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ハンターランキング2位のエルフに憧れてハンターになったら人間が1人もいなかった  作者: F.R


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第10話 意外な助っ人


「……大丈夫か?」


聞き覚えのある、低い声。


霞む視界の向こうで、

僕の前に立っていたのは


あのドアーフだった。


さっきまで、地面に倒れていたはずの。


治療は受けたが、明らかに万全じゃない。


肩で息をし、身体のあちこちに包帯が巻かれている。


ノルディスが、それを見て笑った。


「……おまえら、まだ懲りないのか」


嘲るような声音。


ドアーフは一瞬だけ歯を食いしばり、

それから僕を見た。


「……すまねぇな」


低い声。


「借りは、ここで返す」


そう言って、背後にいる仲間二人を一瞥する。


「俺らが、時間を稼ぐ」


「お前らは目的地へ行け」


「無駄に戦う必要はねぇ」


僕は、思わず叫んだ。


「……でも! お前らは……!」


ドアーフは、ふっと鼻で笑った。


「俺らはよ……」


一拍。


「ハンターになる資格はねぇ」


その言葉が、胸に刺さる。


ドアーフは続けた。


「人間よ」


真正面から、僕を見た。


「……馬鹿にして、悪かった」


「お前ほどのハンターはいねぇよ」


一瞬、何も言えなかった。


「必ず、勝ち抜け」


「俺らの分もな」


それは、言い訳でも、同情でもない。


男同士の約束だった。


僕は、強く頷いた。


「……約束だ」


ノルディスが、苛立ったように舌打ちする。


「……茶番だな」


ドアーフが、吠えた。


「行けええええ!!」


その瞬間。


僕たちは、走り出した。


ノクティア、ルーシィ、ラビ、ルビ。


振り返らない。


ノルディスの声が、背後から響く。


「俺を足止めするつもりか?」


「次は、殺すぞ」


ドアーフが、睨み返す。


「竜人よ」


「足止めじゃねぇ」


「お前を、ハンターにはさせねぇ」


三人のドアーフの目付きが、変わった。


ノルディスの目も、冷たく細まる。


「……ならば、死ね」


次の瞬間


ドッカァァン!!


大地が、揺れた。


爆音。

衝撃波。


背中越しに、戦いが始まったのが分かる。


僕たちは、無我夢中で走った。


地面が揺れる。

木々が倒れる。


波動が、背中を叩く。


(……生きててくれ……)


ドアーフたちの顔が、何度もよぎる。


でも。


「……無駄にはしない!!」


僕は、歯を食いしばった。


やがて、森が開けた。


見覚えのある石壁。


試験開始時に立っていた場所。


目的地だ。


そこには、ハンター協会の天使属が立っていた。


「お疲れ様です」


淡々と、そう告げられる。


周囲を見ると、すでに多くの受験者が集まっていた。


……いや。


思ったより、少ない。


その中で


「あ……!」


ルーシィが、声を上げた。


そこにいたのは、一人のエルフ。


「……サラ?」


ルーシィの仲間。


サラは、僕たちを見て、少しだけ笑った。


「……強くなったんだね」


その視線は、ルーシィに向けられている。


ルーシィは、目を潤ませながら頷いた。


「……サラ……!」


その時、僕は気づいた。


(……ああ……)


やっぱり参加してたのか

あの時のエルフ。


視線が合う。


サラは、僕を見て、軽く頭を下げた。


「……ありがとう」


「友達を、守ってくれて」


胸の奥が、少し温かくなった。


その直後。


空気が、ざわつく。


強烈な気配。


振り向くと


ノルディスが来ていた。


両腕に、竜人二人を担いで。


無傷ではない。


だが、歩き方は堂々としている。


ノルディスは、一瞬だけ僕たちを睨み、


何も言わず、先へ進んでいった。


(あいつらは…)


胸が、ざわつく。


数時間後。


天使属が、全体に向けて声を張った。


「第一次試験、終了」


静まり返る。


「残った者は……」


一拍。


「七十五名」


……七十五?


僕は、思わずノクティアを見る。


「……聞き間違い……?」


三千人いた受験者が、

七十五人。


現実だった。


天使属は、続ける。


「明日の二次試験は、

 残った者による一騎打ちとなります」


「本日は、解散」


「お疲れ様でした」


僕たちは、自然と互いの顔を見た。


生き残った。


それだけで、奇跡だ。


「……ありがとう」


「……明日も、頑張ろう」


短い言葉を交わし、それぞれ別れる。


僕とノクティアは、かなり疲れていた。


足取り重く、近くの宿へ向かう。


その道中、噂話が耳に入る。


「……今回の試験、

 ノルディスたちが魔石を千個以上集めたらしい」


「三人で……?」


「千人以上の受験者が、やられたって……」


ノクティアが、小さく息を呑んだ。


「……強いね」


「うん」


「たぶん……僕たちの中で、一番強い」


負けてられない。


「……ドアーフたちの分も」


僕が言うと、ノクティアは、強く頷いた。


宿に着く。


鍵を受け取り、部屋へ。


扉を開ける。



同じ部屋


「……今日は、もう……」


ノクティアが、ぽつりと呟く。


「……うん」


身体も、心も、限界だった。


でも。


部屋に入った瞬間、僕は思わず声を上げた。


「……狭っ」


決して汚いわけじゃない。


でも、広くもない。


そして

部屋の中央に、きれいに敷かれた布団。


一枚だけ。


「……はは」


思わず笑ってしまう。


「なんか、昔みたいだな」


ノクティアを見ると、


なぜか微妙な顔をしていた。


「……なに、その顔」


「別に」


いや、絶対“別に”じゃない。


「おいおい、嫌そうにするなよ」


「……してない」


そう言いながら、視線を逸らす。


昔は、よく一緒に寝ていた。


寒い夜


怖い夜


ノクティアは怖がりでいつも一緒に寝ていた


当たり前のように、隣にいた。


でも

いつの間にか、別々の布団になっていた。


理由なんて、深く考えたこともなかった。


「……はみ出そうだな」


「……うん」


ぎこちない返事。


とりあえず、先に風呂に入ることにした。


順番に、さっと。


湯船に浸かると、

張り詰めていた身体が一気に緩む。


(……生きてる)


それだけで、十分だった。


風呂から上がると、

ノクティアはすでに布団の端に座っていた。


「……疲れたな」


「……うん」


布団に横になる。


天井を見つめながら、少し話す。


今日の戦い。


ドアーフのこと。


ノルディスの強さ。


「……明日、どうなるかな」


「……なるようにしかならない」


ノクティアらしい答え。


「でも、勝とう」


「……うん」


声が、近い。


眠気が、一気に押し寄せる。


「……おやすみ」


「……おやすみ」


目を閉じる。


すぐに、意識が沈んでいった。



ノクティア視点


……寝れるわけがない。


心臓が、うるさい。


(……近すぎ……)


ルークの寝息が、すぐそこ。


昔は平気だった。


でも、今は

全然、無理。


(いつになったら……気づくんだろ……)


私が、女だってこと。


最初に言わなかった私も悪い。

言い出せなかったのも、私だ。


でも

ここまで気づかないとは思わなかった。


(……鈍感すぎ……)


布団一枚。


この距離。


冷静でいられるわけがない。


顔が、熱い。


(……明日も試験なのに……)


寝なきゃいけないのに、

目を閉じるほど、意識してしまう。


(……無理……)


そっと、身体を起こす。


音を立てないように、慎重に。


ルークは、ぐっすり眠っている。


……よかった。


(……ほんとに……)


私は、小さくため息をついた。


「……ソファで寝よ……」


布団を抜け出し、

部屋の隅の小さなソファに身を丸める。


狭い。

硬い。


でも

心臓は、少し落ち着いた。


「……ばか……」


ルークの寝息を聞きながら、

私は、ゆっくり目を閉じた。


明日は、二次試験。


(必ず2人でハンターになるんだ)


そう思いながら、

ノクティアはソファで眠りについた。


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