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第10話 2の巻

到着時の会議からは怒涛と言って良い時間が流れた。


結局袁術軍は物量で押し切る作戦に出たんだが、

先ず攻城兵器が虎牢関までたどり着けずに悉くが投石機の餌になり、

梯子をかけようにも高さと抵抗の前に灰燼と帰す。


そこからは一方的過ぎる虐殺が始まる、

頭上からの弓矢の雨に崩れた所に投石機の一斉射が重なり決定打に、

袁術軍がたまらず退却しようと反転した瞬間に城門が開きはじめ、


ウオ~~~~~!!


張遼の紺碧の張旗が翻り駄目押しの突撃。


曹操軍はこの好機に城門を押さえようとするも、

袁術軍の統制の“と”もない退却戦に巻き込まれ-数が数だから-虎牢関にも張遼隊にも接触出来ずで終了。


あまりにも見事な防衛戦に相手の軍師の力量を噛み締める。


(謀略の徒賈駆か……流石だ!)


そして全体の人の流れを見るとわかるが、

1人では絶対に手が回らない細かい所でのフォローの的確さ、


(確か陳宮とか言ったかな?なかなか侮れない人物なんだな)


後日結果がわかるまでは本気でそう思いました。


そして袁術軍に組み込まれている孫策軍は、

何とか正面は免れた-とはいえ最前線だが-ようだがそれでも多大な被害が出たようだ。


-夜・華琳軍会議場


「先程袁紹軍から伝令が参りました」


「読み上げなさい桂花」


今、会議用天幕の中には何時もの上級将校が揃っている。


「は!……本日の失敗を踏まえ明日は曹操軍にも先鋒を命ずる……以上です」


まあ予想通りの展開か、

シ水関で功績を立てすぎた劉備軍には任せられない、

諸侯の雑軍では力不足ならばうちの軍以外にないだろう。


「伝令が参りました!」


あれ?伝令はさっき来て今読み上げただろう?


「?……良いわ持ってきなさい」


華琳の許しを得て親衛隊員が書簡を-相変わらず高級な紙だ-春蘭へと手渡し退出する。


「華琳さまこちらです」


春蘭から華琳へと書簡は渡されそして桂花へ。


「読み上げなさい」


「御意、……!…華琳さま!?」


あらら?何が書いてあったんだ?


「桂花、良いから読み上げなさい」


華琳は冷静なまま繰り返す。


(額の怒りマークが怖いが…)


以前も言ったが華琳は指示を二度出すのが大嫌いなんだよ。


「申し訳ございません!

……ついでに諸侯軍20,000もつけてあげますわ。

感謝なさいお~ほっほっほっ♪……」


一拍置いて、


「何よこれ!邪魔にしかならないわ!!」


大絶叫!キレてます!キレまくってます!!


「何考えてるの!?袁術軍だけでも面倒なのに、

諸侯軍なんて統制のなってない軍に居られては身動きとれないじゃない!!」


はっはっはっ俺もお手上げだからな~。


「は~……麗羽の馬鹿さ加減には慣れたつもりだけど……改めて馬鹿ね…」


頭痛が酷くなったのかこめかみを押さえる華琳。


「……桂花、策はたてられそうかしら?」


「……申し訳ございません少しお時間をいただけますでしょうか?」


まあ桂花と言えどいきなりこれじゃあ即興で策を練り直すしかないだろう。


「許可しましょう。

それまで会議は一旦休憩とします、秋蘭!」


「は!一時解散!」


秋蘭の合図で三々五々散る皆。


「隊長、お待ちしておりました」


あれ凪?


「どした?」


「孫策軍から使者が来ております。

会議中ですのでお待ちいただいておりましたが、

いかが致しましょう?」


「華琳じゃなく俺に?」


普通戦中はそうそう他軍に使いを出したりしない。


そして共闘に関しての話なら俺じゃなく華琳に行くだろう。


「まあ良いや案内してくれ」


「は!」


考えても結論なんて出ないだろうしまず会いましょう。


-神北隊陣地


虎牢関への攻城が失敗に終わったため夜営準備に追われる我が隊-他の部隊は既に終わっているが-、

その慌ただしい空間にひっそりと佇む一輪の月見草……詩的だべ。


「お待たせした甘寧殿」


既にこちらの気配は察知していただろうに、

俺が声をかけたのを確認してから振り向く。


そしてその拍子に鈴の音が、


チリ~ン……


何か格好いいな。


「……我が主からの伝言を預かって参った。

そちらの御予定が良いなら話があるのだがと……。

当然他軍の者を呼ぶよりこちらから出向くのが筋なのはわかっているが、

本日の戦の処理のため出向けない事も詫びていました」


淡々と抑揚なく喋る甘寧……酷く人形くさいが、

この前会った時の事を踏まえれば熱い心は持つのだろうな。


「……それに関しては気にはならない。

が、何故華琳でなく俺なんだ?」


「私にはその疑問に答える術を持たない。

申し訳ないが主に直接聞いていただきたい」


即答かい……まあ伝令で来たんだし当然か。


簡単に呼びつけられた感だが、

伝令に甘寧を使うなんて心配りからしてかなりキツい状況の中なんだろうな。


「……わかった行こう。

凪、沙和部隊の監督を頼む。

真桜、桂花の所に行って孫策軍に出向く事を伝えてくれ」


会議が再開された時のための連絡も入れとかないとな。


了解なのぉ


「え、マジで?」


軽快な答えと嫌そうな答え。


桂花の毒舌は凄いからな。


「悪いな真桜」


「本当ですわ。

貸し一つにしときまっさかい今度何か埋め合わせたのんまっせ」


「ああ考えておこう」


凪、沙和、そんな羨ましそうな顔すんなよ。


「んじゃ行ってくるわ」


「いってらっしゃいませ隊長!」


「いってらっしゃいなのぉ♪」


「お土産宜しく~♪」


口々に送り出してもらって甘寧に付いて孫策軍へ…と向かう途中。


「………慕われているのだな……」


思いがけず甘寧から声をかけてくる。


「………」


「?……どうした?」


吃驚して黙り込む俺を怪訝に振り返る甘寧。


「……いや、申し訳ない。

甘寧殿は自分から話しかける事はほぼないと思っていたから吃驚しちまって」


あははと笑いながら答える俺だが、

かなり失礼な事言っているな。


「……私とて木石の類ではない……。

だが、確かに珍しいかもな…」


にこりともせず前に向き直り歩くのを再開する。


「……あいつ等は不安なんだろうな…」


「……不安?」


今度は振り返らずちらっとこちらに視線を送ってくる。


「特に隠す事ではないしな。

あいつ等3人は義勇軍あがりだからな。

正規軍での働き方や動き方、処世術を学ばなければならない。

どうしたって後ろ盾がないのは変えようがないからな…」


苦笑いしながら生臭い話を続ける。


「……聞いた話だとお主も…」


「ああ、俺も後ろ盾なんてないな。

しかし今では俺は曹操軍の上級将校、

それに突っかかってくる阿呆は少ないさ」


特に裏にまで力を及ぼしている事を知っている人間なら尚更だ。


「まあ、それだけで慕われているわけではないのも事実だけどね?」


「……ふん、大層な自信だな」


「当然!俺は顔がこれだが好い男であろうと努力してますから♪」


自信満々ですよ!それも男の魅力の一つだしね。


意外な話相手なんでちょっと話し過ぎたか、

いつの間にやら孫策軍との境界までたどり着いていた。


「おかえりなさいませ甘寧さま!」


「うむ、客人をお連れした」


「孫策さまは救護班の所でお待ちです!」


「ご苦労、神北殿こちらへ…」


短く会話を交わして再度案内してくれる。


(しかし訓練が行き届いているな)


そしてたどり着いたのは見るからに薄汚れた天幕、

所々に血の跡が残り、入りきらなかったのだろう…天幕の周りには多数の負傷兵が寝かせられている。


そんな死と隣り合わせな陰惨な現場で、

一際生を感じる人物が歩き回っている。


「孫策さま、神北殿をお連れいたしました」


甘寧は片膝をつき礼を尽くして首部を垂れる。


孫策は傷病者と一言二言話した後にっこりと笑いかけ、

その後振り向きこちらにやってくる。


「……話は思春から聞いているかしら?」


前置きなしの直球勝負!孫策らしいな。


「いやまだだ。

何か話があるとだけ言われたんで来たんだが?」


「…そう、なら詳しい話しは天幕に戻ってから話すわ」


そう言って先導するわけでもなくスタスタ歩いて行く。


「………?」


あまりの失礼な態度に思わず甘寧を振り返って目で訊ねる、


「……こちらです神北殿……」


華麗にスルーして先導される。


だがその疑問はすぐに解けた。


天幕に向かう途中、兵が少ない場所でいきなり孫策が謝ってきたのだ。


「悪かったわね隼人」


「……謝る位なら初めから相応の対応してくれよ」


少しとはいわず気分を害しているので言葉に棘がある。


「仕方ないのよ。

何て言ったって私は孫呉の王さまなんだから…」


茶目っ気たっぷりにウィンクされながら言われたら流石に気付かなきゃな。


「………孫呉の王としての外聞か……」


「まあそういう事よ」


自分の所属する国の王が他陣営の将に対して呼び出し程度で礼を言えば兵はどう思うだろうか?

兵達は多少なりとも自らの陣営を下に見たり王に対する不信を持つだろう、

孫策はそれを嫌ったんだろうが…、


「しかし失礼だろ?」


流れは納得出来てもダシにされたこちらはおさまりがつかん、

そこまで人間出来てないんでね。


不満を隠さずぶーたれる俺に、


「悪いとは思ってるわよ~」


「…………」


軽い感じで返す孫策と少しイラついた感じの甘寧。


「まあ孫策に会えるんだからそれは良いんだが、

弱小軍に呼び出されてこの対応じゃな~…」


そんな空気を読まず事実を告げれば、


リ~~ン♪


俺の首には甘寧の赤い刀身が突きつけられる。


「……きさま!」


激昂する甘寧を冷ややかに眺めてから孫策に問う。


「見事な腕とは思うが……孫策殿?」


確認の意味を込めて声をかける。


「興覇、隼人は私の客人よ、失礼は許さないわ」


「ですが雪蓮さま!?」


意外な事を言われって顔がありありな甘寧、

それに対して雪蓮は落ち着いた感じで言葉を続ける。


「曹操軍に対して我が軍が小さいのは事実。

それに対して呼びつけて失礼な態度とったのはこっちよ?

あなたが怒るのは筋違いじゃないかしら」


「……く!……申し訳ございませんでした雪蓮さま…」


やっと刀身が離れたよ。


しかし流石没落したとはいえ一国の王、

外交という物がわかってるな。


「でも隼人?挑発のし過ぎは命を縮めるわよ?」


………怖いっす!!


「……了解した」


気をつけよう、甘寧なら火傷で済むが孫策相手じゃ命の取り合いだからな。


そしてそんなトラブルはあったが程なく会議用だろう、

他より一回り大きな天幕に到着する。


「どうぞ」


先に孫策が入り俺も続く。


「失礼します」


さてさて中では誰が待っているやら。

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