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賞金稼ぎガビの冒険  作者: 秋山春
第二章 カボチャ泥棒
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7話


 

 ガビとエレナは小鬼の足あとを追って森に入った。


 先導するのはガビだ。

 迷いなく痕跡を辿っていくガビに、エレナは驚いたようだった。


 エレナはどうせろくに勉強していないと思っていたようだが、ガビは賞金稼ぎの仕事に関する事ならまじめに話を聞いていたし、部屋で復習もしていた。


 十日に一度の休日に山へ入り、動物の痕跡を辿る練習もしていたほどだ。


「動物の痕跡とごちゃまぜにならないようにね」


「うん。わかってる」


 ガビは地面を注意深く見て、小鬼の足あとを見つけていく。雑草が折れ曲がっているのは何かが当たったからだ。きっと小鬼が通った時に折れたに違いない。


 時間をかけてゆっくり進んでいると、ガビの頭にエレナの手刀が落とされた。睨みつけると「油断禁物」とだけ返ってきた。


 ガビはハッとした。

 夢中になりすぎて周りを警戒できていなかった。もし一人で、今のが敵の攻撃なら死んでいた。ガビは気を引き締め直して足を進めた。


 しばらく行くと、カボチャの残骸が散らばっているのを見つけた。カボチャはもっと先の方まで続いて落ちているようだ。


 巣に帰る途中で食べ始めてしまったのか、そこからは地面に落ちているカボチャの黄色い残骸を辿ればよかった。


「一応、これが罠の可能性もあるから気をつけるのよ」


 地面のカボチャを頼りにどんどん進むと、正面にほら穴が現れた。


「あれが巣だよね?」


「そうね」


 ガビ達は木のかげに姿を隠したあと、もう一度ほら穴を見た。

 

 周りに草や蔦を丸めた物がたくさん置かれている。きっとあれで隠したいのだろうが、逆に不自然で目立ってしまっている。


「どうしたらいい?」


 ガビは尋ねた。


「小鬼の特徴はおぼえてる? 角の数の違いとか」


「もちろん。角は四本から一本まであって、少なくなるほど賢いんだよね」


「そうよ。じゃあここにいるのは何本角かしら」


 ガビは考え込んだ。

 畑に残されたままの足あと、つまみ食いしたカボチャの食べこぼし、隠しきれてないほら穴……とても賢い行動とは思えなかった。


 二本角、一本角になるとそこらの人間より賢いと聞くからきっとここにはいないはずだ、とガビは結論づけた。


「四本角かな。三本角もいるかも」


「私も同じ考えよ。そういう時はこうするの」


 エレナは、すももくらいのサイズをした黒い玉を取り出した。表面はザラザラしていて一本だけ麻紐が飛び出ている。


 その紐にマッチで火を付けると、ほら穴に向かって放り投げてしまった。


「今のなに?」


 ガビは慌てて聞いた。

 

「煙玉よ」


 その直後、ほら穴の中からボンっと音がなって、大量の煙が流れて出てきた。生き物の喚き声や走りまわる音が聞こえてくる。


「何してるのさ!」


「こういう時は、こうするのが手っ取り早いのよ。もちろん二本角や一本角がいそうな時は絶対やっちゃダメだからね」


 エレナは真剣に言ったが、ガビはそれどころではなかった。ほら穴に充満している煙の中からぞくぞくと小鬼が飛び出してきているのだ。


 小柄な体にガサついた濃茶色の肌、人間の三倍は大きな目玉、額には小さな角が生えている。


 初めて見るが、エレナに聞いていた通りの見た目をしているのですぐにわかった。


「七匹もいるよ!」


「落ち着きなさい。まずは観察よ。角は何本ある?」


 ガビは深呼吸をして無理やり気持ちを落ち着かせた。エレナに文句を言うのは帰ってから出来る。今は目の前のことに集中するのだ。


「えっと……あ、一匹だけ三本角がいる。残りはみんな四本だ」


「よろしい。じゃまずは二、三匹昏倒させてちょうだい。くれぐれも殺しちゃダメだからね」


 そういうと、エレナはガビを木のかげから引っ張り出して小鬼のいる方へ突き飛ばした。


「うそでしょ……」


 転ばないようにわたわたと体勢を立て直す。

 ガビは信じられないという気持ちで振り返ると、エレナが声を出さずに「がんばれ」と言っていた。


 まだ心の準備が出来ていないというのに。

 おそるおそる前を見ると、小鬼達がガビを睨みつけていた。


 大小不揃いな歯が並ぶ口元を歪ませて怒りをあらわにしている。「お前がやったのか」という顔だ。


 ガビは急いで背中の剣に手を伸ばした。留め具を外して体の前に持ってくると、鞘から抜こうと力を入れる。


「え?」


 抜けなかった。


 よく見れば抜けないように紐で括られている。ガビはもう一度後ろを振り返った。きっと痕跡を辿っている隙にエレナがやったのだ。ガビが小鬼を斬ってしまわないように。


 ガビは鞘付きのまま剣を構えた。

 皮作りの軽い鞘のため、戦闘にそこまで支障はなさそうだ。


 小鬼達は武器を構えたガビを見て陣形を変えた。

 三本角を後ろにおいて、その前に四本角達が立ち塞がっている。


 ガビから攻めても多勢に無勢、四方から袋叩きにされておしまいだ。しかし小鬼達も動こうとしない。しっかりガビを警戒しているようだった。


 どうしたものかと見合っていると、後ろから「煽れ煽れ」と囁き声が聞こえてきた。


 現状を打破出来るならと、ガビは最大限のむかつく顔をして小鬼を煽った。


「さ、さあ、ほら来いよ。どうした? 怖いのか?」


 数匹が顔を引きつらせている。効果的面らしい。

 ガビはさらに煽る。


「戦うのが怖いんだろ? お前達に出来ることなんて、せいぜいカボチャ盗むくらいだもんな。弱虫毛虫のあっかんべー」



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