こうしてストレスは増えていくー日常生活だってモンスターとは戦えます(死んだ目)だから異世界転移したいとか思った事ないー
一つのフィクションとしてお読みください。
朝起床、今日が始まる。
アラームの音で目覚め……足掻きで一回止める。これはフェイクアラームである。起きる覚悟を決めるためと、惰眠を貪るための。
なんで寝てる時って、寝てるっていう意識持てないんだろ……なんかいっつも損してる気分。そもそもアラームで起きるのが寝た気がしなくて……。
あー……仕事行きたくないなぁー?
スマホの時間と睨めっこして、まだ5分くらいうだうだする。悪あがきである。
今の仕事、別に嫌いじゃないんだけど。
行きたくなくなっちゃうのなんでだろ。
……仕事だからかな!
真理だわーと思いながら、スマホで動画を流しながら準備を始める。音楽な時もあるけど、視覚的にも気分を無理やり上げるため。
とは言え、あんまり画面見れないけど。
ほぼバックグラウンド再生ですけど。
だけどニュースとか見ると、滅入る事が多いから……暗いニュースばっかりなんだもん。そういうのは、今LINEとかでも見れるから朝はちょっと遠慮したい。
わからない人はわからないと思うけど。
そういうので無駄に心が重くなるので。
想像しちゃうとだいぶ引きずる。
という訳で、もっぱらニュースは朝見ない。準備が終わったら天気をスマホで確認して出かける。
……この天気も気分左右するよねー。
暑けりゃ暑いで熱中症になりかかるし、寒けりゃ寒いで服に悩む。寒いのが一番困るのだ。自分の一存で温度上げたりできないし。
あと雨ね。濡れるしね。
バス電車がぎゅうぎゅうになるのも不快。
傘がうまく畳めないときも不快。
そもそも遅延したりするし面倒。
雨が嫌いな訳じゃないけど、雨とたくさんの人が交わると地獄絵図なのだ。ほどほどの雨の日に散歩だったら好きなのになー。
こういうのが一つ一つ、朝を憂鬱にさせる。
でも仕事は待ってはくれないので。
今日も足を引きずりつつ歩きますよ!
お仕事ですから! 社会人はみんな偉いぞ‼︎
私が勝手に褒めといてあげますね‼︎
という訳で自分とその他社会の歯車を脳内で褒めつつ、出勤する。
「おはようございまーす」
「……おはよう」
おんやー? 先輩たちなんか暗いぞ!
あ、やべ、胃が痛くなってきた!
別に私は何も関係ない。だって今出勤したんだからね! そこで仕事してる2人が、例え一言も発さないようなどんより空気だろうが、私のせいではない!
せいではないが!
気になるではないか!!!!
何? 喧嘩でもしたんですか⁉︎
私が気にすることでもない……んだけど、空気が重いと胃がキリキリしちゃうんだなー! なんだったんだろうな今の空気はー!
まだ耐えられるかなぁということで、カバンのお友達胃薬さんにはスタンバッててもらう。とりあえずステイよ!
……まぁ問題は、多分噂のあの方よねー。
はぁ……今日関わらないと良いけど。
とりあえず後であの空気聞いてみよ……。
気になりつつ、他も観察して問題ないか見ちゃう。……うん、あそこだけだなとりあえず、となったので準備を開始。
……あそこに突っ込んでくのやだなぁ、と思いながら仕事なので、準備終わったら指示仰ぎに行く。とりあえず、気にしてない体で。
「おはようございますー! 今日なんか変わった事とかありますー⁉︎」
「あー……大丈夫」
「わかりましたー! とりあえずいつも通り仕事しますね!」
うーんやっぱ空気重くないか⁉︎
先輩なんかあったかなー⁉︎
噂の先輩、なんも喋らんけど!
この後同僚さんに「空気重かったですよね!」と言うも、「え? 全然わかんなかったですけど」と言われ。マジかー! となる。
……うんまぁ、知ってた。
私が気にしすぎなのよねぇ。
でも……気になるんだから仕方ないよね!
やっぱ噂の先輩いなくなってから聞こうと決めて、とりあえず仕事始める。あーもう全然気持ち晴れない件について。
ある程度片付いたところで、噂の人がいない時に当事者に聞いてみる。
「なんか今日空気重くなかったですか? 大丈夫でした?」
「あー……やっぱ変だったよね。いや別に何もないけど、すごかったんだよ。だって一緒に仕事してるのに1時間一言も喋らなかったもん」
なるほどー!
そりゃヤバいっすね!
カウンター業務でそれはヤバい!
普通なら仕事できないですけどねー……。とりあえずは害がない範囲(今日だけは)なので、「大変でしたね、お疲れ様でした」と声をかけておく。
うーむ、噂の先輩どうにかならんかなぁ。
色々職場の空気悪くしてるんだよな。
その日の機嫌によるけど……。
そう思いつつ悩んでも仕方ないので。カウンター業務を代わって、同僚とそっちに入る。話しかける勇気は私にはないですよ、触らぬ神に祟りなしと言うではないか。
あぁ、年下の同僚ちゃんがなんか疲れてる。
さっきの仕事肉体労働だったもんね……。
別に私は先輩でもないけど、歳の功はある。なので慣れてない同僚ちゃんのモチベが下がらないように、なるべくフォローする。
「同僚ちゃん、大丈夫?」
「あぁ……大丈夫です。や、ちょっと疲れましたけど」
「だよねー。いや、同僚ちゃんが頑張ってくれたからめっちゃ進んだよ整理! さっきも早いねって驚かれたしね!」
「まぁ……結果が見えるのって、やってて楽しいですよね」
お、ちょっと元気になったか?
同僚ちゃん、クールだからなー。
表情も出にくいんだよなぁ。
でも別に表情皆無ではないし。話しかけたら返してくれるから、話しかけたてたら最近ちょっとずつ個人的な話もしてくれるし!
まぁクールすぎて「同僚ちゃんとうまくやれてる……?」って言われるけどね! みんな優しいからだね! ……橋渡しもうちょい頑張ろ。
やっぱり仕事は、仲良い方が回るからね……。基本は助け合いだと思うし。
まぁそれよりも、同僚さんのフォローの方が大変だけどね……と思いつつ。少しばかりコミュニケーションを取っていたら。
「……暇そうですね?」
冷たい声と共に乗り込んで来たのはーー噂の先輩だった!!!!
なんかカート持ってる!
なんかめっちゃ資料載ってる‼︎
もしかして仕事振りに来たのかな⁉︎
いや、まぁ、いいけど、多分それ私たちの担当時間じゃできないけどなー……と思いつつ。
「ど、どうしました……?」
少し笑顔が引き攣りつつ、もう怒ってる顔に尋ねる。やべー予感しかしないが。
「なんでコレ持って行かないんですか?」
……なんでとは?
あのそれ、私たちの担当業務ではないよね?
言われないと、わからんよね?
しかしそんな口を挟む間も無く、火蓋を切ったのは当然あっちだった。
「言いましたよね、前に。時間ある時はコレやってって」
……言われたのいつだろうね?
その間何も言われてないけどね。
困ってなかったとしか思えないが。
あと、当然私たちも仕事は別である(カウンター入ってるし)。……まぁ、カウンターでも手が空いてればやりますけどね?
しかしその量は……果たして終わる量なのか? あとまだこっち、細々とした仕事あるので実は暇でもないけどね?
「なんで持っていかないんですか? 暇ですよね? こんな子供でもできることなんでしないんですか?」
何故決めつけちゃったんだろうねぇ……。
つーか子供でもできるなら自分でやったら……と、思わんでもないが。どう答えたもんかなぁ……と。頭を悩ませていたら。
「……私たち、資料整理してたので今座ったんです。それに仕事溜まっちゃってるんで、今日はできないですね」
言ったーーーー!!!!
え、同僚ちゃんどうした⁉︎
いつもクールにしてて反論しないのに⁉︎
も、もしかして怒ってます?
……あ、怒ってますねー!
しかし当然、噂の人は黙らない。
「今日の話じゃないんですよ! 気持ちの問題なんですよ‼︎ もっと普段から、『仕事ないですか?』って、聞いてくる姿勢が大事だって言ってるんですよ!!!!」
き、キレたーーーー!!!!
あぁ、とってもビッグなファイアーが見えるわぁ……。よく、燃えて……えっとこれ、どこから鎮火したらよろしい……?
しかし言い分理不尽すぎないですかね……。
なんでこっちが聞くんだよ……。
別に私たちの仕事でもないのに……?
本来お願いしてるの、そっちじゃないんかなー……と思いつつ。矛先が同僚ちゃんばっかりに行くのもアレなので、口を挟む。
「あ、そうですよね。全然私たちができないから、持ってきて頂いたみたいで……」
「そうですよ! 私が持ってくるのおかしいと思わないんですか⁉︎ なんで毎回持ってこなきゃいけないんですか‼︎ 自分で持って行ってくださいよ‼︎」
……いや別におかしいと思わないが???
うん、だってそれ、私たちの担当業務じゃないからね……? 本来あなたのですよね……?
何故それを責められてるんですかね……?
この一食触発な雰囲気(というかもう炎上してるが)もあいあまって、私の胃もキリキリしてくる。
……ヤバい、とりあえず吐き気だけは我慢しないとヤバな……。
ここでぶちまけるのは、彼女の怒りくらいにしたいものだ……それも遠慮したいけど。
あぁ……今わかったわ。多分面談でなんか言われて、今日機嫌悪かったんですよね……。こりゃ、誰かなんか上に言ったんだな……。
「いや、言われないとわからないですし、使わないなら邪魔なだけなんですけど」
「そういう考えがダメだって言ってるんでしょうが!!!!」
いやーん!
2人とも私を放って争わないでー‼︎
カバーできないからー‼︎
こんなテンションにでもしてないと、私の胃がもたなくなってしまう! もうやめて! 私の胃のライフはもうゼロよ‼︎
「私たちも困ってるんですよ、持っていかないから! 迷惑してるんです! 裏でなんて言われてるか知ってますか? みんな言ってますよ‼︎」
……なるほど。
まぁ話は話半分できいたが。
とりあえず。
「すみません! 今日はちょっと多分できないんですけど! 明日から! ちゃんと聞きますねぇ⁉︎」
あわててフォローを入れる。
じゃないと同僚ちゃん目をつけられるもん!
……まぁ後で対策考えるけど!
さすがに理不尽なので、このまま聞こうとは思ってない。とりあえず収めようとしてるだけだ。
「当たり前ですよ! いいですか、聞くのをルーティンにしないとダメですから! そういう意識が大事なんですからね‼︎」
……どういう意識だ?
仕事でもない仕事を貰うためのルーティンとか、ただのブラックの出来上がりである。ちょっと意味わからん。が、とりあえず「すみません‼︎」と言っておく。
そして嵐は去っていった。
でも私の仕事、ここからである。
「えっと……大丈夫? よく言い返したね?」
まず同僚ちゃんのフォロー。
心のケアである。
「あ、なんかあまりに疲れてたのと、理不尽すぎて我慢できませんでした。うわなんで忘れてたんだろ、アレ面談で言えばよかった……!」
アレ呼ばわりよ。
ま、気持ちはわかるけどね。
「いや、いつも黙ってそうなのに珍しかったからちょっと驚いたけど……まぁあっちがおかしいから。気にしないでね? はっきり言えてすごいね!」
「すみません……黙ってればよかったんですけどね。あぁいうの、構うだけ無駄なのにイラッとしちゃって」
……怖い顔してるぞー。
でも達観してるなぁ後輩ちゃん。
そういうとこが、大人だなと思うけどお姉さん心配でもあるよ。
「えーと。大丈夫だった?」
そこに現れたのはーー上司ぃ!!!!
上司ぃ! もっと早く来てよ上司ぃ‼︎
さっきチラッて見てたの見えてたよ上司ぃ‼︎
「それ私も気になりました」
「なんかすごかったよね、大丈夫?」
ひょこひょこ現れたのは、他の先輩!!!!
みんななんだかんだ優しいのだーー噂の先輩以外は。うん。
「あぁ、えっとですね……」
という訳で、私が説明する。
同僚ちゃんはクールに戻ってるんで。
「そっかー。なんであぁなっちゃうんだろうね。注意もっと上からしてもらったんだけどなぁ……」
「あ、そうなんですね……」
「うん。みんな気にしてるから」
「……で、やった方がいいんですか?」
「いやー……今日は無理でしょ、少なくとも。いいよやんなくて」
はい、言質とりました。
上司の上司から、面談の時にやっぱり指摘をしたらしい。まぁ、それで余計に今日盛り上がっちゃった感もあるけどね。
いやマジ人間めんど……ごほん、難しいね。
そして先輩たちも「気にしなくて良いからね!」と、飴をくれた。優しい……! エリクサーより心に染み渡る優しさ……!
「でもさぁあれ、私聞いちゃったんだけど」
「え、なんですか先輩?」
「同僚さんが、『暇だー』アピールするせいもあると思うよ。だから本気で暇だと思ってるかも」
……あぁなるほど……。
同僚さんはプライドの高い男性だ。彼は仕切りに舐められることを気にしており、できるアピールをかますのだ。しかし空気は読めない。
ちなみに噂の先輩は彼を買っているのだが、それは仕事をしてくれるからである。そしてその仕事をしている間、彼は他の仕事をしない。
つまり私たちが本来の仕事を回す。
端的にいうとーー勘違い困ったちゃんだ。
静かに痛む胃を撫でる……あとで薬飲もう。
そして裏で仕事している別の先輩が来たので、上司が話を聞いていた。
その先輩は「気にしないでね! ごめんね! なんか言いなりになっちゃってるけど……」と涙ぐんでいた。その先輩が心配になった。
いい人だから、弄られてそうなんだよね。
でも業務被らないからなぁ……。
助けに行けないけど、声はかけようかな。
この先輩、CV.花澤香菜みたいな癒し系なのである。なのでだいぶほわほわしている。だから消えてほしくない。
結局、自分で気になることを増やしてしまった。全ては噂の先輩がいけないんだけどね。
そして私は策士なので、もうこんなことがないように先手を打つことにした。
『毎回指示を仰ぐように指導を受けました。ただ少なくとも、しばらくは資料整理で難しいと思います。念のため明日の早番の方は、上司に指示を仰いでから対応してください』
これが、私が職場内共有引き継ぎに書いた策である。カウンターに入る人しか見ないけど、ここは上司の指示も仰げるーー目に見える形として。
もちろん上司から付いたコメントは「普段の仕事優先で。毎回指示は聞かなくていいです」だった。はい、チェックメイト。勝訴です。
ズルいようだけど、何事も目にみえるようにしておくのは大事なのだ。これが汚い大人のやり方ってやつですわー。
気分的に疲労困憊になりながら、帰路につく途中、同僚さんに会った。
どうせ伝えなきゃいけないし。
というか、口に出さないと伝わらないから。
という事で、今回起こった問題を同僚さんにも共有しておいた。今日一緒に仕事してなかったけど、彼もカウンター入るからね。
「なるほど……それはなんか感じ悪いですね」
「はは……そうなんですよね。言い方がもうちょっと違えばなぁと思いますよねー」
「そうですね。まぁ、オレがみんなを統括するようになれば、ちょっと負担減りますかね!」
意気揚々と言ってくれる彼を見てーー私は固まった笑顔で閉口した。
……出た、もう上に行く気の発言……。
こないだの面談で、希望者は昇進の面接も兼ねているのだ。まぁ私もそれ受けたの、彼には話してるんだけどね……?
いやいいよ。
それはまぁいいよ。
でもその前に自分の事見て?
今回の件、あなたの「暇」発言のせいもあるんだけど……。ついでに言うと、ライバル心からなのか先輩たちに態度悪いの、めっちゃバレてるんだが……?
あと同僚の私たちに、謎の先輩風を吹かす。
いいんだけど、謎なのだ。
そのせいで、分からないとこ聞かないし。
コミュニケーションや仕事に支障をきたすプライドのまま、上に上がられるのはちょっとな……と思うが。その全てを飲み込んで。
「……そうかもしれないですねー!」
と、声だけ明るく言っておいた。
顔が笑えてたかは、ちょっとわからない。
幸い、今はマスクなのでそこは助かったーーそんな胃が痛くなる思いを抱えたまま、寄り道せず家に帰った。
え、日常こんな大変なのにさ?
みんな転生したいの?
異世界転移したいの?
どんだけチートあっても、人と関わるの変わらないのにね?
そんな主人公たちを尊敬します。(ベッドにダイブ)