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賞金稼ぎと怪物の仮面  作者: 秋山春
第四章 ひとりぼっち
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15話

 


 ガビは、眠そうな門兵の脇を通り抜けて町の中へ入ると、商店通りにある馴染みの食品店へやって来た。


 ウインクしているヒゲ親父の前でナイフとフォークが交差している絵の看板が目印で、ヒゲ親父は若かりし頃の店主とそっくりらしい。


 重い木の扉を開けると、固い音のするベルがカラカラ鳴った。


「こんにちは」


 ガビは太い体を折り曲げて棚をいじくっていた男に声をかけた。


「おおう、いらっしゃい。ちょっと待ってくれな」


 男は膝を支えながらゆっくり立ち上がって、これまたゆっくりガビの方を振り返った。

 

「こりゃお得意さんじゃないか。いらっしゃい、ガビ」


「やあ、ジェイ」


「エレナはどうした? 別の店で買い物か?」ジェイが窓の外を見ていった。


「エレナはいないよ。仕事で遠くに行ってるんだ。だから今日はおれ一人」


 ガビが言うと、ジェイはなるほどなぁという顔をした。


「いつもの詰め合わせでいいか?」


「うん。あ、だけど、いつもより量は減らして欲しいかな。あんまり多いと持って帰れないからさ」


「オーケー。ちょーっと待ってな。あれ、乾燥豆はどこだったかな……」


 ジェイが麻袋にあれこれ食べ物を詰め込んでいる間、ガビは店中をぐるりと見て回った。どれも見慣れた食品ばかりで面白味はない。


 ふとカウンターに目をやると、竹編みのカゴに紫色のじゃがいものような物が四つばかり積まれていた。


「ねぇ、これなぁに?」


「毒芋だ。触るなよ、手が真っ赤に腫れて十日は苦しむハメになるからな」


 ガビは伸ばしかけた腕をさっと引っ込めた。

 しばらくして、ジェイが「できたぞ」とカウンターに食材を詰め込んだ麻袋を置いた。


「いくら?」


「サンズ金貨五枚とクラット銀貨七枚だ」


 カバンからピッタリの額を取り出してカウンターに置き、代わりに麻袋を肩に担ぐ。


「重くないか?」


「うん。平気だよ」


「気をつけて帰れよ」


「ありがとう。ばいばい」


 店を出て、露店の果物やで小さなおやつリンゴをひとつ買ってから帰路についた。


 かんかん照りの太陽に照らされながら、重たい麻袋を抱えて帰るのは辛かった。行きの倍以上の時間がかかったし、全身汗だくで、脱いだ服は雨に濡れたのかというほどぐっしょりだった。


 休憩したあとは、いつも通りの修行を行い、いつもより少し早く布団に入った。


 今日は久しぶりに人と会話したおかげか、昨日までよりずっと気分が良かった。だけど、より一層エレナが恋しくなってしまった。


 ガビは扉につけた傷跡を見た。

 早ければ後十日で帰ってくる……早ければ……


 エレナの言葉を思い出し、ガビは祈るような気持ちで眠りについた。



 この日は朝から曇天模様だった。

 灰色の雲が空の端から端までずっと続いている。


 そして、エレナが旅立ってから今日でちょうど二ヶ月。つまり旅から帰ってくる日だ。


 ガビの願い虚しく、エレナは一ヶ月で帰って来なかった。当然がっくり落ち込みはしたが、何とか気持ちを立て直して今日まで待ったのだ。


 やっとエレナに会える。

 ガビは気持ちが昂ったせいで中々寝付けず、寝不足でかすむ目を擦りながら家を出る羽目になった。

 

 日課を終え、走るように家へ戻ったが、エレナはまだ帰っていなかった。

 

 お昼をまわり、庭で素振りと筋力トレーニングをした。今か今かと林の方を気にしていたが、エレナの姿は見えなかった。


 日が落ちた後、ガビは家の中をあちこちウロウロしながらエレナの帰りを待った。エレナの気配にすぐ気付けるよう最大限に集中を高め待っていた。


 しかし、夜が明けてもエレナが帰ってくる事はなかった。


 予定が少し伸びる事だってあるはずだ。

 ガビは自分にそう言い聞かせて、エレナの帰りを待ち続けた。


 そうして、エレナが帰ってこないまま、さらに一ヶ月が経過した。

 




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