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第四話 森から脱出

 翌日。目が覚めると同じタイミングでリスも起き出した。


 手が勝手に動いてリスの頭を撫でてしまう。リスの方も嫌じゃないようでされるがままだ。目覚めてすぐに可愛い動物がいるのは癒される。


 だけどずっとこうしている訳にはいかないので、俺はキッチンに向かいトースト・目玉焼き・ベーコン・コーンポタージュ・サラダを用意した。


 そしてテーブルに二人分置くとリスもすぐに席に着く。そこで俺はあることに気がついた。


「すまん。昨日平然と弁当やすき焼き食っていたけど、食べられない物はあるか?」


 俺の質問にリスは首を横に振り、良い笑顔を向けてきた。まるで「何でも食べます」と言っているようだった。


 それならばと思って、俺達は朝食を摂り始める。飲み物も数種類用意したが、リスは何の躊躇いもなく飲んでいた。


 俺はそんなリスを眺めながら質問してみた。


「ところでお前は出口を知っているか?」

「キュキュ」


 リスは頷き胸を張っている。


「本当か。案内とかしてもらえるか?」

「キュ」


 頼んでみるとリスはドンと胸を叩いてくれた。


「頼りになるな。別れるのは寂しいし、このままずっと一緒にいてほしくなるな」


 何となく出た言葉だが本心だ。可愛いし強いし楽しいし、仲間にいたら最高だと思う。


「キュー♪」

「へ?」


 意外にもリスは構わないと言うように俺に体を擦りつけてきた。


「いいのか?」

「キュー」


 それなら何か名前でもつけないとな。


「…それじゃあ、これからは“ベル”と呼んでもいいか?いつまでもお前じゃ変だしな」

「キュー♪」


 元気よく返事が返ってくるとベルが一瞬光った。


「何だ今の?」


 名前を付けた瞬間に光ったから、契約が成立したとかか?

 ステータスプレートを開いてみると、“従魔”と書かれている欄が増え、俺の能力には“従魔召喚”と“従魔召還”が増えていた。“従魔”の欄にはベルの名前があった。


「ベルのステータスが見れるみたいだな。…なあベル。確認してもいいか?」

「キュー」


 許可が出たのでベルのステータスを確認する。


 名前:ベル

 種族:デビルスクワール

 主人:ジュン

 魔法:闇 植物

 特殊:隠形 探知 解錠 罠解除 罠作成 分身 食いだめ 悪食


 あ、これは強いわ。少なくとも森の中では勝てる気がしない。


「ベル。強いんだな。頼りにさせてもらうぞ」

「キュー」


 再び胸をドンと叩く。そして朝食を終えた俺とベルは森へと出かける。


「そうだ。魔物がいたら俺に戦わせてくれ。危なくなりそうなら助けてくれるとありがたいんだけど」


 ベルはコクリと頷いた。そして言葉通りにベルは魔物を見つけては案内してくれる。俺も魔力感知を頑張っているのだが、ベルの探知の方が全然上のようだった。


「今度はゴブリンか。一体だし“狂”を試してみるか」


 俺は針を装備してゴブリンに向かって走り出す。何か所か刺すポイントが見えるので針を作ってゴブリンに向けて飛ばしてみた。


「ギャ!?」


 針は何とか目標の場所へと刺さってくれた。ゴブリンは上手く動けないのかその場で転倒する。すかさず近づいて、残りの箇所に針を刺した。


「…」


 ゴブリンは事切れたかのように動かなくなった。試しに収納してみると問題なく収納できたので死んだのだろう。

 俺は大きく深呼吸した。


「これは集中力がいるな。それと飛ばすよりは直接刺した方が手ごたえがあるな。体術も鍛えないと針で戦うのは厳しいかもな」


 その後も弱い魔物を倒しながら魔法や武術を鍛えていった。途中危なくなることが何度もあったが、その度にベルが颯爽と助けてくれた。やはり自分より強い仲間がいるのはありがたい。


「しかし、あの鳥は上手く倒せないな」


 森の中の魔物で丸々太った鳥がいるのだが、そいつだけが上手く倒せないのだ。近づくとすぐに逃げる上にかなり素早い。俺でも攻撃は当たるのだが一撃でも当てると木っ端微塵になってしまうのだ。かといって、針を飛ばしても避けられてしまう。


「またいたな」

「キュ」


 正面の方で地面にいる虫を食べている最中だ。俺はどうにか出来ないかと頭を悩ませる。


「そうだ」


 俺は一つの考えが閃いた。

 まずは風魔法で動きを制限する。


「ポ?」


 気が付いた鳥は逃げようとするが動ける範囲を限られる。それに合わせて俺は水魔法を放った。水魔法は鳥を傷つけることなく包み込んだ。鳥は中で暴れるがそのうち動かなくなる。


「やったか?」


 いつでも動けるようにゆっくりと近づいて触ってみる。動くことが無かったのでそのまま収納した。


 “微塵鳥”

 軽い攻撃で四散するほど弱い鳥。ただし肉の味は絶品。口の中で肉の味が弾けます。


「凄い名前だな。つーか何でこんな進化を遂げたんだよ。明らかに悪い方向に進化してるじゃん」


 疑問があるがさっさと解体する。鶏肉の量は三キロだが一キロ三万ポイントだった。


「ワニより高え!?そんなに希少な肉なのか」

 

 後で焼いて食べてみようと心に決めた。そして見つけたら必ず確保しよう。そう心に誓いながら進んでいく。


 道中ベルと魔物を倒していると段々と木々の数が少なくなってきた。そして正面から光に照らされる。


「出られたか」

「キュー」


 何だか開放感がある。体をほぐしながら周囲を確認する。森を出たが、そこでも草ばかりの緑の景色だ。


「草以外何も見えないな。人に会うのはもう少し先になりそうだな。…ベルは人がいる村とか街の居場所は知っていたりするのか?」

「キュキュ~」


 ベルは首を横に振る。流石に森の外の事については知らないようだ。


「まあいいか。少し隠れ家に戻って休むか?」

「キュー♪」

 

 休憩がてら隠れ家に戻る。ベルにはおやつとしてクッキーを出しておいた。俺はその間に手に入れた素材をチェックして街で売る用とポイント変換用に仕分けする。


「目新しい物は無いな。“ダイナソークロコダイル”の素材が抜きんでて“美味死草”と“雪月花”がそれに続くな。肉は微塵鳥以外だとオーク・フォレストウルフ・牙ウサギか。とりあえずこれらは売るように持っておくかな」

「キュキュ」


 眺めていると肩に乗ってきたベルが俺の口にクッキーを一枚突っ込んできた。俺はそのままクッキーを頂く。


「美味いな。俺も少し休むとするか」

「キュ」


 コクリと頷くベルと一緒に一服する。

 落ち着いてみると俺は急いでいたのかもしれないと思ってしまった。別に今日明日で街を見つける必要はない。衣食住に一切の問題がないのだからゆっくりで構わないだろう。


「ベル。今日はもう休むことにするか」

「キュー♪」


 ベルはニッコリ笑って頷いた。そんなベルの頭に自然と手が伸びる。


「キュー///」

「さて、それなら温泉にでも入ってくるか」


 二人で今日も温泉に向かう。ベルも浴槽に入る前に俺と同じように体を洗い始める。そして昨日と同じく泡を立てて水飛沫を飛ばしている。


「今日はサウナを体験してみるか。最初は辛いかもしれないが慣れると良いもんだぞ」

「キュ?」


 ベルと一緒にサウナに入る。ベルは暑そうにしていたが俺と一緒に入り続けている。

 十分ほどしてサウナから出て水風呂に浸かる。


「ふー」

「キュー」


 一分ほどで上がり今度は外気浴だ。久しぶりだが気持ちがいい。…今更だがベルは俺と同じ時間で良かったのだろうか?


「キュー///」


 気持ちよさそうだから大丈夫か。


「これを後二回やるぞ」

「キュー♪」


 今日はサウナをベルと堪能した。暑さの後の水風呂も気に入ったらしい。そして昨日と同じくドライヤーでベルを乾かす。


「今日もありがとうな。また明日からもよろしく頼むぞ」

「キュキュー」


 こうして夜も更けていく。俺達はぐっすりと休んで明日に備えることにした。

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