イレギュラーな異世界転生
「・・・暑い」
男はポツリと呟いた。
「なんで砂漠スタートだよ。普通街スタートだろ!」
そんな事をボヤきながら歩いている。どうしてこうなっているのだろうか。時を遡ること3時間・・・コンビニでおにぎりを買っていると過激なお客様が車でご来店してきた。その場所にいた俺はそのまま死んでしまった。かと思えたが、なんと目が覚めた。
「あれ?俺・・・死んだんじゃ・・・」
ふと気がつくと目の前に全裸の女性が立っていた。そして何故か水浸しになっている。
「ようこそ。死後の世界へ。あなたは今死にました。突然ですがこれからあなたには、2つ選択肢があります。1つは、新しく赤子として生まれ変わります。そしてもう1つは、記憶を持ったまま異世界に転生します。」
・・・転生?何言ってるんだ?
「ていうか、なんで全裸なんだ?」
男は呆れたように聞いた。
「お風呂に入ってたのよ!!!!」
「・・・スミマセン」
なんだか自分の死んだタイミングが悪かったみたいで謝るしか無かった。
「コホン、まぁいいわ。さてどうするの?転生か生まれ変わるか」
少し考えた後、答えた。
「転生するよ。なんかこう面白そうだし。でも今の俺だと転生しても直ぐに死ぬよ。それに何したらいいかわかんないし」
「そうでしたね。まだ話していませんでしたね。・・・あなたには転生後を街を救くためあるものと戦ってもらいます。しかし、今のあなたでは戦うこともまともに出来ません。そこで3つだけなんでも授けます」
「・・・3つか。なんでもいいの?」
「はい。なんでもいいです」
そうか・・・と頷き、また少し考えた後答えた。
「それなら・・・時間魔法と創造魔法と想像魔法が欲しい」
「いいでしょう。では授けた後すぐに転生させます。気分を楽にしてください。・・・その前に書類を書いてもらいます。ここにサインとお名前を」
「は・・・はぁ」
ファンタジーとかけはなれすぎてそう答えるしかできなかった。そして渡された紙に名前を書いた。
「八神刻雨、変な名前ね。それでは行ってらっしゃい。勇者様・・・」
刻雨は親指を立てて光に包まれた。
そして今だ。目が覚めると砂漠で倒れてた。周りを探しても街はなく砂しかない。転生時の転生ボーナスとか言うやつで何とかこの世界の常識や言語、魔法の発動方法はわかったがどこに行けば街があるかが全く分からない。
「・・・もうダメだ。喉はカラカラ。ヘトヘトになるまで歩き続けて来たがとうとう限界だ」
刻雨は倒れると同時に突然意識を失った。目が覚めるとベットの上だった。砂漠に絶対ないくらいふかふかで綺麗なシーツだった。体を起こすと隣に人がいた。
「パパ!目が覚めたよ!」
綺麗な女性だ。少しロリっぽく自分の好みにあてはまっている。すると奥から声が聞こえてきた。
「やっと覚めたか。3日くらいずっと寝てたぞ。体は大丈夫か?」
「もう大丈夫だよ。助かった。それよりここはどこだ?それにあなた達は?」
「ここは、六麗の街だよ。転移魔法でここまで連れてきたの。砂漠で見つけた時は驚いたよ。それと、私たちはそこに住んでいるリータとネットよ」
「へぇ〜。ロリの街ねぇ〜。すごい名前の街だな・・・俺好みだ」
その時刻雨は気づいた。ちょうど頼まれた待ちがロリだったな。確か・・・
「六に麗しいって書いてロリだったよな」
「すごーぃ!なんでわかったの?」
「それはね・・・」
とそこで突然ネットの声が聞こえてきた。
「大変だ!またアイツが来たぞ!」
アイツ?そういやこの街のあるものを倒して欲しいと言っていたな。こんな序盤で出てくるのか?出てくんなよ!ゲーム開始直後でラスボスが出てくるクソゲーみたいだな。
「俺も連れて行ってくれ」
目的地に来ると人がいた。黒い服に黒マントであからさまな不審者だ。
「何者だ?アイツ」
すると不審者は答えた。
「俺は異世界から来た。この世界は俺のものだ!この街はもう俺が支配した逆らうやつは皆殺しだ」
多分こいつだな。こいつを殺せばいいのか。よしやるぞ。
「ネットさん。俺がやるよ」
まずは様子見だな。想像魔法で魔法を作る。そして創造魔法で魔法として確立させる。この技は転生前にあの女に教えて貰った技だ。
「よし!まずは炎だ。<ファイヤー>!」
上手く炸裂した。するとリータが聞いてきた。
「あのぉ・・・魔法は詠唱しないのですか?」
「ん?詠唱いるの?」
「いりますよ!」
どうやら詠唱はいるらしい。次からは気をつけよう。
「おい。お前らよくもやってくれたな。どうなるか分かっているだろうな」
男はそうゆってきた。だから
「ほぉ。よく生きていたな。死にたくないなら降参しろ」
と言った途端
「とりあえふずここは引かせてもらうよ」
そう言って去っていった。ってか、身代わり早いな!
「さぁ皆さん。悪いやつは私が追い払いました。これで安全です」
おぉ!っと言う歓声とともに街で歓迎された。そしてその夜・・・
「どうしたの?リータ」
「今日のこと教えて。それにあなたのステータスも」
「そうか・・・リータも怪しんでいるんだな。俺の事。いいよ教えてあげる」
そしてこれまでのことを話した。すると
「うっうっ。辛いことがあったんだ・・・」
と言って泣き出してしまった。
「泣くなよ。どれもこれも成り行きだ。どうせ赤ちゃんになるくらいなら自分が自分のまま新しい人生を送りたい。今日話したことは秘密にしておいてくれ」
「んっ!」
「ところで、アイツは何者なんだ?知っていることがあれば教えてくれ」
リータは少し考えた後答えた。
「私と結婚してくれたらいいよ」
「結婚・・・んっ?えっ?はっ?結婚?」
よく分からなかった。冗談かと思ったが謎の鉱石で作った指輪を持っているのでこれが冗談ではなく本気だとわかった。
「結婚はまだ早いんじゃないかなぁ。ハハッ・・・」
刻雨は苦笑しながら行った・・・が全然ダメだった。
「ダメ。結婚しないと教えない」
そういうとリータは近ずいて来た。そして刻雨は言った。
「わかった。俺の事が好きなら、それに応えてあげるよ。結婚しよう」
そう言って刻雨は指輪を取りリータの指につけキスをした。
するとリータは満足そうにしてアイツについて語り出した。その話によれば、アイツの名前は、有者愛津というらしい。そして、愛津が現れたのが数ヶ月前だという。その頃から急にモンスターが活発化し街の外に出るのも危険になったようだ。しかし、転移魔法が使えるリータだけは外に出られるらしい。そして愛津は何故か街を破壊しようとしていると分かった。恐らくあの女が言っていたあるものというのは愛津の事だ。
「・・・アイツは私の母を殺した。だからアイツを許さない。でも、私じゃアイツを殺せない。村の中にも・・・でも、そんな時に夢に母が出てきて昔行ったことがある砂漠に行けば救世主がいると言われた」
「そして、そんな時に俺が砂漠で倒れてたわけだ」
「んっ」
沈黙が続いた。そして刻雨はいった。
「俺の役目はこの街を助けること。そして愛津を殺すことだ。俺は愛津を殺さないといけない。リータ、お前に意志はあるか?愛津を殺す覚悟はあるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん。私は臆病だけど刻雨がいるならできる!」
「いい返事だ」
そう言って静かに頭を撫でた。
「・・・そういえば、愛津は数ヶ月前からいるのに今初めて侵略したようなこと言ってたな」
「あれはいっつも言ってる。前に言ったことを覚えてないみたい」
・・・あまりの馬鹿さ加減に何も答えられなかった。それから数十分後、秘密の特訓が始まった。
この世界の魔法、詠唱魔法と無詠唱魔法の違い、エトセトラ。そこで刻雨はふと疑問に思った。
「そういえば、なんでリータは転移魔法が使えるんだ?高等魔法なんだろ?」
リータは自慢げに答えた。
「私はこの国でも五本の指に入る魔法士なの!すごいでしょ!」
「は・・・はぁ・・・」
刻雨はそう答えるしか無かった。あまりの気迫に気圧された。しかしまた疑問に思った。
「それならなんでこんな村にいるんだ?そんなに強いならもっと栄えた街にいるだろ?それにそんな強いゆなら母親死なせずに住んだんじゃねぇのか?」
「・・・」
リータは黙ってしまった。さらに泣き出してしまった。嗚咽をこらえるような声で言った。
「私が弱かったから・・・アイツは私の魔法をもっと強い魔法で消してしまった。もっと私が強ければ打ち消されることもなかった・・・」
刻雨は答えられなかった。自分にはどうにもできなかった。
助けることも・・・リータを慰めることも・・・それでも刻雨は口を開いた。
「それならもっと強くならないとな!」
刻雨は高々と声を上げた。それに釣られるようにリータもうなづいた。
・・・それから3日・・・
「ついに来たね・・・この時が」
リータは自信満々で言った。
「そうだな、それじゃ行くか!」
刻雨も張り切って叫んだ。が、リータがそこで言った。
「あ、アイツのいる城すぐ近くなんでそんなに張り切らなくていいですよ」
「・・・」
それから五分ほど歩くとすぐに着いた。
「ここです。これからどうします?」
「そうだな、まずはこの城の最上階に行くか」
「そうですね。では、中に入りましょう」
「・・・あぁ!」
刻雨は叫んだと同時に扉を開けた。するとそこには一本道があり、横に曲がる道などなかった。それはまるで魔王の部屋の前の廊下のようだった。その廊下を進むと扉がでてきた。
「何も無かったな、さすがにこれで愛津がいたら逆にすごいよ。さて、じゃあ開けるよ」
「んっ!」
開けるとなんとそこには有者愛津がいた。そして既に臨戦態勢にはいっていた。
「フハハハハッ!よくぞ来たな!もう詠唱は終わらせてある。さよならだ」
<闇呪極・渾沌之終焉星>
そう唱えると同時に周りが暗くなり大爆発した。その衝撃で2人は100mほど吹き飛ばされてしまった。
「はぁ、はぁ・・・やられたな。まさか開始直後でやられるとはリータは大丈夫か?」
「大丈夫・・・だよ。気に・・・しない・・・で」
リータは倒れてしまった。
「リータ!お前腹に穴が・・・」
「私・・・のことは・・・気にしない・・・で。早く・・・アイツ・・・を」
「リータ!・・・はぁ、眠ってるだけか・・・よし!行くか!リータのためにもな!」
そう言って刻雨はリーダの傷を塞ぎ吹き飛ばされた道を戻った。
「よく生きていたな。その頑丈さは褒めてやるぞ」
「そっか、前みたいに逃げなくていいんだな。まぁいいよ。すぐに終わらせる」
そう言って刻雨は魔法を使った。
<創造領域>
そう唱えた途端周りにいくつもの物体が発生した。そしてそのまま詠唱を始めた。詠唱が終わると同時に巨大な狂った時計が現れた。
「これは<狂時計>、これが12時を指すと俺の勝ちだ。何が起こるかは、その時までのお楽しみだ。さぁ、残り5分!せいぜい頑張れ!」
刻雨はそういうとさらに魔法を発動した。
<空想の世界>
すると結界が現れた。・・・そしてそれから色々あったが、のこり10秒となった。
「これで終わりだよ」
そう言って刻雨は魔法を発動した。
<狂時計・世界の歪曲>
その魔法が発動すると同時に愛津の体がぐにゃぐにゃに曲がり時計の中に吸い込まれた。
「終わったか。なんか呆気ないな。・・・さて凱旋だ!」
それから刻雨はリータを拾って村に帰った。それから村で祭りが催された。そしてその夜・・・
「こんなところにいたのか。どうしたんだ、リータ?」
「星を見ていた。一緒に見よ」
刻雨はいいよと言って隣に座った。
「これからどうするの?もし旅立つなら私もついて行く」
刻雨は悩んだ。これから・・・愛津を倒した今刻雨の指名は終わった。
「そーだな、旅に出て仲間を増やそうかな。そして街に出て家を買おう。どうだ?」
「んっ!いいよ。私もそれがいい!」
「フッ、俺たちの旅はこれからだな!」
そう言うと後ろから声をかけられた。
「あのぉ〜、有者愛津というのですが僕も一緒に行ってもいいですか?」
「えっ?」
「本当にこの世界はイレギュラーすぎるだろーーーーー!」
その叫びは夜の村に響いた。そして、イレギュラーすぎる異世界の旅はそこから始まった。
読んでいただきありがとうございます。初めて投稿しました。昔から妄想することが多くその妄想を物語にできたので良かったです。