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やったぜ。2  作者: 水前寺鯉太郎


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五日目のカレーうどん 投稿者:土方のわし

投稿者:土方のわし 9月5日

 今日で休みも5日目じゃ。

 昨日冷蔵庫へ叩き込んでおいたスープカレー。一晩冷やしたおかげで、菌の野郎も手出しできん鉄壁の熟成を遂げとった。今日はこの余った汁に和風出汁と片栗粉をブチ込んで、ドロドロの「カレーうどん」に改造することにした。

 だが、今日はいつもと気合が違う。わしも、おっさんも、兄ちゃんも、古着屋で仕入れてきた真っ白なTシャツと白ズボンに身を包んだんじゃ。

「わしさん、なんで地下足袋に白装束なんですか」

「カレーに対する究極の礼儀じゃ。汚れを恐れる心こそが、一番おえんのじゃ」

 兄ちゃんが黙った。おっさんも汚れ好きの目を光らせて黙った。

 コンロに火をつけると、出汁の香りが鼻をひくひくさせてくる。トップバリュの黄色いラベルを一口煽り、わしらは真っ白な姿で食卓を囲んだ。

 横では太郎の奴が、テレビの『食いしん坊万歳』のリズムに合わせて尻尾をブンブン振り回しとる。

「太郎、お前もその白い毛を汚すんじゃねぇぞ」

 太郎は聞いとらん。

 いよいよ実食じゃ。うどんを啜った瞬間、カレーの飛沫が胸元にドバーっと飛んだ。真っ白な布地に、毒々しい黄色いシミが点々と広がっていく。

 あぁ~~たまらねえぜ。

「うおっ、おっさんの汁が飛んできた!」

「兄ちゃん、お前こそ豪快に啜りすぎじゃ。出口を求めて汁が跳ねよるわ!」

 もはや誰の汁か分からん。そこへ兄ちゃんがおっさんの口にうどんを突うずるっ込んでやった。おっさんが堪らず啜り上げると、盛大に黄色い花が咲きよった。

 おっさんの白いシャツが、みるみるうちにカレーまみれや。

「兄ちゃん、お前のせいでわしの聖域が……」

「おっさんの啜り方が卑しいせいですよ。もう気が狂う程気持ちええでしょ」

 おっさんは黙って、自分のシャツに滲むドロドロを眺めて悦に浸っとった。

 和風出汁とスパイスが喉の奥まで広がっていく。白い服で食う背徳感が、旨さを数段跳ね上げよる。

 あまりの熱気に、おっさんがシャツを脱ぎ捨てようとした。

「脱ぐな。汚れるまでが礼儀じゃ」

「でも、もう限界ですわ……重たい……」

「最後まで着ておれ。それが土方の意地じゃ」

 それからはもうめちゃくちゃじゃ。追い飯を二回出して、三人で現場仕事より酷い有様になった服を眺めて高笑いしたんじゃ。

 太郎の奴、いつの間にか白い毛に黄色いシミをつけて、知らん顔しとる。

「太郎、お前までまみれやがって。もう、おえんのう」

 太郎はそっぽを向いた。

 こんな変態親父と白服カレー遊び、しないか。

 あぁ~~早くカレーのシミまみれになろうぜ。

 岡山市内のアパート、洗濯機は今、カレー色の水で一杯じゃ。

 強力な漂白剤持って来てくれる奴、おらんかのう。真っ白な心で、また明日も煮込んでみたいんじゃ。

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