第四十一話 絶望
三人称視点
ジュン達が魔獣と人形と戦っている間。シェリルとベルはキーノに相対していた。
「さあ何をして遊ぼうか?」
「キュキュ!」
「貴様に付き合うつもりはない」
シェリルもベルも果敢にキーノを攻めていく。ベルは闇魔法で放ち、シェリルは大鎌で攻撃を仕掛ける。
キーノは懐から短剣を取り出すとシェリル達の攻撃を捌いて見せた。
「いい攻撃だね♪でもちょっと芸がないよ。こんな攻撃はどうだい?」
キーノは手に持っている短剣を上に投げると傘を取り出す。すると上からは短剣の雨が降り出した。
「俺っちは優しいから彼等は巻き込んでないから安心しなよ」
「キュー!」
ベルは黒い渦を上空に出現させて短剣の雨から自信とシェリルを守る。その間にシェリルは火の槍を作り、キーノ目掛けて投げつける。
「こんな攻撃じゃ俺っちには当たらないぜ」
余裕の表情のキーノだが、火の槍は突如分裂した。
「おお!?」
驚きながらも躱すキーノ。だが目の前にはベルが迫っている。
「キュー!!」
ベルの魔法がキーノを飲み込んだ。
「残念♡」
「ぐぁ!?」
何故かキーノはシェリルの後ろにいた。そして手に持っているクラブで殴り飛ばしていた。
ベルは訳が分からず驚愕の表情を浮かべていた。
「貴様何をした」
シェリルは体を起こしてキーノを睨みつける。
「俺っちは優しいから答えちゃうよ♪短剣を上に投げた時二人とも俺っちから視線を逸らしちゃったでしょ。その時に人形とチェンジしちゃったんだよね♪自信作の人形だったんだよ。気が付かなかったでしょ」
シェリルとベルを相手にしてもキーノには余裕があった。まだまだそこが見えていない。その状況に少なからずシェリル達は焦っていた。
「何者なんだ貴様は」
つい口にしてしまった言葉だがキーノは機嫌よく答えてくれる。
「俺っちかい?俺っちは選ばれた特別な存在だよ。そこら辺の人間や魔物とは次元が違う。ちょっと仕事を頼まれたから来たんだけどね。こんな出会いが待っているなんて思っていなかったぜ。だから俺っちにやられることも仕方がないぜ。むしろアンタらは俺っちを驚かせるくらいだから誇っていいんだぜ」
そう言ってどこからかクラッカーを取り出して鳴らしてみせたり、紙吹雪を降らせている。
「キュ!」
ベルは分身してキーノを攪乱させようとする。
「お、いいね。それなら俺っちも」
しかしキーノも分身して散らばってしまう。
「さ・ら・に」
キーノはぬいぐるみを取り出して地面に置いた。するとぬいぐるみたちは牙をむきだしにして、シェリル達に襲い掛かる。
「ち」
シェリルは迫ってくるぬいぐるみを大鎌で切り裂いた。
すると「ボンッ」という破裂音と共に爆発したのだった。
「アハハハハ。言い忘れていたけどその子達はちょっとの衝撃で爆発しちゃうよ♪」
笑いながら話すキーノ。シェリル達は距離を取りながら遠距離で爆発させていくが、爆発の威力は高く無傷とはいかなかった。
「二人ともいい感じの表情だねぇ♡ 俺っち興奮してきちゃったよ♪」
「変態が。その口を閉じてろ耳障りだ」
「キュ」
「つれないねぇ。どうせ死ぬんだから楽しもうぜ」
この時点でシェリルもベルも覚悟を決めていた。
キーノは自分達より強い。このままでは全滅してしまう。だからこそ自分達を犠牲にしても倒さなければいけないと。
「…ベル。私がアイツの動きを止める。止めは任せるぞ」
ベルはシェリルの覚悟を感じ取っていた。そして大きく頷いた。
「キュ!」
「頼んだぞ」
ベルは確実にキーノを仕留めるために魔力を練り上げる。
これにはさすがのキーノからも笑みが消えた。
「俺っちとしては面白くないねぇ。それ」
キーノは分身と共にベルへ向かう。だがシェリルがそれを阻む。
「アンタも強いけど、一人で俺っちを相手にするのは力不足だよ」
「黙っていろ」
シェリルは大鎌から鉄扇に持ち替えていた。するとキーノの分身達の動きは止まり本体に襲い掛かる。
「はぁ!?何をした」
「黙っていろと言っただろ」
キーノは分身を消してシェリルにクラブで攻撃を仕掛ける。だがシェリルはクラブの一撃を逸らしてキーノを投げ飛ばす。
「くそ!」
体勢を立て直すころにはシェリルの魔法がキーノを襲う。
「その手の攻撃は無駄なんだよ」
フラフープを再び取り出す。だが、シェリルは予想していたようで、フラフープに向けて投擲用の短剣を何本か投げつけていた。その内の一本がフラフープに刺さる。するとフラフープの吸引が無くなり魔法はキーノに当たる。
「この程度」
キーノには大して効いていない。だがシェリルは距離を詰める。
「ウザイんだよ!!」
キーノは短剣を何本も投げつける。その短剣はシェリルの投げた短剣とは違い、禍々しい気を放っていた。短剣がシェリルに刺さるとキーノは笑う。
「アハハハ。早く処置しないと死ぬよアンタ。その短剣で傷ができると血が止まらなくなるんだぜ」
一本二本と刺さっていくが、シェリルは表情を変えずにキーノに近づいていく。
「何だよ倒れろよ!」
クラブで殴りつけるがシェリルは踏みとどまる。そして残った魔力でキーノの四肢を凍らせた。
「こんな物!」
「頼んだぞ」
シェリルは倒れこんでしまう。だがシェリルはキーノの動きを止める事に成功していた。そしてベルがシェリルの思いを引き継いでキーノに闇魔法を使った。
その魔法は異常なものだった。ベルの後ろに巨大な門が出現したのだ。その門が開くが奥には何も見えない。そんな何も無い所から黒い触手が現れてキーノを捕まえる。
「何だこれは!?離せ離せ離せ離せ!!」
キーノはもがくがビクともしない。そして徐々に叫びは悲鳴に変わる。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
表情が崩れてもがき苦しみ始める。そんな悲鳴を上げたままキーノは門の中に引っ張られる。そして門が閉じて消えてしまう。
「キュ~」
ベルは魔力をかなり消費したのかぐったりだった。だがシェリルの傷を治そうとシェリルの方へと走って行く。シェリルはベルがキーノを倒したところを見ており、駆け出してくるベルに微笑んでいた。
「ブラボー! 感動ものだったよ♪」
そんな中拍手と共にキーノが現れた。
シェリルもベルも固まってしまう。
「バカな」
シェリルの呟きにニヤリと笑う。
「俺っちが人形と交代しないように二人ともよく見ていたもんな。でもな俺っちは幻魔法が得意なんだよ。しっかり見ていたから簡単だったぜ。それに都合のいい夢は誰でも見たいもんな♪」
ピンピンしているキーノの姿にシェリルもベルも心が折れかけた。
「キャハハハハ。ねえ今どんな気持ち?勝ったと思った?思っちゃったよね。バカだな。俺っちは選ばれた存在なんだよ。アンタらが命を賭けたところで勝てるはずがないじゃん♪」
二人をバカにするかのように大笑いする。そして二人を見て口を開く。
「さあ楽しませてくれたからご褒美を上げないとね。絶望をくれてやるよ」
キーノが二人に向けて魔法を放った。
「あああああ!?」
「キュキュキュー!?」
二人は苦悶の表情を浮かべて苦しみだす。
「聞こえないだろうけど説明してあげるよ。俺っちって優しいな。…その技はその人にとっての一番の悪夢を見せてくれよ。まあ夢だからいずれ覚めるから安心していいぜ。ただ目を覚ました時には二人の目の前には死体が三つ並んでいるけどな」
そう言ってキーノは恍惚と歪んだ笑みを浮かべる。
「ああ。どんな死体にしたら二人は喜んでくれるかな。首を並べようかな?それとも死体を三つ縫い合わせようかな?ああどうしよう。俺っち考えただけで興奮しちまうよ」
キーノが喜んでいると、周囲から大きなカーテンが現れて下に落ちた。
「ありゃ。俺っちの“マジカルカーテン”が壊されていたか」
カーテンが完全に下に落ちるとリング上を見ているジュン達の姿がそこにはあった。キーノはそれを見てどんな風に遊ぼうか考え始めた。




