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第二十話 悪縁も縁の内

 翌朝ギルド前に向かうと、大勢の冒険者がそこにはいた。


「これだけ揃うと壮観だな」

「キュキュ」

「たぬたぬ」


 ベルもコタロウも人の数に目を丸くしていた。そして、ゴブリンといえども上位種や変異種の集団が現れると、ここまで大事になるのだなと思った。


 その場で待っているとすぐに時間になった。するとディランさんの声が響き渡る。


「皆聞こえるか。俺は今回の討伐でリーダーをする"歴戦の斧"のディランだ」


 先程までは騒がしかったのだが、ディランさんが喋り出すと無駄話をする者はいなくなる。


「今回のゴブリン討伐では迅速な動きが求められる。今のところ近隣の村には被害が出ていないないが時間の問題だ。手柄を立てようと思わず、互いに連携して動くことを第一にしろ。それでは馬車に乗り込め。近くの職員に名前を告げて馬車の確認をしろ」


 集まった冒険者達は一斉に動き出した。俺も近くの職員に尋ねて、指定された馬車を見る。

 そして愕然としてしまった。俺の視線の先には談笑して馬車に乗り込む"光の剣"の姿があったのだ。この前から会うことが多すぎる気がする。


「拒否も無理だろうしな」


 ため息をつきながら馬車に乗る。“光の剣”の近くは嫌なので奥の席に腰を掛ける。


 そして馬車が動き始めた。この前も思ったが結構尻が痛くなる。なのでクッションを取り出して尻に敷くことにした。そのまま馬車の中から景色を眺める。そうしている、“光の剣”から声が上がった。シャイニーが馬車の中で立ち上がり演説のように話し始める。


「皆。突然で申し訳ないが僕の話を聞いて欲しい」


 周囲の冒険者達の視線がシャイニーに集まる中、俺はベルとコタロウに夢中だった。馬車の中から景色を見て騒ぐ姿に癒される。それでも話は耳に入ってくる。


「僕は“光の剣”というパーティーでリーダーをしているシャイニーだ。今日は君達に大事な提案があるんだ」

(やっぱり本物だった)

(あれだよな。ワイバーンを倒したっていう)

(カッコいいわ)

(そうよね。三人共超イケメンじゃん)


 性格は微妙だけどな。

 俺は心の中でそう呟いた。


「僕は“光の剣”をただのパーティーで終わらせたくないんだ。もっと大規模なクランとして活動して人々の平和を守っていきたい。それが女神エルメシア様の加護を受けた僕の役割だと思っている」


 聞きたくない名前が出てきた。そいつのせいで人生を狂わせられた者がいる事を分かっているのだろうか?俺はこの手で殺した男の叫びが頭をよぎる。


「キュ」


 先程までとは逆にベルが俺の頭に乗って撫でまわしてくる。それに触発されてコタロウも同じ様にしてくる。……本当に俺にはもったいないくらいの相棒だな。


「もちろん君達にエルメシア教に入れとは言わない。入ってくれれば嬉しいけどね。それよりも僕と共に人の為に戦って欲しいんだ。君達にこの話をしたのは君達が優秀だからだ。僕達の馬車はDランクしか乗っていないけど、Dランクの中でも選ばれた者達だと思っている」


 本当に勝手な想像なんじゃないか?まあリップサービスかな。


「どうだろうか?もし僕たちのクランに入ってくれる者がいれば自己紹介をして欲しい。勿論最初は僕たちが自己紹介をさせてもらう。それも判断材料にして欲しいんだ。皆が僕に賛同してくれる事を心から願う」


 そして髪をサラっとかき上げて自己紹介を始めた。…その動作いるか?


「僕はシャイニー。“光の剣”のリーダーだ。武器は剣を使う。そして魔法は火・水・風・土・雷・氷・光の七種類だ。アイテムボックスと再生(強)の能力もある。そして…」


 シャイニーの隣に光が集まり人の姿が形成されていく。


「初めまして皆さま。シャイニー様の従魔のアンリと申します。お見知りおきを」

「アンリは光の上位精霊で僕にとって最高の従魔さ。その辺の魔物とは比べ物にならないほど優秀なんだよ」


 その言葉と同時に視線を感じた。

 だが気になどしない。最高の従魔など俺にはいらん。大切な仲間と家族がいればいい。


「次は俺だな。俺はアークフット。“光の剣”の副リーダーだ。槍を使った戦いが得意だ。魔法は火・風・雷・闇だ。俺も従魔はいるがフライングレオだからな。ここでは出せねえんだ。機会があったら見せてやるよ」

「私はエリック。“光の剣”では参謀のような役割をしております。武器はチャクラムという投擲武器です。魔法は水・風・土・光です。遠距離や回復を担当しています」


 リーダー・副リーダー・参謀ね。役職ってそんなに大事なのかと思ってしまう。


「これで僕達の紹介は終わりだ。ちなみにここだけの話だけど、教会は今後世界が荒れると予想している。そこの君、この辺りでゴブリンの集団が現れる事はあったかい?」


 話を振られた冒険者は少し考えてから口を開いた。


「無かったと思う」


 返答を聞いたシャイニーは予想通りの答えが返ってきたとばかりに饒舌になる。


「そう、今までは無かったんだよ。でも今回は起きてしまった。そしてゴブリンで終わらないかもしれない。群れを成す魔物は沢山いる。それこそオーガやデーモンが現れるかもしれない。……でも安心して欲しい、そのためにエルメシア様は僕や教会の信徒に加護を与えているんだと思う。皆でこの難局を乗り切ろうじゃないか」


 この言葉で周りの冒険者達の熱が上がっていくが、俺は逆に冷めていく。

 正直詐欺に近い物があると思っている。皆の不安を煽って冷静な判断をさせないようにさせ、権威のある物の名前を出して自分の言葉の信憑性を高めている。


 普段なら歯牙にもかけないだろうが、今は大規模討伐という事で少なからず不安や緊張がある状態だ。さらに閉鎖的な空間の中で、“光の剣”に好意的な者もいる。そいつらの声が大きいから同調してしまっている感じがする。 


 そう思っていると、冒険者達はすぐに自己紹介を開始して、自分を売り込むようなアピール合戦が始まる。

 

 多少は予想はしていたが、そんなに入りたいものかね。


 だが聞いていて思ったことがある。魔法は一つか二つの者が案外多い。そして三つ以上持つのは数人程度だ。また、火・水・風・土が殆どだ。後は雷・氷・闇・光があったりもするが他の種類の魔法は出てこない。


 案外勉強になるなと思っていると、隣の女性が自己紹介を始める。外見はスタイルも良い可愛い系の女性だ。普通なら見惚れそうな外見なのだが、「十点」「論外」「はー、Dランクじゃ碌な男いないわね」とか言っていた。乗り込んだ時に俺を見た時も「弱小従魔。大外れね」とか言っていたから関わりたくない。


「え~と。私はクミンっていいますぅ~。武器は杖なのでぇ戦うのは苦手ですけどぉ、水・風・土・それに聖魔法を使えるんですよ。防御と回復が得意でぇす♡あ、私は是非入団したいでぇす♡」


 聖魔法という言葉で“光の剣”からも賛辞の拍手が送られた。…コタロウだって聖魔法使えるんだがな。つーか、コイツの話し方は俺はダメだ。聞いているだけでイライラする。


「クミンさん。素晴らしいよ。是非僕たちの仲間になって欲しい」

「ありがとうございます。それならクミンって呼び捨てにしてもかまいませんよ。私達は仲間なんですもんね♡」


 何人かデレている男がいるがコイツは止めておいた方が良いと言ってやりたい。

 ため息をついて頭を掻く。次はどんな奴が自己紹介するのかと思っていたが、暫くは無言が続いていた。


「おい。お前の番だぞ!さっさと自己紹介をしろ!」


 アークフットと名乗った男が俺に対して命令してくる。


「え?クランに入る者が自己紹介するんだろ。俺はクランに入る気が無いからな。俺を無視してそちらでクランの話を進めてくれ」


 俺の言葉に周りは唖然としている。


「はぁ!?お前バカじゃねえのか。シャイニーの誘いを断るつもりか」

「そこは自由にさせてくれ。お前達がクランを作るのは別に構わない事だが、俺は俺でやる事があるからな」


 俺の言葉にシャイニーが前に出てくる。


「その従魔。…君はジュンだよね。少し噂になっているから知っているよ。従魔を使って街の人々を誑かしているそうだね。恥ずかしくないのかい?冒険者としてあるまじき行為だよ」


 …俺ここまで言われる理由がないよな。最初から喧嘩腰で来られると俺もカチンと来てしまう。少しくらい言い返してやろうか。


「シャイニーだよね。見た事があるから知っているよ。噂だけで人を判断するようだね。恥ずかしくないのかい?人の上に立つ者としてあるまじき行為だよ」

「な!?」


 今まで周りがイエスマンだけだったのだろう。同じように言い返されただけで表情が崩れている。


「テメェ。弱小従魔なんかを連れている奴がシャイニーをバカにすんじゃねえよ!!」

「そうだね。僕は心配してあげているんだよ。君の従魔が今回の討伐で皆の足を引っ張ったらどうするんだい?危ない状況になっても助けてあげられないよ」

「お前達こそ俺を無視すればいいだけなのに、ちっぽけなプライドを守るために突っかかってくるなよ。状況を考えろよ。誰もがお前達の思い通りに動くわけがないだろ」


 段々とイライラしてくるぞ。


「全く。君みたいな人が同じ馬車とはついていないな」

「同感だ。そこだけは気が合うな」


 そう言ってシャイニー達は俺から離れてくれた。ようやく静かになるな。それとほぼ同時に馬車が止まりギルド職員が中に入ってくる。


「一度昼休憩を取ります。馬も休ませますので二時間後に出発いたします」


 二時間か。結構時間があるな。


「皆下りよう。広いところでゆっくり栄養補給だ。食べられるときに食べるのも冒険者の務めだよ」


 シャイニーに続いてどんどん人が降りていく。

 降りていく人たちの眼は俺を見下していた気がする。


「まあいいか。俺達も昼飯を食べるか」


 外に出てアイツ等に出くわすよりは馬車で食べた方が良いと思い昼食を取り出す。


「ほら食べな」

「キュ♪」

「たぬ♪」


 今日の昼食はカツサンドとフルーツサンドだ。カツも美味いがソースの染み込んだパンも結構好きだ。フルーツサンドも色々種類があるので、中々楽しめる。

 ベルとコタロウもソースやクリームを口に付けながら美味そうに食べている。


 和やかな時間だったが、外に出た連中が戻り始める。


「君達は何を食べていたんだい?」


 戻ってきての第一声がこれだ。

 話すのも面倒だが少しは付き合っておくか。


「パンと肉と果物だな」


「へぇー、黒パンに干し肉にドライフルーツか。よくある保存食だね」


 余計な言葉が付いているな。役に立たない変換機能付きか。

 俺達が食べたのは保存食ではないんだがな。


「僕はアイテムボックスを持っているからね。新鮮な肉や野菜に温かいスープを皆で食べたんだよ」


 何が言いたいんだろうな。そもそも、何日も旅をしているならともかく、出発一日目の昼だぞまだ。普通の飯を食べていると思わないのだろうか?まあ。アイテムボックスを持っているのは凄いんだろうけど。


「よければ食べるかい?」

「遠慮しておく」

「本当は食べたいんじゃないんですかぁ?我慢はよくないですよぉ。意地を張らずにシャイニー様たちの言う通りにすればぁきっと成功につながりますよぉ」


 この喋り方どうにかしてくれないかな。


 これがガンツさんに食べるかと聞かれたら喜んで食べるけどな。さっきの今でお前達から頂くわけないだろう。食べたばっかりだし。

 いや、食べると言ったらどんな反応したんだろ。ちょっと気になる。…でも面倒だから止めておこう。


「食べたばかりなのだから、欲しいわけないだろ」

「強がってんな。そんな貧相な飯じゃ力がでないだろ。足手まといも連れているんだから、体力だけでも付けた方がいいんじゃねぇのか」

「足手まとい?誰の事だ?」

「そのリスと狸に決まってだろ。街での人気稼ぎのために弱小従魔を連れるなんて大変だよな。処分するなら俺の従魔の餌にしてやるぜ。特別に大銀貨一枚でも出してやろうか」


 アークフットがニヤニヤと俺を見てくる。他の連中もクスクスと笑っている。

 

「見る目がないな。ベルもコタロウも優秀だ。処分なんてするわけないだろ。人の事を気にする前に自分の事に集中しておけよ。他人の従魔の存在で集中できなくなる二流以下の冒険者なんだからよ」


 売り言葉に買い言葉。俺も“光の剣”に対してイライラが募ってくる。


「はぁ!?ハッキリ言うけど迷惑なんだよ。お前みたいなのが人気がある理由が分かんねぇよ!」


 この程度で怒りだすなんて小さい奴だ。クランの副リーダーには絶対向いていないだろう。


「塩漬け依頼を受けたり、納品素材の質が高いからじゃないのか。素材は高品質以上で収めているからな。それと街の人達との触れ合いは大事にしているぜ」

「弱い魔物を無傷で倒して自慢すんなよ。強い魔物を倒してこその冒険者だろ」

「強さだけ求めるなら武道大会にでも行ってきたらどうだ。冒険者ならむしろ未開の地で新発見とかの方が凄いと思うぞ」


 そのままアークフットと睨み合う。

 ベルと見つめ合いになった時とは違い不快感が半端ない。 


「おい、ここで問題が起きていると聞いたが本当か?」


 睨み合いの途中で一人の男が入ってきた。それは今回の討伐のリーダーを務めるディランさんだった。


「ディランさんですか。いえ問題など起きていませんよ。ただ、今回の討伐に相応しくない者が紛れ込んでいましたので」


 睨み合っている俺とアークフットの代わりにシャイニーが答える。シャイニーはさっきまでとは違う態度でディランさんに接している。


「…今回の討伐のメンバーはギルドが念入りに選抜したんだが、相応しくないのはどいつだ?」

「ジュンですよ。従魔も戦闘に向いているとは言えませんし、実力には疑問があります」


 シャイニーの言葉を聞き俺を一度見てくる。


「ジュンは売った素材の中にCランクの素材も混じっていた。通常の依頼においても品質が高い事が評価されている。品質に関しては高ランクの冒険者より上だぞ」


 特訓中に倒した魔物の中に何体か混ざっていたんだよな。セルシオさんに提出したら無茶するなと怒られたのはいい思い出だ。


「ですが従魔は足手まといでは?途中で魔物に食べられる可能性もありますし」

「魔物を侮る考えの方が危険だ。スライム相手でも油断して亡くなる冒険者はいるんだぞ。この従魔達の能力は知らんが、リス系の魔物は怒らせると恐ろしく狡猾で厄介だぞ。格上の魔物や高ランクの冒険者が犠牲になる事もある。狸も頭が良く変化を活かして惑わしてくる。小さいからと言って弱いと思うな、力の大小だけが強さじゃない。それに食われたら主人の責任だ。俺達が気にすることではないな」

「…それでも僕はコイツの実力に疑問しかありません」

「それならお前達の担当場所は離しておこう」


 ありがとうございます。是非そうしてください。


「それでは不十分です。コイツと戦わせてください。それで僕が判断します」

「討伐前に冒険者同士で戦うとかバカかお前は。それにジュンはDランク、お前らもDランクだ。同じランク同士なのに上のつもりなのか」

「当たり前だろ。俺達は普通の冒険者とは覚悟も実績も違う」


 段々とディランさんも苛立ってくるのが分かる。

 話すだけ無駄だと思ってきたのか、俺の方に目を向ける。


「おいジュン。お前は何か言いたいことはあるか?」

「馬車を変えて欲しい。今の状況でコイツ等と同じ馬車は難しい」

「それがいいな。空いている馬車を探してくる。ジュンは馬車から降りろ」


 ディランさんに続いて馬車を降りるとシャイニー達もなぜか降りてきた。

 勘弁してくれ。


「ディランさん。やはり納得がいきません。戦わせてくれないなら“光の剣”はこの依頼から手を引いて、独自で行動させてもらいます。この馬車の冒険者はジュン以外は“光の剣”の入団希望者ですからね」


 変な事を言い放ちやがった。それでも全員自信満々だ。ここまでくると、洗脳や催眠の能力を持っているのではないかと疑ってしまうぞ。

 

 大きい声で喋ったため、まだ休憩中の周りの冒険者たちから注目を集めている。


「じゃあ帰れ。緊急依頼を私的な理由で放り出すから降格もしくは除名と違約金は発生するがな。俺個人としては緊急依頼中に小さい事を気にするお前達の方が邪魔だ」

「な!?」


 拒絶の言葉にシャイニー達は驚きを隠せていない。

 教会はよくコイツ等を期待の新人として売り出そうとしたな。


「お待ちなさい」


 ギルドの制服を着た女性が現れた。その女性を見た瞬間にシャイニーの表情に余裕ができたのが目に入った。


「ネネか、何のようだ」

「ディランさん。討伐隊のリーダーといえどそんな勝手は許しませんよ」

「俺は許可しただけだ。手を引くと言い出したのは“光の剣”だ。中途半端な奴がいる方が危険だろうが」

「彼らはワイバーンを倒した実績がある実力者です。戦って納得するなら、彼らの意見を尊重しましょう」

「お前もバカか。今この時に冒険者同士で戦うメリットがない。冒険者同士で争おうとする奴の方がいらんのだ」

「ディランさん。Bランクの魔物を倒した方々とDランクに上がったばかりの冒険者では前者の方が優先されます。“光の剣”が手を引いたら戦力が落ちるのは確実です。ギルド命令として戦ってもらいます」


 この女嫌い。絶対シャイニーと個人的な知り合いだろう。


「それならジュンはBランクのボガードを試験でボコボコにして、Aランクのナイルに一撃入れている。ワイバーンを倒せる人材はここにはたくさんいるが、ナイルに一撃を入れられる人材はBランクでも少ないぞ」


 周りの冒険者から感心したような声が上がった。中には顔見知りのオッサン達の姿もある。


「そんな事は関係ありません!改めてギルドとして命令します。“光の剣”のリーダーであるシャイニーとDランク冒険者ジュンは試合を行いなさい。二人とも異議はありませんね?」

「僕は無いですよ。ネネさんありがとうございます」

「俺はある。メリットが何もない。やるなら俺が勝った場合の条件をつけさせろ」

「は?」


 想像と違う返答されたのか、本気で驚いた表情をしている。

 正直俺はギルドを除名になっても何も困らない。生活には問題ないし、身分証は商業ギルドで作って何か納品すればいいだけだ。


「ちなみに何が望みなんだ?“光の剣”の撤退か?」


 ディランさんの質問に俺は満面の笑みで答えてみた。


「有り金とアイテムが全部欲しい」

「あ、貴方は何バカな事を言っているのですか!!」

「負けると思っているのか?」

「ワイバーン倒しているんですよ。そんなことある訳ないでしょう」

「じゃあどんな条件でもいいじゃん」


 言い返してこないがネネは睨んでくる。


「ジュン。気持ちは分かるがそれは認められない。賭ける物は同等でないと」

「そうか。ちなみに俺が負けて帰ることになると罰則はありますか?」

「こんなケースは無いから何とも言えんが、緊急依頼から逃げた場合はランク降格か除名処分。それと罰金だな。ランクによって罰金額は変わるがDランクでも金貨一枚以上は確実だ」


 罰金百万以上って高すぎないか。かなりの罪になるじぇねえか。


「それなら、俺が勝った場合は俺に金貨三枚を支払え。足りない場合は装備やアイテムを貰うぞ。それからこんな事は御免だから、“光の剣”とネネという職員はディランさんの決定に従ってくれ」

「良いだろう。その条件で戦おうじゃないか」

「シャイニーさん」

「ネネさん、すみません。僕の力不足で巻き込んでしまって。でも勝つので安心して見ててください」

「はい///」


 シャイニーの言葉にネネは頬を赤く染めた。

 コイツ等何やってんだ。


「ジュン。僕からも条件を出させてもらうぞ」

「ダメに決まっているだろ。異議はないんだからな。戦ってやるだけありがたいと思え。それと馬車の中でも思ったけど人の事を呼び捨てにするなよシャイニー」

「な!?」


 表情がどんどん変わっていく。周りには笑顔なのに俺に対して怒った表情ばかりだな。


「君も呼び捨てにしているね。馴れ馴れしいよ。それに勝つ自信があるなら条件はどうでもいいんじゃないか。ああ、負けると思っているのか。それなら仕方がないね」

「勝負に絶対はない。勝つつもりで戦うのは当然だが、負けた時の被害を抑えるのは大事だろ。油断や慢心で人は死ぬんだから、相手に有利な条件をつけさせないのは当然だ」

「はぁ、君と喋るのは飽きたよ。さっさと戦うよ」

「いや、お前から喋り出したんだろ。人のせいにするなよ。そして戦う前に書類を作るからサインしろよ」


 こうして険悪な雰囲気になり俺はシャイニーと戦うことになった。

 …いやー勢いって怖いね。自分の性格が分からなくなってきたよ。

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