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第11話 1の巻

スピード完成w


ちょっと書き方変えてみた。


自分的には読みやすくなったけど、どうだろう?

目の前には赤い部分鎧を纏った軍隊が整然と列をなしている。


(統制が行き届いている。

数は華琳が上だが、兵の質は負けてないな)


俺の思考を見てわかる通り、今俺は孫策軍の脇を歩いて移動中だ。


目的は勿論昨日桂花から伝えられた配置、即ち孫策と協力して呂布を抑える為。


昨日の首脳会談で孫策には話が通っているのはずなんで、孫策に会えば話は大体わかるとは思うんだが、いかんせん急な援助-華琳軍が孫策へ助力する事-だったので孫策軍からの出迎えがなかった。


だから俺は軍の脇をこうして歩いている。


隣には副官として凪を連れて歩いているので、若干孫策軍の兵からの羨望と嫉妬、後は怪訝そうな視線が気になるが、実際気にしても仕方ないので無視しながら歩みを進める。


万を超す軍団の首脳部は、孫策の気性を表してか軍の先頭に陣取っているようだ。


てくてく歩いて行くと、途中で一角の武将だろうとわかる程の雰囲気を持つ男を発見。


「失礼。孫策軍の武将格と見受けるが…宜しいか?」


これ幸いと声をかける。


「……破山剣の神北殿か…」


男は鋭い眼差しで俺を一瞥すると、応えてこちらに振り向いてくれた。


「たこにも…いや、いかにも。

どこかでお会いしたか?申し訳ないが記憶にないのだが…」


男は細面に糸のような細目、そしてキリリとした眉をもち、綺麗に撫でつけられた髭を持つかなりの美中年。


野郎だとしてもこんな魅力的な人物なら覚えていないはずないんだが?


「黄巾党の砦を攻めた際お見かけした…」


かなりの重低音の渋い声で答えられて思い至る。


「あ~…そうかあの時に。

あの戦いに参加されたのなら知っていても不思議じゃないか」


あの戦いでは孫策軍と入れ替わりで攻めてたんだから不思議はないわな。


「失礼だがこちらのみ名前を知られているのもなんなんで、お名前を伺っても宜しいか?」


あの時には他の軍の攻めを眺めるより確認しなければいけない事があったので、実は細かい所は見ていなかったんだ。


「こちらこそ失礼した。

呉軍、黄蓋部隊で副官をしている韓当義公と申す」


軽く頭を下げて名乗る韓当。


「ほぉ…あなたがあの韓義公殿か…」


韓当は俺の情報網にも引っ掛かる程の武将である。


その冷静沈着にして法令を重んじる清廉な人柄と、戦となれば部下を鼓舞し一つに纏める手腕で、呉の柱の一つに数えられる武将だ。


本人も薙刀の名手にして黄蓋に並ぶ弓の使い手としても名が通っている。


「私の名を知っていただけているとは嬉しい限りですな」


恐縮なんだろうが、そんなニコリともしない真顔で謙遜されても…多分口下手が素なんだろうが。


「御謙遜を、呉軍の宿将として黄蓋殿、程普殿と並ぶ名声をもつのは周知でしょう」


これはおべっかではなく事実。


孫堅の時代からの譜代の武将の中でも、彼を含めた黄蓋、程普、後は武芸では一段落ちるが内政の朱治。


孫堅を支え、そして今の呉軍を支える柱石と言える武将達、ここらは正直今の呉軍の中では別格の実力者。


勿論今の呉軍の長は孫策で、参謀長は周瑜だが、これらの人々と比べて能力的にはそこまでの差はないだろう。


「そこまで評価いただけるとは面映ゆいが…。

本日の御用件は合同攻撃に関してですな?

どうぞ、1人付けますので陣中をお通り下さい」


表情は変わらないが気持ち早口になってるな。


もしかして照れてるのか?


「かたじけない」


そんな事はおくびにも出さず一礼する。


そして韓当が付けてくれた兵に案内され陣中へ。


孫策達の所へ向かう途中で凪に耳打ちしておく。


「凪、さっきのが韓当だ。しっかり覚えておけ」


「はい。足並みを揃える為ですね…」


凪もしっかり小声で話してくれるが、内容的には50点。


「…それもあるが、今後孫策軍と争いとなった場合の事も考えて、主要な将の顔、今回のように会話出来たならその内容等を覚えておけっての」


真面目な凪らしい答えに少しほっこりするが、今後重要になる事だけにしっかり補足しておく。


これから恐らく孫策軍とは幾度も争う事になるんだ、その時に相手の顔や雰囲気を知っているのは重要な材料になりえる。


勿論知っている事で罠にかかる可能性もあるが、それより怖いのは何も知らずに相対する事なので問題にならない。


「え?あ、はい!」


慌てて大きな声で返答してしまう、凪の頭をポンポン軽く叩いて落ち着かせる。


案内の兵がチラリとこちらを振り向くが、流石に話の内容までは聞こえなかったようで何も無かったように再度前を向く。


そんな些細なじゃれあいをしているとやっと目的地に到着する。


「孫策さま!曹操軍の神北さまをお連れ致しました!」


この規模の軍では珍しく、取り次ぎを介さず直接孫策がいた。


これは危機管理不足とも取れるが、もう一つの見方、自らの兵に全幅の信頼をおいているとも取れる。


「あら?やっと来たわね隼人♪」


案内の兵の言葉に振り向いた孫策、俺の姿を認めると破顔一笑、笑顔で声をかけてくる。


「悪い悪い遅れたか?」


「ん~ん♪まだ作戦前だから遅刻ではないわね」


作戦等の言葉が無ければまんまデートの待ち合わせである。


「あ~雪蓮…少し黙っていてくれるか?」


そんな俺達の話にどっと疲れたのか、周瑜が頭を押さえながら孫策を窘める。


「なによ~ぶ~ぶ~!」


いやそんな拗ねた言い方しても目が笑ってるから。


「はいはい…さて隼人殿、あなたには呂布を抑えていただきたい」


いつもの事なのだろう、周瑜は孫策を軽くいなすと本題に入る。


「これから我等と曹操軍の両軍にて虎牢関を攻める。

しかしそれは安全を確保出来るだけのおざなりな物で、本命は都で起こる騒動があってからだ」


朝に騒ぎがあったら大体昼過ぎ頃から夕刻前位に情報が来るだろう。


勿論これは早馬を使い潰す気で駆ければの話で、安全にとなると1日以上かかるだろう。


が、まさか後のようにはなるまい。


都で騒動なんてあったら致命的なんだから、九割以上の確率で早馬使い潰しで来るだろう。



「そしてその情報さえ虎牢関に届けば相手は浮き足立つ。

そうなってくれればこちらのもの、それでもなお籠もるなら全力で落とし、野戦を仕掛けてくるならば撃滅するだけの事だ」


虎牢関は難攻不落と言って良い堅固な関だが、それは関を使いこなせるだけの軍であればの事。


都-後方-で騒動が起こった挟み撃ちの状況で、何の影響もなく戦闘など出来るはずがない。


よしんば影響を最小限に留めたとしても、結局騒動を治める為に少数だろうと兵が関から離れる。


これだけ揺さぶる材料が揃った状態で、関を落とせないような我々ではない。


「ならば俺の隊はどこに配置する?」


大体の作戦は想定通りなので、自分の配置を確認する。


「私は十中八九野戦になると思っている。

なので隼人殿にはまずは後曲にて雪蓮を抑えていていただきたい」


…なんか不思議な言葉を聞いたぞ?


「…周瑜さん?」


あまりにも意外な話をされると、人間って聞き返す事しか出来ないもんだ。


「この要請には3つの意味がある。

1つは野戦まで隼人殿の隊を温存する事。

2つはおざなりな戦闘とはいえ戦だ。

そこで雪蓮の気性では前線に出張る可能性は非常に高い!

本来であれば私の役目なのだが、今回のように遅滞戦闘をするならば私が前線で指揮を執らなければならないだろう。

3つは隼人殿ならば雪蓮を抑えられるだろうと信頼出来るから。

なのだが…頼まれてはくれないか?」


熱く語る周瑜たが、実際2と3の要因が主だと白状してるだろう。


卑怯だよな~断る理由も言える材料も無いだろうに。


「なによ~!失礼しちゃうわ!」


憤慨する孫策を横目で見てため息一つ、


「は~…わかった」


承諾しますよ。


「申し訳ないな隼人殿」


ここは本当に謝罪の気持ちを込めて謝ってくる。


「手綱を離さないよう気をつける。

んで?俺も野戦になるとふんでるんだが、その後の動きは?」


何故野戦になる可能性が高いかと言うと、都で騒動があるという事は虎牢関にいる人間からすると挟み撃ちにあっている感覚だ。


この挟み撃ちという状況は古今の戦を見ても非常にまずい。


ならば打開策は何か?


挟み撃ちにならないよう移動する?

連合軍の戦略的目標が都なのだから、虎牢関を離れるのは下策中の下策、まともな指揮官が1人でもいるなら論外だろう。


後方の憂いを排除する為に兵を差し向ける?

虎牢関から都までは近いと言っても、軍として移動しようとするなら往復2日以上はかかる。

しかもそんな強行軍をしたら兵の消耗が激しい。


横も裏も駄目、ならばどうする?

答えは簡単、後方の騒動に対処が-無理に解決せずに抑える程度の-出来る程度のギリギリの兵を送り、目の前の敵をなるたけ早く撃破、撤退させ、その後に鎮圧出来るだけの兵を後方に送る。


言うは容易いが、行うのは至難。


だが、それでもなお、董卓軍はこの作戦を実行する為に野戦を仕掛けて来るだろう。


それだけ挟み撃ちの恐怖は兵の士気を貶める。


はっきり言ってしまえば、士気を挫かれた兵が守る虎牢関なんて物の数ではないと断言出来る。


その位ならば、可能性がある内に至難とわかっている策、野戦にて道を切り開こうとするのは道理。


「野戦となった場合は、曹操殿との交渉の結果我等呉軍が呂布を、曹操軍が張遼を抑える事で合意した」


ふむふむ、華琳の命で張遼を生け捕って手に入れると言っていたからそれはいい、


「あれ?ならば何故俺が此処にいる?」


という事になるだろう。


「それは…曹操殿との交渉の末、虎牢関を一番に抜ける栄誉を我等呉軍が、そして都に一番に入る栄誉を曹操軍が手に入れる事で一応の決着がついたのだが、その落とし所として隼人殿の隊を我々の援護に貰うと…聞いてなかったのか?」


気遣わしげに俺に話をふってくれる周瑜に心の中で感謝するが、


「聞いて…ない…」


と呻くのは止められなかった。


流石華琳と桂花だぜ。


会談を申し込んだ手前、相手の主力たる呂布隊の相手は孫策軍が行う。


そして呂布を孫策軍が相手するならば、当然張遼隊は華琳軍が相手するんだから、当初の目的の1つは難なく手に入る。


そして虎牢関の一番乗りは孫策軍に譲るのが筋から仕方ないが、都の一番乗りを手に入れる事で名声を上げる目的も達成。


そして都の一番乗りなんて大きな利を手に入れる為に、激戦が予想されるVS呂布に援護として俺をあてる事で孫策軍に恩を売り、軋轢を軽減する事が出来る。


そして、今回のネタで驚かせた俺に対する意地悪も一緒に済ます一石四鳥の手!


「やりゃがったな…」


利がわかるだけにボソリ恨み言を呟くしか出来ない俺、そしてそれを予測されていたであろう事がわかるだけに、更に苦虫を噛み潰したような顔になる。


「大丈夫ですか?隊長?」


今まで俺の言い付け通り黙っていた凪が、心配そうに聞いて来るので、


「大丈夫だ。ありがとな…」


苦笑いではあるが笑顔で安心させる。


「ね~ね~♪最初っから気になってたん…」


「まだ終わってないから我慢なさい。

話が終わっても少しは時間あるだろうから」


何事か言おうとする-凪の事だろうが-孫策を、言葉の途中でぶったぎって遮る周瑜。


「ぶ~ぶ~!横暴だよ冥琳」


不平を漏らす孫策を今回は完全に無視。


「それでだな…野戦で呂布が出て来た場合は、隼人殿の部隊と連携して我が軍から黄蓋部隊、周泰部隊の2部隊を出すので、この3部隊で抑えてもらいたい。

その間に我等の本隊と曹操軍本隊とで虎牢関を破る手筈となっている」


驚いた!呂布1人の為に孫策軍の片翼とも言える黄蓋部隊、遊撃隊である周泰部隊をあてるなんて思い切ったな。


「3部隊も必要か?」


先日自分で呂布を持ち上げに持ち上げたとはいえ、自分の力と周泰の力をある程度わかっていて、しかも伝え聞いただけとはいえ黄蓋の腕は聞いている。


流石にそこまでの安全策は必要ないのでは?

と、思わず聞いてしまう。


「…これは何も、隼人殿の実力を過小評価しているわけではないことを、まず御理解願いたい」


俺の軽口と言っていい問に、周瑜は真剣な調子で応える。


「別に過小評価してるなんて思ってないさ。

呂布の武名は広く知られた所、それに対して慎重になるのは正しい判断だ。

しかしそれにしても…」


慎重過ぎではないか?と、暗に問う。


「それには幾つか理由があるのです。

1つ、呂布の実力がどの位の物か?

これが正確に計りきれない事…」


周瑜だって呂布の風説は調べただろうが、流石に正確な所はわからないのは当然。


だからこれは納得出来る。


「2つ、混乱させる事に成功すれば黄蓋部隊、周泰部隊の2隊が本隊から外れていても、かなり苦戦はするでしょうが虎牢関を破る事が出来る可能性が高い事…」


華雄を欠いた董卓軍に残っている高級将校は呂布と張遼、下級将校ならば高順や李カク、郭シ等複数聞いた事のある者はいるが、正直華雄や張遼と比べてしまうと小粒な感は禁じ得ない。


なのでこれも納得。


「3つに、これは内々の話だが…我々は黄蓋殿を失うわけにはいかない…」


あれ?何か周瑜が言い難そうにしているな。


「黄蓋殿は我等孫呉の宿将にして柱石。

万が一にも失う訳ににはいかない…」


何だろう?孫策がかなりニヤニヤしているんだが?


「ふ~ん…冥琳が祭の事をそこまで心配してるの、言葉として聞くのは初めてね♪」


あ、周瑜の頬が段々真っ赤に…。


「雪蓮!ここは茶化して良い所じゃ…」


「冥琳がワシをそこまで想ってくれておるとは…感激じゃな♪」


爆発した周瑜の言葉に被せて発せられた豪快にして涼やかな声、その源に視線を向ければ…。


2の巻に続く…。

次回はあの人が登場するよ!


まあバレバレだけどねw

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