第十六話 Dランクへの昇級試験
ついにベルからの許可が出たのでDランクへの昇級試験を受ける事になった。
今はギルドの一室で試験官が来るのを待っている所だ。だが、この時点で俺のやる気は下がっていた。理由は簡単だ。“光の剣”がいたからだ。つーか、アイツ等偉そうにしていたけどEランクだったのかよ。Eランクの昇級試験も面倒だったが今回も面倒そうだ。
俺はため息をつくしかなかった。
「しかしEランクの試験の時もだったけど結構な人数だな。今度は何をするんだか」
周りを見回すと二十人程の冒険者が集まっている。“光の剣”以外にも同じパーティーを組んでいる者もいるようで話をしている人もいる。俺は特にやる事も無いのでベルやコタロウと触れ合いながら待つことにした。
そして部屋の扉が開くと数名の男女が入ってきた。その中の一人は見覚えがあった。"五色の花弁"の一人だったはずだ。
「席に着け。これから昇級試験の説明を始める」
男性が俺達に指示をする。言われるままに全員が席に着く。
「それでは説明する。とは言っても昇級試験は簡単な話だ。グループを組んで賊を討伐する。ただそれだけだ」
「えーと、盗賊の討伐が昇級の条件という事ですか?」
一人の冒険者が手を挙げて発言すると、前に立った男性は頷いた。
「そうだ。だが一つだけ条件がある。それは参加者は必ず一人は仕留める事だ。今回は生け捕りは無しだ」
本来犯罪者は生け捕りにすると、報酬や懸賞金とは別に犯罪奴隷として売買した代金の一部を貰う事ができる。そのため生け捕りにすることも多いのだが、今回は俺達の覚悟を試しているのだろう。仕留めなければいけないらしい。
「今回は二十人の参加者のため五人四チームに分ける。各チームは別々の場所で賊の討伐に当たってもらう。場所は指示するからそこに向かってくれ。それではチームに分かれてもらう」
順番に名前が呼ばれていきチームが作られる。俺のチームは仲の良さそうな二人の女性とおどおどしている男性、それに無表情でガタイの良い男だ。それと試験官として同行してくれるのは前に出て喋っていた男性だ。
「揃ったな。俺はお前達の試験官をするナットだ。よろしく頼む。まあ俺が行うのはお前達が不正をしないかと目的地まで連れて行くことだけだ。助言も手助けもしない。死にそうになった時は助けるが、その時点で試験は不合格になったと思えよ」
鋭い視線で俺達を見つめる。おどおどしている男性は緊張でガチガチだ。
「まずは互いに自己紹介はしておけ。武器と得意の魔法くらいは伝えておいた方が良いぞ」
ナットさんに促されて自己紹介をすることになった。
互いに目を合わせるだけで動かなかったので俺から自己紹介を始める。
「俺はジュン。武器は短剣と棒を使う。魔法は水・風・土だ。前衛でも後衛でも戦える。それとベルとコタロウだ。よろしく頼む」
「キュキュ♪」
「たぬぬ♪」
俺の挨拶に合わせて元気に手を挙げるベルとコタロウだった。
そして俺の挨拶が終わると順番に皆が自己紹介を始めていく。
「私はラズベリーと申します。武器は杖で魔法は水と光です。後衛で支援や回復が得意ですね。よろしくお願いします」
「アタシはラズベリーとパーティーを組んでいるマフィンよ。武器は槍。魔法は火と風よ。前衛の方が得意ね。よろしくね」
仲が良さそうだと思ったが、女性達はパーティーを組んでいたんだな。他の二人は俺と同じソロかな。
「わ、わわ、私はケケ、ケ、ケビンと言います。ぶ、武器は弓で風・氷・闇の魔法が使えます。さ、さ、索敵などが得意です。戦いは後衛の方が良いです。よ、よろしくお願いします」
凄い緊張しているな。いまだにガチガチだ。
「俺はバッグノだ。武器は大剣。火と土の魔法を使う。前衛で暴れるのが得意だ。よろしく頼む」
一通り自己紹介が終わるとナットさんが再び口を開いた。
「それでは試験の場所を説明するぞ。このチームが向かうのは馬車で二日ほどかかる村の近くだ。この中で馬車を操作できるものはいるか?」
ケビンとバッグノが手を挙げる。
「なら二人に馬車を操作してもらう。せっかくだから他の者達も隣にでも座って覚えておけ」
「キュキュ」
「たぬ」
何故か元気よく返事をする二匹だった。
ツボにはまったのかナットさんは笑っていた。
「お前らもコイツ等に負けないように頑張れよ。お前らがDランク試験の主役なんだからな」
「「「はい」」」
仕切り直して話は続く。
「賊の根城に着いたらお前らで考えて行動してもらう。なので今からリーダーを決めてもらうがこれはお前らで決めろ」
俺達は互いの顔を見る。そして初めに口を開いたのはケビンだった。
「わ、私は絶対無理です。緊張で倒れちゃいますよ」
うん。まあケビンは無理だろうな。
「俺も遠慮したい。戦っている途中に全体を見回せる自信はない」
「アタシもよくラズベリーに止められることがあるからな」
「私もマフィン以外の人に上から話すのは…」
そのまま四人は俺を見る。
「…別に構わないけど期待はするなよ。俺もリーダーなんてやることは無かったからな。それと全員を引っ張るような頼もしいリーダーも期待しないでくれよ。バンバン頼らせてもらうからな」
とりあえず俺がリーダーということで決定した。俺が駄々こねても時間が過ぎるだけだから仕方がない。
「キュキュキュ♪」
「たぬたぬ♪」
そしてベル達から拍手をもらう。何かあったのかと他のチームや試験官の視線を集めてしまった。
「ククク」
再び笑いだすナットさん。ベル達の行動がマジでツボらしい。
このままだと話が進まないのでナットさんに声をかける。
「他に話はありますか?」
「あ、ああ。すまないな。お前らにはこの首飾りを付けてもらう」
そう言って簡単な作りの首飾りを渡された。
「これは?」
「それは人を仕留めると色が変わる仕組みだ。最初に言ったように全員一人は仕留めてもらう。首飾りの色が変わらなければ試験は失敗だからな」
便利な道具だなと思いながら首飾りを眺めてみる。
「何か質問はあるか?」
「賊を殺せなかった以外に失敗の条件はありますか?」
「俺が手助けに入る状況になったらアウトだな。それに賊の多くを逃がしてもダメだ」
そうなると逃走経路を塞ぐ必要もあるな。賊の根城によっては面倒だな。
「あとベルとコタロウに手伝ってもらうのはありですか?」
「そいつらなら大丈夫だ。竜や上位精霊ならダメだったがな」
…本当はベルも実力的にはアウトなんだろうな。まあ、伝えておけばベルは程々にしてくれるだろう。
「他に無いようなら一度解散だ。明日の朝にギルド前に集合だ。各自食料や野営の道具は準備しておけよ」
俺達は各々準備に取りかかる。パッチさんに相談すると、道具を一式揃えてくれたのはありがたかった。俺達は隠れ家に戻って明日に備えた。




