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賞金稼ぎと怪物の仮面  作者: 秋山春
第四章 ひとりぼっち
19/25

17話



3


 

 日課の丸太打ちを終えたガビは、帰ってくるなり、ほうきを手に取り、村中を駆け回った。


 なにせ、この時期になると、一晩のうちに大量の落ち葉がふってくる。ほっておくと地面が木の葉で埋め尽くされてしまう。


 ほうきで集めた落ち葉を木箱に詰めると、落ち葉小屋と呼んでいる小さな家屋に放り込んでいく。これらは冬のあいだ薪に混ぜて使う。


 落ち葉の運搬作業をひたすら繰り返して、ガビはようやくひと息つく事ができた。


 汗と汚れをさっぱりキレイにしてから、キッチンへ向かった。あらかじめ作っておいた、冷めた朝食がテーブルに並んでいる。


 しかし、ガビはテーブルにつくことなく、立ったまま朝食をかき込むと、手早く片付けをすませた。それから、食料棚の両開き戸に手をかけた。


 食料棚は、ガビの身長より少し高い。戸を開けると、冷んやりとした空気が流れでて顔をなでた。冷気は下に落ちていき、ガビの火照った体を優しく包んだ。気持ちよくて、思わず顔が緩んでしまう。


 冷気を発しているのは、棚の上部に短い紐で吊るされた、青く光る石のかけらだ。どういう理屈かは知らないが、エレナが北の大魔女から譲り受けた珍しい物らしい。この石のおかげで、食料を長いあいだ保管出来ているという訳だ。


 いつもなら、冷気がもったいないとエレナに怒られるところだが、今エレナはいないので、たっぷり冷気を楽しんだ。それからガビは、むずかしい顔をして、残り少ない食糧をじっと睨みつけた。


「あと二日、いや、三日はもつかな」


 ガビは、ぼそりと呟いた。

 静かに戸を閉めると、腕を組んで棚にもたれかかり、ふーっと、長いため息をついた。


 エレナを信じて待つ事を決め、ガビの悩みは解決したかに思えたが、すぐに新しい悩みの種が芽生えていた。それはお金のことだ。

 

 エレナが残していったお金は、ガビが二ヶ月のあいだ生活しても余るくらいだった。しかし、三ヶ月が過ぎ、山のように感じられたお金も、いよいよ底を尽きかけている。どこかにお金を隠していないかと、家中をひっくり返して探してみたが、レイル硬貨一枚見つからなかった。

 

 お金が尽きたとしても、川で魚を獲ったり、山で狩りをすれば生きるに困ることはないだろうが、いかんせんタイミングが悪すぎた。なにせ日々の暮らしにくわえて、冬支度もしなければならない。


 薪を集めたり、保存食を作ったり、ただでさえ冬前は忙しくなるというのに、その日の食糧を自力で確保しながら、それら全てをガビ一人で行うのは到底無理だ。


 このままでは冬を越えられない。冬を無事に超えるためには、誰かの手助けか、お金が絶対に必要だ。

 

「ジェイにお願いすれば……食べ物、分けてくれるかな」


 いやいや、と、ガビはすぐに首を振った。

 気安く他人に借りを作るなと、エレナに教わっている。これは最後の手段だ。だが、他に頼れそうな人はいない。


 ガビは、ずっと脳裏にチラついていた考えを実行するしかないと、心を決めた。数ヶ月前、初めてエレナに連れていってもらった賞金稼ぎとしての仕事、あれをやるのだ。ガビ一人で。


 ガビが受けられる仕事なんて大したお金にならないかもしれないが、それでもゼロより、ずーっとマシだ。

 

 善は急げと、エレナが作ってくれた装備に着替えて剣を担ぐと、さっそくポルユスに向かった。


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