第2話:歪められた地図
博物館の地下資料室、薄暗い照明が机の上に置かれた古地図を照らしていた。
翔子はルーペを通して、古文書に描かれた地形と現代地図を慎重に照合する。
「…やはり、微妙に位置がずれている」
小川の曲がり角、丘の形状、古の道――どれも現在の地図とはわずかに異なる。
ロンは資料室の隅で、土や石のサンプルを手に取り、微細な手掛かりを確認していた。
「誰かが意図的に修正したか、時間の経過で変わったか。どちらにせよ、意味がある」
翔子は眉をひそめる。矛盾は偶然ではなく、過去事件の核心に繋がる手掛かりの可能性が高い。
「古地図のこの場所…現代では小さな村になっている。でも文献では重要な施設があった」
ロンは指で地図を辿りながら、「つまり、過去の事件の痕跡はまだ残っている。探せば見つかる」
資料室の静けさの中、微かな紙の擦れる音が響く。
翔子は振り返るが、誰もいない。ただ、棚の陰に不自然な影が揺れたように見えた。
「…また監視されている?」
ロンは静かに頷く。「注意して進むしかない。真実は、手の届くところにある」
翔子はペンを握り直し、古地図の矛盾を線で結んでいく。
「小さなずれでも、全体をつなげれば過去の事件の真実が見える」
二人は資料室の奥に向かって歩き、過去と現代の交差点に足を踏み入れた。
微細な矛盾が、やがて大きな謎の核心を照らす光となることを、まだ誰も知らない。




