけたことを。
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気付けば。
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王国軍の兵士たちまで聞いていた。
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静かに。
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真剣に。
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そして。
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長い沈黙の後。
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アルバートが空を見上げた。
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青空だった。
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息子が好きだった空。
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老人の目から。
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一筋の涙が流れる。
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誰も見たことがない光景だった。
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「負けたな。」
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静かな声。
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全員が息を呑む。
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「議長……?」
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アルバートは笑った。
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初めてだった。
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本当に穏やかな笑顔。
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「私の負けだ。」
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その瞬間。
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五万の軍勢が静まり返った。
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そして。
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歴史が変わる。
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剣ではなく。
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言葉によって。
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戦争ではなく。
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理解によって。
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世界は変わり始めた。
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アルバートはシンへ歩く。
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そして。
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右手を差し出した。
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「証明したな。」
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シンも笑う。
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「まあな。」
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二人は握手した。
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その瞬間。
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歓声が上がる。
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アルカディアから。
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王国軍から。
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誰も死ななかった。
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誰も失わなかった。
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そんな戦争の終わりだった。
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## 次回
### エピソード19
**「世界が変わる日」**
戦いは終わった。
だが、本当の物語はここから始まる。
アルバートが託した最後の願い。
そしてシンが選ぶ未来とは――。
感動の最終章へ。




