50話 シオンの正体を知る者 都から来た監視者、エミリアだけが知るシオンの過去。
秋風が赤や黄色の葉を揺らす季節、エルデン村はいつにも無く穏やかな日々を送っていた。 収穫を終え、冬支度まで備え村人の表情は柔らかく、その中にエミリアとシオンも自然と安定していたよ。
しかし、全てが静かな調和に見えても、村の誰もが知るはずのない「秘密」はひそかに聞こえた。
エミリアは朝、市場で村人たちと言葉を交わしていたが、目は何度もシオンの姿を探していた。 彼こそが都から逃れてきた「英雄」であり、しかし今は一時村の一住人に過ぎない。
心の中に重くのしかかるのは、その過去の秘密を誰にも明かせないという葛藤だった。
(あの人はここで普通に暮らしている。でも、もし本当のことがバレれば……)
「昨日、シオンが市場で変わった話してた。都の話とか、誰かを守ってたとか……」
「まさか、あのシオンがあるの都の勇者だなんて?」
「でもあんなにひっそり暮らすなんて、もしかして何か訳があるんだろ」
村人の葛藤は大きく揺れ、シオン側の態度にも緊張が走る。
ある晩、村の囲炉裏でシオンがふと漏らす。
「都で過ごした日々は、いつも誰かの目があった。自由になることは許されなかった」
「辛かったのか?」
「……誰かを守る使命だけは重かった」
誰も黙り込んだ中、エミリアは静かに彼を見つめ、胸の内で「知られてはいけない秘密」を守らねとの覚悟を新たにした。
数日後、シオンが村の図書室の隅で古いものに目を通している姿を、リアナが偶然見つけた。
「彼、ただの農夫には見えないわ。背中に背負うものがあるのね」
村人の間にも、シオンの態度や行動、時折立ち止まる視野から目を離せないという空気が広がっていた。
夜、エミリアは村の小さな丘で星を眺めながら独り呟く。
(真実を話せば、彼の居場所は壊れてしまうかもしれない。隠し続ければ、自分が罪を背負うことになる)
それと、彼の自由を願う心の間で揺れ動き、答えのない問いに賭けていた。
ある日、村人の一人がエミリアに伺いました。
「シオンのこと、何か知ってないのか? 感動、普通じゃない気がするんだ」
エミリアは冷静に対応した。
「誰もがそれぞれに秘密を持っています。村に来たばかりのあなたにも聞かせている話だけが全てではありません」
その言葉に村人は納得しつつも、心に疑念を残した。
エミリアは決心する。
「私が守るべき秘密の重さを、ひとりで背負い続ける――それが、私の役目なのだから」
村人の疑念は少しずつ膨らんでいた。パン屋ノルの店先での何気ない会話も、ふとした問題の視点も、どこか重苦しいものに変わっていた。
「シオンが昔の都の勇者だって知ってたら、どう思う?」
「守り人が戦士だったなんて、怖い気もするけど……助けられるかもしれない」
「それでも、嘘をつかれていて、裏切られた気分になろうな」
村人たちその間、限りない距離感とともに警戒心と期待が交錯し始める。
ある日、タカシガシオンを呼び止めた。
「シオンさん、この前のことだけど……もしよければ、昔の話聞かせてくれませんか?都のこととか、戦いのこととか」
シオンは一瞬迷いながらも、言葉を紡ぐ。
「都は遠い過去だ。でも、別に楽しかったものも多かった。聞きたいのなら、話してもいい」
村の子供たちが近づき、小さな目を輝かせて見つめる。シオンは少しだけ笑い、語り始めた。
エミリアは誰にも言えない秘密を抱えながら、心の中で葛藤していた。
(守れば、あの人が村から追われるかもしれない。守れば、自分が孤独になる)
仲間として、監視者としての立場。その狭間で揺れ動く彼女の胸は、ますます重くなってしまった。
村の夜、ひとり井戸端に座るエミリアは静かに語る。
「秘められた過去と、それを知らぬ日常の圧力は重い。でも……守ることが私の役目なら、喜びもあれば当然もある」
リアナがエミリアにそっと思った。
「もし秘密を知っていても、私たちは村で生きていくんですよね?」
「そう。秘密は、関係を壊すためのものじゃなくて、守るためのもの」
二人の会話は、エミリアにとって小さな苦しみとなる。心の奥で、少しずつ「秘密」の重さが軽くなってゆくのを感じていた。
エミリアは決意を新たにする。
「私がシオンの秘密を守ることは、村の平和と信頼の基盤。孤独でも、その重さは果てしなく続く」
セリフ、村人たちが少しずつシオンの真実に近づきつつあり、その中で新たな信頼や葛藤が生まれている。
二人の「秘密」は、まだ完全には明かされず、それが未来の物語の鍵となるのだった。




