11話3の巻
一年弱行方不明の作者です。
ごめん、長くかかったのに短いんだこの巻。
そこからの説明は邪魔も入らずに終わった。
大体はもう説明されていたが、最後にかなりのサプライズが残されて…てか意図的だろう周瑜?
「なら……我等2軍の他に主の参加していない諸侯軍が加わると?」
「ああ、あの連中も未だに戦功をあげていないからな。
主の元に戻るとしても、なにがしかの手土産が必要だろう」
まあここを突破したらそのチャンスも無いのはわかるが。
「いいのか?場合によっては利をかっ攫われる可能性もあるが?」
ここまで話がまとまったのに漁夫の利なんて笑い話にもならん。
「彼の軍が参加するのは総大将からの通達で断る事が出来なかった…」
また袁紹かい!!あの天然は邪魔な事しかせんな。
「だが悪い事だけではないさ。
彼の軍には精々矢面に立ってもらい、我等の損害を軽減してもらおうではないか」
ニヤリと含み笑いを見せる周瑜の意地の悪そうな瞳、その中には『自分を出し抜けるものならやってみろ』という自信が見え隠れする。
「ま、それならこれ以上俺が言う事はないわな」
俺も負けずにニヤリと笑う。
まあ俺も意地が悪いのは言うまでもないしね。
それ以降は特に目立った情報はなく-途中で雪蓮や祭さんの横槍はあったが-、遂に作戦決行時刻になる。
俺と凪は作戦通り後曲に下がり、攻城戦を遠くから眺める。
反乱の報が届くまでの見せ掛けの戦闘とはいえ、双方併せて数万の大軍の激突は迫力がある。
そんな風に観戦モードの俺に横から声がかかる。
「隊長……」
「何だ?」
「あの…えっと…」
自分から声をかけてきておいてまごつく凪。
何時もなら後曲での控えであろうとも、他2人と違って無駄口を叩かない娘だけに意識を凪に向ける。
「あの……あの……」
俺の視線を受けて更に慌てる凪を見てピンと来た。
(軍事関係の事なら凪はまごついたりしないで話せる筈→凪がまごつくような話は?)
「何だ凪?もしかして俺が孫策軍に行くかもとか思ってんのか?」
ズバリと予想を口にしたら目に見えてあわあわし始める。
「いや…あの…隊長を信じてないわけでは…」
しどろもどろにごにょごにょ呟く凪の頭を荒く撫でてやる。
「…ひゃっ……///」
「わかってるよ。
それにあの場でも言ったが、俺は華琳の客将であり剣だ。
そして凪を含む愛した者達が華琳の軍にいるからな…」
俺の言葉に真っ赤になる凪を愛で、虎牢関に眼差しを戻す。
(周瑜は上手く諸公軍を使ってるな……奴等は本気で関を落とすつもりで攻めてるから、損害も大きいがプレッシャーは一番かけているだろう。
それを隠れ蓑に華琳の方も上手にサボっ…手を抜いてるな)
それよりっと視線を遠くから近くに移す。
(こちらの雰囲気が段々と不安になってきたな…)
ここで言う近くとは凪の事ではなく、
「雪蓮、我慢してくれよ」
周瑜から頼まれた呉軍の総大将の事だ。
戦は始まったばかりだと言うのに、戦場の空気にあてられたのか雪蓮の方の雰囲気がどんどん物騒になってくる。
(このままだと一時間保たない可能性があるな?)
今はまだ日が中天にかかるには程遠い時刻だ、こんな時に全力を出したら作戦が瓦解するのは雪蓮もわかっているだろうが…。
「しゃ~ね~な。
凪、悪いんだが隊を任せる、俺はお目付役として行ってくる」
「ひゃい!」
ありゃ、撫で過ぎたかな?凪の背筋がふにゃふにゃに。
「おう!頼んだ」
かみかみなのには気付かないふりをして、孫策の居る場所に向かう。
雪蓮は後曲の軍の先頭に居るが、勿論その周囲には十重二十重の親衛隊が陣取っている。
しかし俺が近付くと親衛隊員は自然に道を作り、俺を雪蓮の元に誘導してくれる。
これはやはり雪蓮に真名を許されたことで『自ら達の総大将が真名を許す程の人物』という、一定以上の評価を貰えた為だろう-まあ中には嫉妬混じりの視線もあったが-。
親衛隊員達の作る道を歩と程なくして雪蓮の桃色の髪が見えてきた。
「よう!雪蓮!」
雪蓮の纏う空気を無視して声をかけると、
「あら?隼人どうしたの?」
チラッとこちらに視線を向けて応えてくれた。
声の調子は普段と変わらない分、雰囲気との差異が際立つ。
「どうしたのじゃないだろ?そんな空気纏ってたら不安にもなるさ」
「あちゃ…バレちゃった?」
可愛くおどけて見せるが、
「隠す気もないだろうに」
やれやれと肩をすくめる。
そんな俺を見て、取り繕うのを止めた雪蓮は不満顔でぶーたれる。
「だって~!あそこで戦いが行われてるのに、私は参加できないのよ~?
冥琳達ばっかりズルいと思わな~い?」
「逆に俺なら楽できていいと思っちまうけどな」
子供のように-極めて物騒だが-駄々をこねる雪蓮を宥めるように、呆れ気味に応じる。
「…隼人はそっちなんだ?」
意外だとばかりに完全に視線がこちらを向く。
(よし!成功!!)
「1対1なら強い相手とも闘いたいが、部隊を率いての戦いは何かと面倒でね」
内心快哉を叫ぶがしれっと返答する。
「あ~…その気持ちもわからないではないわね」
「だろ?雪蓮は総大将だし軍閥の出だから慣れてるかもしれんが、俺は元々一匹狼だからそこまで上手に部隊運用が出来なくてな。
言わんや、華琳や雪蓮みたいに軍を率いての決戦とか、何が楽しいのかわからん。
駒として戦うのは苦じゃないのにな?」
雪蓮の意識をある程度こちらに向ける事に成功した。
まあ雪蓮自身もクールダウンが自らに必要なのを感じたので、付き合ってくれたようなものだが-そうじゃなきゃ戦中に雪蓮が他に意識を向ける筈もない-。
「それは隼人が戦場全体を俯瞰から見えていないためね。
私…そして多分曹操ちゃんも自分の視点とは別に、戦場全体を鳥のように空から見ようとする自分を持ってるわ…」
ああ鳥瞰って言われるやつか。
「私達のような立場の人間は、基本的にこの能力を持ってるわ……例外もあるけど…」
そう言って袁術の軍に目を向ける。
「まあそうだな…」
俺も思わず袁紹軍に目を向けてしまう。
まあ、あそこらは例外中の例外なんだろう。
「俺も慣れればそんな能力身に付くのかね?」
気を取り直して視線を雪蓮に戻す。
「隼人なら大丈夫よ……多分♪」
「その間は何だ、その間は?」
可愛くウィンクするのにジト目で返す。
その後は戦況を眺めながら、戦術的な話で頭を使わせてクールダウン成功。
結局話し相手になってないと雪蓮の暴走が怖かったので、自分の部隊は凪に任せっきりになってしまった。
そのおかげもあり…遂に、陽が中天に掛かった頃合いになり遂に、待ちに待った敵の城内の騒がしさが感じられた。
勿論戦の最中なのだから騒がしいのは当たり前だが、今回の騒がしさは種類が違う。
今までの騒がしさは戦いの動的騒がしさ、今感じる城内の騒がしさは隠そうとして隠しきれない静的騒がしさだ。
「隼人?」
「雪蓮も気付いたよな?」
いち早く気配を察知した俺達は目線で相互に確認をとる。
「……間違いなさそうだな」
一応間違いの可能性もあるので戦場を少しの間観察すると、目に見える程ではないが城からの迎撃の手が鈍くなっている。
この時、この状況でそうなるのならば、
「洛陽の蜂起は成功した…か…」
としか考えられないだろう。
もしかしたら鎮圧の報が届いたのかもしれないが、そこはさして問題ではない。
要は敵の本拠地と言える洛陽に、何がしかの不安が残るだけでも十分過ぎる隙なんだ。
「さて、相手はどう出るかしら?」
「そんなワクワクした顔して言うことか?」
口ではどうなるか?とか言ってても、表情が完全に来るなら来い!ってか来ないつもりでも来い!!って顔になってますよ雪蓮さん。
「まあ、俺も来てほしいから文句も言えないがな」
なんたって出てくるなら呂布の相手が出来る!三国志に燦然と輝く【最強】の二文字、それと直接対決出来るなんて戦闘を-闇とはいえ-生業とする人間にとっては誉れ以外の何物でもない。
それに、
(師匠と同程度の気の持ち主に自分が勝てるか……いい試金石だ)
いつまでも師匠に負けっぱなしなのは我慢出来ないしね。
そこからの戦況は自軍の押せ押せムード一色。
迎撃の手は既に戻っているが、一時の停滞の時間に稼いだアドバンテージが効いている。
そして、
「来るな…」
「来るわね!」
城からの迎撃の手が後先考えない熾烈な物になる。
これは二つの可能性を示唆する。
つまり、一度敵を退けてから撤退するか……打って出るかだ。
ギギギギギ……
巨大な門が開いていく。
と言うことは?
「「さあ俺(私)の出番だ」」
虎牢関、天下分け目の決戦の終章の幕が上がった。
次は呂布との戦闘。
書く時間を捻出しながら一気に行きたいな。