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「あたし」

えんぴつくん(4)

作者: XI

*****


 大きなベッド、えんぴつくんと二人。あたしは下着姿だけれど、えんぴつくんはパジャマを着てる。なんだかおかしくて、えんぴつくんの背筋に人差し指を這わせてやった。えんぴつくんが「ひゃぁっ」と声を上げて寝返りを打ってこちらを向く。「せ、先輩、やめてください」と目を白黒させる。あたしは「脱ぎなよ、服。気持ちよくしてあげるからさ」と教えた。するとえんぴつくん、今度は向こうへと寝返りを打ち「そんなの要りません」と固辞した。


「どうしてぇ? あたしは気持ちよくなりたいんですけどぉ?」

「ぼくはぼくです。ぼくだからぼくなんです」

「意味がわかんないよぉ」

「いいから寝てください。明日からまた激務が待っているんですから」

「きみと組むようになってから、仕事に恵まれていないんですけれど?」

「気のせいです」

「事実だってば」

「気のせいです」




*****


「今回もまたカワウソ君らしいね。どこから出向ているんだろう」

「いきなり現れるあたりが、『異形』っぽいです。今度こそ、仕留めます」

「あたしは動物愛好家なんだけど、しゃあなしかぁ」


 えんぴつくんは今日も刀で戦う。相手の懐に飛び込んで、腹をザシュザシュ斬って、真っ赤な返り血を浴びながら戦う。私はロケットランチャーを使って援護する。ロケラン食らってもダメージを負った感はないけれど、えんぴつくんの刀は効いているように見える。えんぴつくんはそれくらい達者なのだろう。


 えんぴつくんが明らかに深追いする。「待て!」と叫ぶだけの権利も力量もない。えんぴつくんはあたしよりずっと上の人物だ。ここで仕留め損ねたら厄介なことになる。それがわかっての追撃だろう。



*****


 えんぴつくんが駆け足で帰ってきた。顔は返り血で真っ赤。「『異形』の血はなんだかしょっぱいです」などと笑って軽口を叩く。あたしはあたしで、「なんの役にも立てないなぁ」と嘆き節。


「前から言おうと思ってました」

「なんの話?」

「刀、教えてさしあげます」

「馬鹿なのかな。私にはそんな才能は――」

「努力もしないで、才能を否定するんですか?」


 えんぴつくん、キツいことを言う。


「わかった。教えてよ。お荷物にならないで済むなら、そうしたいんだ」

「いろいろと、理解しました」えんぴつくんは笑った。「がんばってできないことなんて、この世にはないんですよ」


 えんぴつくんは楽観的で積極的だ。

 だからこそ、荒んだ心を抱えるあたしのバディにふさわしい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] えんぴつくん!! なんかいい感じにバディになってきた!! これが愛の力!! [気になる点] >「そんなの要りません」 いや、そこは楽しもうよ。 恋も楽観的で積極的に行こう!! [一言] …
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