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第4章
第4章
陽の傾き始めた夕暮れの街を学生服の1番上のボタンを外して歩く青年がいた。繁華街の路地裏を1人、タバコを咥えて歩いていた。
父は僕がまだ母のお腹にいた頃に事故で死んだと聞いていた。母は僕に父の面影を見ている。「お父さんはあなたより、、、。」そんな言葉ばかりを僕に聞かせて育った。そんな母を人がゴキブリを嫌うように、僕も嫌っていた。
子は親を選ばないという。その通りだ。何度となく恨み、憎んだ。なぜ2人いないのか。なぜ俺自身を見てくれないのか。殺したいとも思った。殺そうともされた。罵声と暴力に耐え抜いた。選べなくても、せめて始まりの部分を、配られたカードをデッキに戻し引き直すようにしてやり直せるばと思う。
よろよろとタバコを咥えて歩く男が僕にぶつかった。そいつの目は虚。なにも写すことはないのだろうかと感じさせた。なにもかも諦めたような目だった。
ぶつかった拍子にポケットからボロボロの紙切れを落とした。その男はその紙切れを大層大事そうに拾い上げると謝りもせずどこかへ去っていった。それがやけに印象に残った。
僕は今から知らない女と会い、酒を飲み、一晩を共にする。今晩は家に帰らない。夕焼けのオレンジが街を染めていた。それがこの路地裏のあさやけだ。




