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第六十七話 ダンジョンからの帰還

「もはや予備の防具じゃないな」

「全くだ。この冥竜の革鎧の防御力は凄まじいな」


 俺は“鹿王の角”でパワーアップした“トライデントディアの革鎧”改め“鹿王の革鎧”を装着し、シェリルは“冥竜の革鎧”を着ている。


 ちなみに隠れ家から出た時には邪竜がそのまま転がっていたのでキッチリ回収しておいた。邪竜は死んでも呪いや瘴気を放っており、下手な扱いをすれば危ない物らしい。ただ、月の雫などで解呪は可能な物にはなっているし、俺達の装備で防ぐことは可能だ。


 そして俺達は久しぶりに皆でダンジョンを攻略中だった。七十九階は邪竜以外の魔物がいないようだったので、早々に八十階の探索を行っている。


 八十階は控えめに言っても地獄だ。


 出てくる竜達は複数の属性持ちなのだ。水・風・雷を操る嵐竜。火・地を操る火山竜。火・氷を操る氷炎竜など様々な竜達がいた。


 どの竜も簡単ではなかったが、シェリルも全力を出せ、邪竜に勝った自信と全員が揃った安心感からか、士気が高く順調に進んで行く。


「今日はここまでにしておくか」


 ある程度進んだ所で隠れ家へと戻る。神域となった隠れ家は入るだけで空気が違うように感じられた。そして部屋に戻るとタマモが酒を飲んで寛いでいた。


「また飲んでいるのか」

「当たり前じゃ。あの酒造の大樽は最高じゃ。そして仙桃と月光水を大量に使用したこの酒は至高の一品じゃ。これはもはや神酒じゃぞ。その中でも最高と言って良いぞ」


 物は試しで作った酒をタマモが物凄く気に入ってしまったのだ。何種類か作ったのだが、水は月光水・果樹森林の川の水・神聖杯の水の順番で味が良くなる。神聖杯の方が川の水より良いと思ったのだが、神域となった時点で川の水も祝福されているらしい。それだとライフツリーがある分川の水の方が質が高くなったとの事だ。


 水以外の素材だと好みが分かれたが、仙桃で作った酒は別格と言える。他にはロイヤルハニーシロップを使ったミードなんかも美味かった。個人的には梅酒が好みだったかな。基本的には果実酒ばかりだが、質の高い酒を大量に手に入るようになった。


 ちなみに大樽いっぱいに水と果物を入れると一升瓶で百本出てくる。この時は俺とタマモだけでなくシェリルも酔っぱらっていたんだと思う。調子に乗って何度も何度も色んな種類を作ってしまったので、数千本の酒のストックが出来てしまった。


「まあ美味いから気持ちは分かるけどな」


 そう言いながら俺とシェリルとベルも仙桃酒を一杯頂く。そして少しだけ思った。


「酒もいいけど、これで果実水を作ってもいいよな」


 物は試しと思って通販でジューサーを購入する。そして仙桃と月光水を入れて仙桃のジュースを人数分作った。


「飲んでみようぜ」


 全員で仙桃のジュースを飲んでみる。酒とは違うがこれも飲みやすくてかなり美味い。


「キュキュキュー♪」

「たぬぬー♪」

「ベアベア♪」

「ピヨヨー♪」


 ベル達は元気よくお代わりを要求してきた。やはり酒よりジュースの方が好きなのだろう。ベルはどっちも好きなようだけど、皆で飲める分ジュースの方が楽しいとは感じていそうだな。


「後は酒米が手に入ればな。コーヒーや牛乳。お茶も良いな」

「貴様が気づいているかどうかは知らんが、果樹森林でお茶やコーヒーの匂いがする樹があったぞ。貴様が知っている物と同じかは知らないが」

「マジか!? あれは果物じゃなかったと思うけど」

「ああ。確かに似た匂いがした。森林と言うくらいだから果物以外の樹もあったんじゃないか?」


 探してみよう。もしあったら飲み物が充実するな。酒米と牛乳はまだ無理だろうけど、いつか手に入りそうな気もするから気長に待つことにしよう。


 そして適度に休憩しているとシェリルがタマモに声をかける。


「タマモ殿。そろそろお願いしてもいいか?」

「うむ。構わんぞ」


 シェリルは魔人となった体を慣らすためにタマモに修行を付けてもらっている。俺達もその戦いを見たいので一緒に修練場へと向かう。


 始めはウォーミングアップで適当な魔物と戦っているのだが、それは見事なものだった。今まで呪いで力を封じられていた鬱憤を晴らすような強力な技もあれば、技術で戦う上手さもある。ダンジョンの攻略では念のために後衛にいるがやはりシェリルは強い。


 一つ一つが強力な多種類の属性を同時に操り、相手の動きを操作する。ソウルイーターの鋭さも増しており、簡単に魔物を切り裂いていた。


 そして今はタマモと戦っている。タマモは動かずに俺達の時のようにプレッシャーを放つだけなのだが、シェリルはそんなタマモのプレッシャーを撥ね除けている。


「儂も少し動くぞ」


 タマモが手を動かすと衝撃波がシェリルに向かう。


 するとシェリルの背中には魔力で作られた翼が出現した。直接背中から生えているわけではなく、少し離れた位置で浮いているが大きな翼だった。


 その翼がシェリルを包むように閉じる。多少は飛ばされるが、タマモの衝撃波をかなり防いで見せた。


 その後もシェリルは翼で滑空しながらの戦いなどを見せてくれた。そしてある程度戦ったところで戦いは終了となる。


 戻ってきたシェリルを俺達は出迎える。


「強いな」

「それでも上はいる。慢心したらすぐに後ろから追い越されるしな」


 そう言いながらも、存分に戦えた喜びからか機嫌が良い。


「なら俺も頑張らないとな。今度手合わせしてくれよ」

「ああ全力で戦ってやろう」

「キュキュ」

「たぬ」

「ベア」

「ピヨ」


 ベル達もやる気満々だった。そしてなぜか、俺・コタロウ・リッカ・ムギの四人対シェリル・ベルのペアで戦うことになった。力の差は歴然だがやるしかない。まだ日はあるから頑張ろう。


 そんな感じで俺は毎日楽しい時間を過ごしていた。


 そして数日後、俺達は試練の部屋の扉までたどり着いた。


「どんな魔物が出てくるんだろうか? やっぱり竜なのかな」

「分からんが強い事だけは確かだろう」


 中に入ると予想通り竜がでてきた。名前はエレメントドラゴン。複数の属性を持つ竜だ。火・水・風・土の四大元素以外にも雷・氷・光・闇も持っているようだった。


 エレメントドラゴンの攻撃はシェリルが属性を見極めて有利な属性で迎撃している。後はこちらが数やその他の属性の魔法を駆使して勝利を得た。ドロップアイテムは盾で宝箱からは槍が出てきた。


 “エレメンタルシールド”

 八属性の攻撃に対して強い効果を持つ盾。見かけよりも軽く使い勝手が良い。


 “朧(槍)”

 身体能力・魔力が向上する。また気配や姿を隠すことができ、相手に認識された後も霞がかかったようにハッキリとは見えなくなる。


「槍と盾か。性能は良いんだけどあんまり使わないんだよな」

「売買・交換・ポイント。使わなくても利用手段は多いのだから収納しておけばいい」

「そうだな」


 槍と盾を収納して俺達は扉の前に立つ。ここが最下層ならこの先にダンジョンコアがあるらしい。


「それじゃあ開けるぞ」


 ゆっくりと扉を開けると、そこにはさらに下へと続く階段があった。

 少し残念な気分だ。ダンジョンコアもそうだが、竜以上の魔物か環境が待っているという事だからな。


「竜の巣が最下層では無かったのだな。この先の魔物の予想がつかんな」

「天使や悪魔か?」


 竜以上となるとそれくらいしか思いつかないな。

 俺達は警戒しながら慎重に扉を開けていく。


「…」


 初めに見た時は、のどかな草原で色んな鳥が飛び回っていると思った。しかしよく見るとそれは違う。普通の大きさの鳥もいるが、竜並みの大きさの鳥もそこら中にいる。しかも集団でだ。…可愛らしい雛鳥もいたが、その周りにはバチバチと帯電している鳥や七色の炎をまき散らしている鳥などもいる。


 俺達はそっと引き返して扉を閉めた。


「さあ、魔法陣から帰ろうぜ。この先に用は無いしな」

「賛成だ。竜と変わらない危険度の魔物が多すぎる。竜は単独行動や少数行動だが、奴らは集団行動だ。私達でも厳しいだろうな」

「本音を言えば少し残念だけどな。まあダンジョン制覇が目標じゃないし、無理することも無いもんな」


 それと雛鳥には触りたかったな。大きい雛鳥だったがかなり可愛らしかったからな。

 俺達はもと来た道を引き返して魔方陣から地上へと戻った。


 あー、ようやく終わった気がする。…エルメシア教の問題も落ち着いてくれたかな?

ダンジョンは一旦終了です。ここからは改変前と話が大きく変わってきます。

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