お弁当は餌
今、世の中は令和の大不況の真っ只中。
都会に行けば何とかなる筈と一極集中現象が前倒しで始まっていて、田舎で食い詰めた奴等が都会に詰めかける。
それは大人だけで無く10歳に満たない子供でもだ。
俺はそんな奴等に炊き出しの弁当を配っていた。
田舎から出て来たばかりと思われるのガキのグループが、豪華な弁当を配っている奴等がいる方へ近寄って行くのを見て声を掛ける。
「そっちに行くのは止めとけ」
グループのリーダー格らしい少年が返事を返して来た。
「なんで?」
「良いか、此処で配られてる弁当は全て罠、人を集める為の餌だ」
俺はガキ共が歩み寄ろうとした、俺の左側にいる奴等を指し示し話しを続ける。
「此方の奴等はブラック企業の社員集めをしているんだ。
大不況でも悪名が知れ渡って、社員を確保出来ない札付きのブラック企業だぞ。
渡された弁当を食い終わると代金を要求されるが、食い詰め者にそんな金なんてある訳無いから働いて返せと会社に連れて行かれ、奴隷並の待遇で働かさせられる」
続けて右側にいる奴等を指し示す。
「此方の奴等は政治団体だ。
弁当を食わせて代金の代わりにデモに参加させる。
お前らもテレビとかで見た事あるだろう? 機動隊の奴等とカチあって頭を叩き割られる奴を、それが弁当を食った奴の末路なんだ」
「子供でも?」
リーダーの後ろから小柄な女の子が聞いて来た。
「あぁ、政治団体の方は兎も角、ブラック企業の方は大人も子供も関係無い」
「そうなんだ教えてくれてありがとう」
「チョット待て、情報料を寄越せ」
「え……」
絶句するガキ共を俺の仲間たちが捕まえる。
俺たちは人身売買を糧にしている悪い大人。
って言っても、周りにマトモな大人が1人でもいれば都会に出てくる事なんて無かった奴や、いなくても向上心がある奴なんかを監禁して教育って名の洗脳を行い、大不況でも集まりが悪い3Kの仕事に付かせて斡旋料を頂いている。
公務員の軍人や警察官、民間なら建設労働者や看護師に介護職の職員などにだ。
軍や警察にもそういうガキを送り込んでいるんで俺たちはお目こぼししてもらえている、だから捕まらず堂々とガキ集めができるって訳。
まぁガキの中にはそれでも箸にも棒にも掛からない奴がいるから、そういう奴は子供と同衾したいって言う金持ちの爺や婆に売り払う。
大きい声じゃ言えないが、役所や民間会社から受け取る斡旋料より此方の方が実入りは良いんだよ。