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第10話 1の巻

「ひぁ~~!?あれが虎牢関かい!」


シ水関で一度夜営を行って次の日から行軍する事半日、

目前にシ水関に勝るとも劣らない堅固な関が見えてくる。


「シ水関も大概巨大だと思ったが……虎牢関はそれ以上かい」


規模的にシ水関の1・5倍、そしてシ水関が攻めにくさで嫌らしい造りだったのに対して、

虎牢関は迎撃能力を高める方に特化した嫌らしい造りだ。


城壁の上部の鋸壁は弓兵が射撃後隠れられるよう刃部分が高く作られ、

その裏では等間隔に投石機が備え付けられている。


「こいつは骨が折れそうだな…」


これからの戦を想像し武者震いをした俺の空気を読まず。


「隊長……何盛大に独り言かましてますん?

正直きしょいでっせ」


真桜がちゃちゃをいれてくる。


「真桜~~!俺の感慨を返せ~」


頭の左右に握り拳を当てて梅干し責めじゃ。


「止めて~な隊長♪」


別に痛くする気がないから良いんだが、

喜ばせるのはやり過ぎか。


「やって隊長考えてみて~な。

すぐ傍の人がいきなり独り言言い始めたら?」


「そりゃ不気味だわな」


「でっしゃろ?」


「だが許さん」


ぐりぐり。


「いやや~♪止めてんか隊長♪」


なんぞとちちくりあうと、


「お兄ちゃ~ん華琳さまが呼んでるよ!」


何故か季衣が伝令にやってきた。


「どした季衣?」


「だから華琳さまが呼んでるんだって」


思わず聞き返す形になってしまって勘違いさせてしまった。


「違う違う、なんで季衣が伝令の真似事してるんだって意味」


「ああ!え~と……昨日の朝議で……」


昨日の朝議?……あああれか。


「遅刻の罰か?」


「えへへ~♪」


華琳も信賞必罰の人だからな。


「用件はわかった、すぐにいくわ」


「お願いね兄ちゃん!

次は秋蘭さまの所に行かなくちゃ」


元気一杯に走り去る季衣。


「相変わらず元気やねちびっ子は」


正式な伝令だったので静かにしていた真桜。


「子供は元気が一番ってね。

ともかく華琳が呼んでんなら行かなきゃな、

隊は真桜に任すから凪と沙和が来たら三人で待機な」


「いつも通りやね、了解」


手早く指示をだして華琳の所へ。


「兄さま」


「早かったわね隼人」


「遅いぞ隼人!」


可愛い流琉の声と愛しの華琳の声とバ可愛い春蘭の声。


「いやいやどっちやねん」


まともな返答は期待していないが一応突っ込んでおく。


「遅いに決まっている!きさまは華琳さまが呼ぶ前に到着していろ」


いや~無理な事言わっしゃる。


「……それだと華琳のもとに四六時中いる事になるな。

別に俺はそれでも構わんが春蘭はそれでも?」


「華琳さまが呼ぶだろう時だけだ!!

そんなの私の方が居たいわ」


「え~だっていつ俺を呼ぶのかわからんだろう?

なら四六時中…」


「駄目だ!!」


お~お~鼻息荒くしちゃって、

可愛らしい顔が更に可愛くなってるぞ。


「隼人そこまでにしておいてくれ。

姉者も無理を言うものではない」


ありゃりゃ、秋蘭いつの間に?


「華琳さま、お呼びとの事なので参りました。

参じたのが最後になり面目次第もありません」


深く礼をする秋蘭、別に悪いわけではないのに真面目だね。


「あなたの忠誠を疑う事はありえないわ。

ともかく全員集まった所で話を始めましょう」


ニコリと笑みを浮かべた後華琳が切り出す。


「昨日の全体会議の結果虎牢関の先鋒は袁術軍に決まったわ」


-昨日のシ水関会議場


「………という事で我が袁紹軍の精鋭達の尊い働きの下シ水関は落ちました!

しかし、我が軍も相当の被害が出たのも事実!」


凄い良い笑顔でまくし立ててんだが何時まで続くんだこの独演会?


「……結局何が言いたいのじゃ麗羽姉さま?」


あ、地雷を踏む勇者が現れ、


「美羽さま今はまずいです!」


間違った、勇者じゃなく愚者だった。


「何故じゃ七乃?」


あ~この娘阿呆なのな。


「だってこのままじゃ私達虎牢関の先鋒にされちゃいますよ?」


そしてこちらは空気読まない天才か、

瞳の中の知性的に阿呆では無さそうなんだがな。


「あ~ら七乃さん?今何かおっしゃいましたわね?」


猛禽類の目だぜあれ。


「いえいえ何も……」


苦しい言い訳だな!その証拠にその漫画か何かで見せるような頬の汗。


「いえいえそんな謙遜する事はありませんわ七乃さん!

虎牢関の先鋒は美羽さんの軍に任せますわ!

お~ほっほっほっ♪」


お決まりの高笑いで閉める袁紹、やり口が汚いな~。


「うはは~♪我が軍にまかせるのじゃ!」


そして訳が分かっていない袁術と、


「ああ♪はめられているのに気付かず、

得意気なお嬢さまも最高です~♪」


わかっているのに上手く窘めない-てか煽る-部下。


-回想終了


「そこで時間的余裕が出来たので宣言するわ!

私は飛将軍呂布が欲しいわ!」


あちゃー!何時もの病気が発病しましたか。


「一晩考えたわ……だけれども結論は変わらなかったわ」


そんなやりきった顔をされても、


「いや、無理だから」


バッサリ一刀両断。


「……理由を述べなさい隼人」


睨むなよ~思わずキスしちゃうぜ?


だが今したら細切れになるのが確実なので自重。


「申し訳ありません華琳さま。

しかし私も同意見です」


俺が答えようとすると先んじて秋蘭が援護してくる。


「あら?秋蘭まで反対するの?」


「華琳さま、秋蘭や隼人だけではなく私も反対です」


おお!?春蘭まで反対してくれるか。


「華琳さまには感じられませぬか?

あの虎牢関から発せられる気配が…」


そう言って何時もの何か抜けた顔ではなく-頭のネジですね!わかります-、

曹操軍の筆頭武官としての、そして1人の武人としての表情で虎牢関を見る。


「気配?」


釣られて虎牢関を見る華琳。


「…………よくわからないわね?」


まあ華琳は生粋の武人てわけじゃないからな。


「仕方ないよ、因みに華琳には気配が巨大過ぎてわからんのだ。

あの城壁から圧迫感があるだろう?」


見かねて華琳に説明を始める。


「ええ、でもそれは巨大な建造物を前にすれば誰でも……」


一般常識てきにはそうなんだが。


「まあそれも多少あるが……華琳がそんな珠か?」


「……私だって多少は……」


あら?赤くなっちゃって可愛い~♪


「きさま~!華琳さまに対してなんという!!」


ガギン!!


「てめ!今の確実に殺そうとしたろ!?」


何時もの春蘭のツッコミは殺気をあっても抜き打ちの手加減があったが、

今の一撃は両手持ちの大上段切り!

春蘭の必殺の一撃だ。


「ああ死ね!華琳さまへの暴言など万死に値する!」


じりじりと押し込んでくる春蘭の刃を籠手をクロスして受け止め、


「チッ!!」


押し込んでくる刃が肩に食い込むのに怯まずそのまま籠手を滑らせて懐へ、


「く!!」


後退しようとする春蘭だが、


「遅い!」


俺の踏み込み速度に勝てる筈もなく、

交差した腕を更に折りたたみ肘で一撃を…、


「そこまでよ2人共!!」


入れる直前に華琳からの一喝!


俺の肘は春蘭の水月の手前で止まり、

春蘭の刃は根元部分で斬る力は少なくとも頸動脈の寸前に及んでいる。


「どうしたというの2人共?

今のは完全に殺し合いよ?」


止めてくれて良かった。


一度春蘭と2人で視線を交えた後手を引く。


「ですが華琳さま隼人の奴が!」


そして華琳にまで食ってかかるが、


「それでも殺し合いはやり過ぎよ春蘭」


窘められてしゅんとする春蘭。


「いや、華琳今のは仕方ないんだ…」


それを見ながら今の血気に逸った自分を反省する。


「……どういう意味かしら?」


少し考えてから質問してくるのは華琳らしい。


「さっき言ったろ、あの関から威圧感が発せられていると。

生粋の武人ならばあれを感じない筈がない、

言わば上から何かに頭を押さえつけられている感覚か……イライラもするさ」


特に春蘭みたいに感覚で闘うタイプにはこの気配は毒以外の何物でもない。


「……それ程なの?」


「俺も到着するまでは楽観視していたんだがな……予想を覆らせられたよ…」


これじゃあ捕獲なんて夢物語だな。


「無理に手に入れたいなら、春蘭、秋蘭と兵を半分は確実、

最悪なら季衣か流琉のどちらかを犠牲にすれば手に入るかもな」


「論外ね!」


そりゃな、そこまでの犠牲を払うなら諦めるわな。


「しかし……惜しいわね…」


「諦めてくれよ……因みに俺はそこまで無理するなら逃げるからな」


あれと戦うなら捕獲など考えず討ち取る以外考えられない。


まだ姿は見ていないがこの気配の大きさで大体の腕はわかる。


(まさかこんな所で師匠に匹敵する程の気の総量を持つ輩と出会うとはな…)


あの師匠に匹敵するならば何処にいっても無敵だろうさ、

まあ、だからこそ倒す意味をもつんだが…。


「またきさまはそういう事を!」


あらまた春蘭が、


「待て姉者……」


「ぐわ!?」


と思ったが秋蘭が止めてくれた。


ただしそのまま止めてると、


「秋蘭さま!?春蘭さまの顔色が!」


「春蘭さま~!?」


いい角度で襟首掴んでるから息の根が止まるぞ。


「大丈夫だ流琉、姉者はこんな事で死んだりはしないさ」


表情一つ変えずに答える秋蘭だが……春蘭の顔色紫になってるぞ。


「ぐっ!秋………」


あ、落ちた。


「それでは続けましょうか」


確信犯じゃね?


まあ気絶した春蘭を抱き留め続けている所に愛は感じるが。


「しかし華琳さま、私も改めて隼人の意見に賛成です」


「あら、秋蘭も逃げると言うのかしら?」


秋蘭が真面目に話しているのはわかっているだろうに、

華琳は意地が悪い。


「華琳さまが求められるならばこの命捧げるのに我等姉妹、迷いはありません。

が、華琳さまの役にもたたず犬死にするのはどうか!どうか御容赦下さい…」


膝を折り春蘭をお姫さま抱っこしながら秋蘭が首部を垂れる。


春蘭のおかげで舞台効果は完璧、

流石の華琳も決まり悪げに押し黙る。


「はい、華琳の負け。

それじゃあ現実的な話に移ろうか……で、良いんだな桂花?」


今の所全然発言していない-春蘭の首の所ではニヤニヤしてたけど-桂花に話を振る。


「……華琳さま、私も呂布の獲得には賛成出来ません……」


あれ?何で私にふるのよ年中発情毒液男位言われると予想していたんだが。


「桂花も同意見だと?」


「秋蘭はともかくあの馬鹿春蘭やこんな全身精液種馬男と同意見なんて我慢なりませんが、

私の手の者の調べでは呂布は野の獣も同然。

そんな輩を華琳さまの厳格な軍に入れても上手くいくとは思えません」


やはり桂花はこうじゃなきゃな-俺はMではないがな-。


「何ニヤニヤしているのよイヤらしいわね!」


「いやいや別に変な想像なんてしてないよ。

例えば桂花の裸や赤面した顔や変わり種の猫耳の被り物が本物になったなんてしてないぞ?」


力一杯断言してやる。


「いや~!?見るな!触るな!息するな!」


「そう言うなよ桂花~♪」


場の雰囲気を考えて-時間はあるんだから固くなんなよ-少しおどけておく。


しかし桂花の嫌がりようは嗜虐心をそそるな。


「お止めなさいな隼人、桂花?そこまで言うのならば次善の策はあるのでしょうね?」


空気が若干砕けた…季衣、流琉、あからさまにほっとするな。


「当然でございます!

呂布は手綱を持たない獣ならば張遼は極上の駿馬、

必ずや華琳さまの満足のいく才能をもっております」


見える!見えるぞ!!張遼ならば華琳の閨に呼ばれないだろうという打算が!


まあ俺もその意見には賛成だ、

張遼に魅力がないのではなく決定的に百合の雰囲気がないのだ。


(そんな物を感じられる程精通するのは心外なんだが…)


周りがこれじゃな。


「張遼……張遼ね………確かに手に入れられるのね?」


「我が命に換えましても!!」


でかく出たな桂花、

張遼だって歴戦の武将にして超一流の武人、

言うように容易い事ではないはずだ。


しかし華琳よ……興味なさそうな演技が下手だぞ、

先ずはその瞳の輝きを隠せや。


「ん?そろそろ袁術軍が攻撃を始めるようだな」


話が以外と長引いたので結局話は終わらなかったな。


「ならば話の続きは今夜行うわ、解散!」


「「「は!」」」


「了解」


大まかな作戦は昨日決まっているから良いんだが、

あまりその作戦を無に帰すような事しないでくれよ。


今回からこんな風にこまめに更新する方式でいきたいと思います。


早く恋と闘いたいな~♪

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