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父の過保護の檻を娘は物理で突破する

「なるほど。モンス君、話にならないね。他の家庭は? 子どもたちの教育はどうしているの?」


辺境伯の問いかけに、イグニスお母さんが答える。


「我が家は一人息子なので、同世代の子どもと関わり、社会性を学ばせたいと考えまして。無理を言って、ソロ伍長のお宅に息子と家庭教師を通わせています」

「ん? 家庭教師も?」

「はい。現在は、生家の侍女の娘に住み込みの家庭教師を頼んでおります。ただ、女性と息子の二人の家に御子息を招くのは些か心もとないので、隣家のソロ伍長宅に通わせています」

「流石だな。イグニス大隊長は柔軟な思考をする」


イグニスお母さんに肘で押され、母親の陰にいた赤毛の男の子が、ちょこんと顔を出してすぐに引っ込めた。


「イグニス大隊長のご厚意に甘えているのは我が家の方です」


我が家の斜向かいに座っているご一家の厳ついお父さんが答える。腕の中で、頬のふっくらした小さな男の子がすやすや眠っている。


「恥ずかしながら、まだ下の子たちが小さいので、どうしても長男の教育までなかなか手が回りませんで。イグニス大隊長、ご子息、家庭教師の先生には大変感謝しております」


厳ついお父さんの横で、小動物のようなお母さんが頭を下げている。お母さんは背と胸に赤ちゃんを抱っこしている。あの抱っこ紐は、きっと魔法生物の吐く伸縮性のある糸で編まれているに違いない。馬で激走している時も、赤ちゃんはほとんど揺れていなかった。


「イグニス大隊長の所の家庭教師、ご専門は何でしょうか?」


若草色の瞳のベントスお父さんが話に入ってきた。


「彼女には基礎的な教養をお願いしているわ。具体的にはクレール語の読み書き、隣国のディンド語での会話、我が国と近隣諸国の地理と歴史、それから基本的な礼儀作法よ。それとは別に剣術と体術、魔法原論を私が教えているわ。もちろん、ソロ伍長の御子息にもね」

「なるほど。十分すぎる内容ですね」


ベントスお父さんは、彼の背に隠れていた金髪の男の子を腕で抱えるように押し出した。


「うちの息子も、その勉強会に混ぜてもらえませんか? 我が家は通いの家庭教師をお願いしているのですが、ちょっと厳しすぎるようで。家人が目を離した隙に、息子へむちを使ったようでしてね」


ベントスお父さんの言葉に、イグニスお母さんは顔をしかめた。


「ご子息を打った同じ数だけ、私が鞭を打ってやりたいわね」

「お気持ちだけ、有り難く頂戴します」


ベントスお父さんは意味深な笑顔を見せた。


「いいわ。ベントス隊長の御子息も一緒に学びましょう」


イグニスお母さんの即断で、大方の話がまとまる。


「まぁ、お友だちが増えるのはとっても素敵ですね。けれど、我が家にもう一人お客様をお迎えできるかしら」


ソロお母さんは野ウサギのように小首を傾げた。


「それならば、学び場として我が家を提供しましょう。我が家にも結界魔道具は置いてありますし、日中は妻と家令が屋敷におります。馬もいますので、毎朝お宅までお迎えに上がりますよ」


ベントスお父さんは流れるように詳細を詰めていく。


「……そこにさ、マーナちゃんも参加すればいいんじゃないの?」


辺境伯から絶好のパスが出た。


「せっかくで、がぁ……う!!」


ようやく私の出番か! と瞬時に察知した私は、素早く父の口に拳を突っ込んだ。


「そうですわね! 皆様、是非ともご一緒させてください。毎朝連れて行きます」

「ですね! 是非、妹もよろしくお願いします。イグニス大隊長には及びませんが、剣術と体術、魔法原論ならば、私と弟も多少お教えできると思います」


私が父の口を封じている間に、母が勢いよく賛同し、表情筋を生き返らせた兄が笑顔で言い募る。父は口へ入ってきた私の拳に狼狽えて目を白黒させている。


「可愛いからって、家の中に閉じ込めすぎなんだよ。モンス君、加減は大事」


辺境伯の言葉に、私はぶんぶん首を縦に振る。

本当にその通りだ。私はここにいる皆さんと『今日初めて会った』のだ。前世も含め、父は私を世間からずいぶん遠ざけていたようだ。

私の反応を見て、父はしょんぼり項垂れている。父は私の拳をそっと取り出し、清浄魔法をかけた。


いじけた父が貝のようになったので、その後も話し合いは順調に進んだ。

今後は、四家庭の子どもたちで、平日にベントス家での勉強会をすること、休息日に辺境伯が運営する孤児院へ慰問することが決まった。

一週間の構成(計七日)

平日の五日(銀・灰・炭・鉄・黒)に、休息日と安息日を加えた計七日で一週間。


一カ月と一年の構成

四週間で一カ月(28日)、十三カ月で一年。


季節と新年

四季の移り変わりや新年の時期については、現代日本と同様の感覚。


年齢の数え方(数え年)

本作の世界では「数え年」を採用。生まれた時点を一歳とし、その後は誕生日ではなく、新年(元日)を迎えるたびに全員が一斉に一歳を加えて数える年齢方式。

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