第4話:村人の伝承
村の古い民家に招かれ、翔子とロンは土間に腰を下ろした。
煤けた梁、干し草の匂い、かすかな火の香。村人の老人は静かに口を開いた。
「昔、この村には…封印された事件があった」
声は低く、だが言葉の端々に重みがある。翔子はメモを取りながら、古文書の記述と照合する。
「…でも、文献と少し違う」
ロンも眉をひそめ、土間の床を観察する。「古文書は正確だが、伝承は意図的に歪められているかもしれない」
老人は続ける。「当時の施設は、村の中心より北にあった。だが、誰も近づけなかった」
翔子は心の中でつぶやく。「北…現地の地形と一致するかもしれない」
ロンは目を細め、微細な地形の変化を確認する。「足跡や土の盛り上がりと繋げれば、隠された場所が見えてくる」
風が土間の隙間を通り抜け、戸の格子がかすかに軋む。
翔子は息を整え、ノートに線を引く。「小さな証拠でも、伝承と合わせれば真実が浮かぶ」
ロンは静かに頷き、「俺たちの手掛かりは、過去の人々が残したものと現場の微細な痕跡にある」
老人の目が二人を見据える。「気をつけなさい…真実を探す者は、過去の影に飲まれることもある」
翔子はペンを握り直し、心を引き締めた。
「どんな危険でも、証拠が導く道に従う」
風が再び土間を通り抜け、古民家の影が揺れる。
過去の事件の断片と伝承の矛盾は、二人をさらに深い謎の核心へと導こうとしていた。




