第10話 4の巻
今回は短いよ!
会談中にトラブルがあって甘寧が退出。
それなのに何故孫策と周瑜はにこやかに談笑しているんだ?
「でもこのままじゃあ神北さんが悪者になってしまいますよ~?」
そこに今まで話に参加せずにいた陸遜まで加わる。
「それは問題よ冥琳。
隼人は私のお気に入りなんだから」
「それが何の関係があるのかはわからんが、
当然後で私から甘寧には話しておこう」
落ち着いて考えよう…まず俺は孫策から橋渡しの役目を期待して呼ばれた、
そして理由を説明されたが納得出来ないで周瑜に挑発…?
「あ~~!!まさか!?」
頭の中で物事を整理していたら気付いた。
「いきなり大声出さないでよ」
「そんな非難は聞かんぞ!まさかとは思うが…」
ニヤニヤとした孫策の茶々を一刀両断して周瑜と陸遜に目を向ける。
「どうした隼人殿?」
「何かありましたか~♪」
まさかとか言ったが今の反応で確信した。
「俺が怒るか試したな!」
断定口調でキッパリ言えば、
「何の事かな?」
「あらあらあら~♪」
誤魔化す気無いよな君等。
「は~……これでも頭の回転には自信があったんだがな~」
何が桂花達とディスカッションだよ!
完全に手玉にとられてるじゃんか俺。
椅子に座ると同時に頭を抱える。
「隼人~怒った~?
でも勘違いしないでね?この策を考えたのも実行したのも冥琳なんだからね♪」
「だが最終決定権は雪蓮の物だがな」
身を乗り出して釈明する孫策に冷静かつ的確な突っ込みを入れる周瑜、
何をじゃれあってんだか。
「……悔しいが手玉にとられたのは我が身の不徳、
誰を恨んだりとかしね~よ。
それにここまでが試験なら本題…華琳と対等の交渉をするだけのネタがあるんだろ?」
このままでは三枚目のままなので思い切ってカマをかける。
「あらあら冥琳気付かれちゃったみたいよ~?」
「ふむ…正直曹操殿へ直接伝えたかったのだがな」
「そりゃ無理だ。
華琳がもし許可を、万が一にも無いと思うが出したとしても、
秋蘭、桂花を筆頭に部下一同が止めるよ」
春蘭は反応が読みにくいからおいといて、
秋蘭達は今は仲間だとしても潜在的敵国との対等交渉など合理的な理由がない限り反対するだろう。
「そうなのよね~…面倒くさい事に」
首を振り掌を上に向けお手上げ状態。
「それは言っても始まらないさ…それで?交渉の材料を聞こうか?」
カマかけが成功-多分に相手方の気遣いを感じるが-したので本題に移る。
「そうね、それでは私から伝えるわ。
良いわよね冥琳?」
最重要機密なのだろう孫策が一応周瑜に聞けば、
「いいえ私から伝えるわ」
周瑜も同意して…あれれ?
「ぶ~ぶ~!何で私じゃ駄目なのよ~」
不満たらたらの孫策に周瑜が優しく問い掛ける。
「隼人殿は大切な時間を割いてくれているのだ。
雪蓮?あなたが脱線せずに話せるのなら止めはしないのだがな?」
非常にイイ笑顔で語りかける。
「……静かにしてるわ」
「宜しい、それでは話を始めようか隼人殿」
「御願いします周瑜さま…」
流れ的に頭を下げて御願いするのが正しい対応だろう。
「隼人殿がかしこまる必要はなかろうに、
だがその方が話がし易いのなら止めはせんがな」
クスリと笑った周瑜は先程の淫靡な雰囲気より魅力的だと感じた。
そして改めて会談が始まろうとした時に、
「周泰お召しにより参上致しました」
天幕の入口から声がかかり、
「入りなさい」
「は!失礼致します」
周泰が入ってくる。
「よっ!周泰ちゃんお邪魔しているよ♪」
俺が挨拶するが会談の席のためだろうか、
ちょこんとお辞儀をして陸遜に促され末席に着席する。
「ふむ、役者もちょうど揃ったな」
「何だ?周泰ちゃんも元々呼ぶつもりだったのかい?」
「ああ、今回の話の中心は明命だからな」
周瑜の言葉に反応したら思わぬ反応が。
「じゃあ甘寧は何故に?」
「周泰だと何を言われても耐えそうだったから…な?」
(うわ!?何周瑜さん恐い!)
言わばスケープゴート役だったわけだ。
しかもそれを俺に隠さず話すとかどれだけ手玉に取られてるんだよ俺は?
「まあ隼人殿が私如きで満足されたのならそれでもかまわなかったんだがな?」
再度クスリと笑い流し目を送る周瑜を見ると満更でもない自分が怖い、
そんなに俺騙されやすいわけじゃないと思うんだが。
「さて、早速だが話をさせてもらおう。
本筋は先程までと変わらないんだが、
隼人殿の言う通りこのままでは曹操殿に何の利もない…」
表情をガラリと変えて再度政治家の顔に戻り説明が始まる。
「その利とは……時に隼人殿は十常侍について知っているかな?」
「この国で暮らすなら…いや、この国で一定の教養を持つ者ならある程度知っているだろうさ」
いきなりの話題転換だが冷静に対処。
十常侍とは元は皇帝の下で直接お世話をする侍従の内特にお側でお仕えする者達の意味だが、
今では実際この国の経済を一手に仕切る裏の皇帝とも呼べる者達になっていた。
ちなみに全員チ○コを切りとばした宦官と呼ばれる特殊な侍従だ。
「そう、その十常侍の内の1人が我々に渡りをつけてきた…」
「!!」
なん…だと?
「名前までは今は明かせないがな」
「……それだけじゃ勿論ないよな?」
衝撃的な内容だがこれだけじゃあ交渉材料にはならない。
「無論だ。
明命、詳しい説明を」
「は!僭越ではありますが説明させていただきます」
周瑜に促され周泰が話し始める。
「私の部下が持ち帰った情報によりますと…」
そこからの話は要約すると以下の通りだ。
1・十常侍は董卓の専横(お前等が言うな)が許せない。
2・董卓の軍事力に抗するだけの兵力はない。
3・しかし(連合軍と董卓軍が激突している)今なら混乱を起こす事は出来る。
4・クーデターが成功した暁には相応の謝礼を考えている。
5・クーデターを起こすのは明日の明朝。
つまり大将軍の何進を殺しました、袁紹が怒って怖いから董卓を頼りました、董卓がまとも過ぎて利権がうばわれました、面白くないから孫策を今度は頼ります。
「阿呆よね♪」
「阿呆だな」
「阿呆ですよね~♪」
孫策軍首脳の阿呆の大合唱に同意はするが、
「阿呆…だけど上手く使えれば…か?」
やっと話の全貌が出て来たので頭をフル稼働させる。
「孫策軍としては…だから…そうなると…」
1人でぶつぶつと呟きながら話を整理すると、
「…問題は兵数か?」
「話が早くて助かるな」
大正解!次は大切なアタックチャンス♪
「そして手頃で話を通しやすい我が軍と?」
「そうだ」
連続正解!え~と緑の1で……じゃなくて。
つまり孫策軍としては何とかこの独占状況を生かしたい、
しかし悲しいかな弱小軍(ここは後述)たる孫策軍には1軍で混乱するだろうとはいえ董卓軍を破るのは至難の業、
ならば我が軍以外でも良さそうだがこれが難しい。
まず袁紹、袁術の軍に頼もうにも位が違い過ぎて手柄を横盗りされるのは火を見るより明らか、
しかもまず袁家2人は宦官が大嫌いで協力してくれる可能性は低い。
次は公孫賛と西涼勢…だがこの2勢力は論外、
本当に国を憂いて参加しているここはもしかすると十常侍に籠絡される可能性が高い。
そして劉備を含む他勢力では荷が勝ちすぎる。
ならば我が軍は?
「連合軍第3位の兵力、十常侍に籠絡されないだけの指揮系統、そして内々に話が出来る可能性が高い俺、
なかなか良いこと尽くめだな?」
「消去法でわるいがな。
しかし良いこと尽くめでもなかろう?」
俺の問いに余裕の笑みで返す周瑜に更に返す。
「そりゃ華琳と桂花の事だから交渉は荒れそうだが…自信があるんだろう?」
「ふっ…愚問だな」
いやいや自信満々だな!
「くっくっくっ…これは特大の交渉材料が出てきたな。
良いだろう、華琳には俺から話を通す!
話が以上なら早速帰らせてもらうぞ?なんて言ったって時間が無い!」
席から立って急かすように退出許可を求める。
「ちょっと待ちなさいよ隼人!?
もう少し話の真偽とか聞かないでいいの?」
俺ではなくて孫策が慌てるのはあべこべだが、
「そんなの華琳や桂花が判断するさ!
それに嘘じゃないんだろう?」
「勿論嘘の訳は無いが」
「なら良いだろうさ!一刻も早く華琳に伝えないと!
そしてもし嘘だったとしても俺の首が飛ぶだけだから気にすんな♪
今の所君等にそこまでされる覚えも無いしな!」
実際に嘘情報で軍を動かしたならば被害は俺1人では済まないが、
俺の心から信頼する頭脳の2人、華琳と桂花が易々と騙されるとは思えないから無問題!
「早く早く退出許可を!俺の気持ちが暴走寸前だ・ぜ☆!」
キラリと歯を輝かせて急かせば孫策が笑いながら、
「何よそれ!?可笑しい♪
いいわ曹操殿には宜しく伝えてね♪」
許可を出してくれたのでありがたく。
「そんじゃみんなまた後でな~……」
ドップラー効果を残して全速力ダッシュ!
軍の境の係の兵にも許可をとっている旨を言い放ち-後ろから走って追い掛けて来ていた周泰を確認してね-ノンストップで華琳の所に急ぐ!
勿論会議に遅れて行くのだから何を言われるかは想像出来るが、
それより今はこの話を華琳に伝えたいから!