表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/33

# エピソード18 ## 「戦わない戦争」

# エピソード18


## 「戦わない戦争」


---


王国軍五万。


---


アルカディア二千。


---


両軍が向かい合う。


---


風が吹く。


---


誰も動かない。


---


緊張で空気が張り裂けそうだった。


---


兵士たちは槍を握る。


---


弓兵たちは弦に手をかける。


---


騎士たちは馬を落ち着かせる。


---


---


「始まるぞ……。」


---


誰もが思った。


---


戦争が。


---


---


しかし。


---


次の瞬間。


---


シンが前へ歩き出した。


---


一人で。


---


---


「おい!」


---


ガルドが叫ぶ。


---


---


「危ない!」


---


---


リリアも青ざめる。


---


---


だが。


---


シンは止まらない。


---


---


そのまま。


---


王国軍の前まで歩く。


---


---


五万の兵士が見ている。


---


---


アルバートも見ている。


---


---


そして。


---


シンは言った。


---


---


「ちょっと聞いてくれ。」


---


---


全員。


---


「……は?」


---


---


兵士たちも固まる。


---


---


貴族たちも固まる。


---


---


アルバートですら黙る。


---


---


シンは続ける。


---


---


「俺は戦争したくない。」


---


---


ざわつく。


---


---


「当たり前だろ。」


---


---


「痛いし。」


---


---


「怖いし。」


---


---


「死にたくないし。」


---


---


兵士たちから笑いが漏れる。


---


---


緊張が少しだけ崩れる。


---


---


シンは指差した。


---


---


王国軍の兵士たちを。


---


---


「なあ。」


---


---


「お前ら。」


---


---


「本当に俺たちと戦いたいか?」


---


---


静寂。


---


---


兵士たちは顔を見合わせる。


---


---


本音を言えば。


---


戦いたくない。


---


---


彼らは仕事で来ただけだ。


---


---


恨みなんてない。


---


---


その時。


---


一人の若い兵士が呟く。


---


---


「別に……。」


---


---


周囲が驚く。


---


---


貴族たちが睨む。


---


---


だが。


---


もう止まらない。


---


---


「俺もだ。」


---


---


「戦いたくない。」


---


---


「家族いるし。」


---


---


「帰りたい。」


---


---


少しずつ。


---


本音が漏れ始める。


---


---


アルバートは黙って見ていた。


---


---


シンは笑う。


---


---


「だよな。」


---


---


そして。


---


大声で言った。


---


---


「じゃあ聞く!」


---


---


「ここにいる兵士で!」


---


---


「子供いるやつ!」


---


---


ざわざわ。


---


---


何百人。


---


いや。


---


何千人も手を挙げる。


---


---


「妻がいるやつ!」


---


---


さらに手が上がる。


---


---


「守りたい人がいるやつ!」


---


---


ほとんど全員だった。


---


---


シンは頷く。


---


---


「俺も同じだ。」


---


---


そして後ろを見る。


---


---


アルカディア。


---


---


リリア。


---


ノエル。


---


ミーナ。


---


カイン。


---


村長。


---


子供たち。


---


---


「俺にも守りたい人がいる。」


---


---


静寂。


---


---


その時だった。


---


---


アルバートが前へ出る。


---


---


兵士たちが道を開ける。


---


---


老人はシンを見る。


---


---


「だから何だ。」


---


---


シンも見る。


---


---


「だから。」


---


---


「戦争は無駄だ。」


---


---


「……。」


---


---


「俺たちは同じだ。」


---


---


「守りたいものがある。」


---


---


「それだけだ。」


---


---


アルバートは黙る。


---


---


二十年前。


---


息子を失った日を思い出す。


---


---


血まみれの戦場。


---


---


帰ってこなかった息子。


---


---


あの日。


---


自分は誓った。


---


---


強い国を作ると。


---


---


二度と失わないために。


---


---


しかし。


---


今目の前にいる青年も。


---


---


同じことを言っている。


---


---


守りたいと。


---


---


方法が違うだけで。


---


---


願いは同じだった。


---


---


その時。


---


後ろから声。


---


---


「議長。」


---


---


クラウスだった。


---


---


「もう十分ではありませんか。」


---


---


「……。」


---


---


「私は見ました。」


---


---


「この国に必要なのは。」


---


---


「恐怖ではなく希望です。」


---


---


続いて。


---


カインが前に出る。


---


---


「俺は才能なしって言われた。」


---


---


「でも違った。」


---


---


「ここで初めて生きてて良かったと思えた。」


---


---


ノエル。


---


---


「私も。」


---


---


リリア。


---


---


「私もです。」


---


---


次々と人が前へ出る。


---


---


元奴隷。


---


職人。


---


老人。


---


子供。


---


---


みんな語る。


---


---


自分が救われたことを。


---


---


自分の居場所を見つけたことを。


---


---


気付けば。


---


王国軍の兵士たちまで聞いていた。


---


---


静かに。


---


真剣に。


---


---


そして。


---


長い沈黙の後。


---


---


アルバートが空を見上げた。


---


---


青空だった。


---


---


息子が好きだった空。


---


---


老人の目から。


---


一筋の涙が流れる。


---


---


誰も見たことがない光景だった。


---


---


「負けたな。」


---


---


静かな声。


---


---


全員が息を呑む。


---


---


「議長……?」


---


---


アルバートは笑った。


---


---


初めてだった。


---


---


本当に穏やかな笑顔。


---


---


「私の負けだ。」


---


---


その瞬間。


---


五万の軍勢が静まり返った。


---


---


そして。


---


歴史が変わる。


---


---


剣ではなく。


---


言葉によって。


---


---


戦争ではなく。


---


理解によって。


---


---


世界は変わり始めた。


---


---


アルバートはシンへ歩く。


---


---


そして。


---


右手を差し出した。


---


---


「証明したな。」


---


---


シンも笑う。


---


---


「まあな。」


---


---


二人は握手した。


---


---


その瞬間。


---


歓声が上がる。


---


---


アルカディアから。


---


王国軍から。


---


---


誰も死ななかった。


---


---


誰も失わなかった。


---


---


そんな戦争の終わりだった。


---


## 次回


### エピソード19


**「世界が変わる日」**


戦いは終わった。


だが、本当の物語はここから始まる。


アルバートが託した最後の願い。


そしてシンが選ぶ未来とは――。


感動の最終章へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ