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氷天の禊  作者: ラキ
ボーダー奪還戦
2/31

ボーダー

 「っと、ここがうちの兵舎よ。一応私が隊長だから、何かあったら言ってね」


 騎士団の兵舎についたはいいが、何やら様子がおかしい。部隊の兵舎には少なくとも二十人はいるはずであり、作戦前なら兵も集まっているはずだ。


 ニックスが不思議がって兵舎の広間に入るが、中にいたのは二人だけだった。自分たちを合わせても四人。どう考えても少なすぎる。これじゃ部隊というより一つの班だ。


 ニックスが立ちつくしているところに、中にいた栗色の髪の男が立ち上がり近づいてきた。なかなかに大きい。2m近くになるのだろうか。体重も100kgを超えているだろう。男はニックスを見下ろし、言った。


 「俺はアラン・フーだ。お前か?リオが言ってた新戦力(・・・)ってのは」


 まるで予め予定していたことのように言った。ニックスがリオの方を見ると、彼女はふいっと目を逸らした。


 「あぁ。多分俺のことだ。俺はニックス。よろしくな」


 ニックスは手を差し出しながら言った。


 「今回限りだろうが、よろしく」


 アランはニックスの手を握った。しかし彼はニックスに心なしか冷たい目線を送った。


 「おいユリ。お前も挨拶しとけ」


 アランは木箱に座って本を読んでいる女性に声をかけた。


 小柄で黒髪のその女性はニックスの顔をじっと見て、気怠げにしていた。


 「ユリ・ムツキ。話はあらかた聞いたわ。よろしく。それで……」


 ユリは一度ふう、と息をついて続けた。


 「あなたも魔法使い(メイジ)でしょ?なんの属性を持ってるの?」


 本来、彼らは自分の持つ属性を隠す。属性を知られ、能力を知られること。それはすなわち自分の弱点をさらけ出すことを意味している。そしてその反面、チームメイトへの信頼(・・・・・・・・・・)を表すために教え合うこともある。背中を預け合う覚悟があって初めて成り立つことだが。


 「俺の属性は水、能力は氷の武器生成だ」


 ニックスは特に躊躇うことなく答えた。そしてニックスは三人を見渡し、こう告げた。


 「俺が答えたんだ。お前らも言うよな?属性も、能力も」


 リオは「仕方ない」と呟いていた。


 「私の属性は雷。能力……というか得意魔法は身体強化ね。ほら、二人も」


 「俺の属性は風。能力は空気を視る(・・・)ことによる探知だ」


 「私の属性は土と火。能力は物体の修復よ」


 ニックスは少し目を見開き、意外そうにした。


 「ユリ、だったか。双属性(ダブル)がいるとは心強いねぇ」


 ユリは「そりゃどうも」とため息混じりに答えた。なにやら眠そうにしている。日が落ちてきているとはいえ、寝るには少しばかり早いだろうに。


 「ユリも眠そうだし、とりあえず作戦を説明するね」



 リオはテーブルの上に地図を広げた。そしてリオは帝国領、国境近くの砦を指した。


 「今回の指令はここ、国境の砦……とりあえず[ボーダー]と呼ぼうか。ここの制圧だね」


 「……おい待てリオ。ボーダーは先々月に奪われたばかりの砦だ。防衛ラインも近いし兵士も多いはずだ。それを四人で制圧するというのか?」


 アランが指摘し、リオは申し訳なさそうな顔をした。


 「向こうにメイジはいないから大丈夫だろって上が受けちゃって……断ったら普通に首が飛ぶし」


 「残念ながら上手くいきそうにないわね」


 ユリがそう言いながら、写真を机に広げた。写真には一人の女性が写っていた。


 「カルミナ・テストード。帝国の第二魔導小隊の隊長ね。今は彼女が砦の護りを任されてるの。頭の切れる奴だと聞いてるわ。既に私たちのことを知っている可能性も否めない」


 「……うちの上司基本抜けてるしなぁ。これはまずい」


 リオは頭を抱えていた。


 「とりあえず向こうのメイジは一人以上いるわけか。とはいえこっちは全員メイジ。一般兵は相手にならないだろ?」


 ニックスは落ち着かせるように言った。


 「……対メイジの訓練をしているとはいえ戦闘力に差があるのはわかってるよ。でも砦全体の戦力も分からない今、文字通りの一騎当千を求められてもおかしくないの」


 リオはものすごく悩んでいる。部下に命を捨てさせることのない方法を探しているようだった。


 「……あー、アラン。あんた索敵できるんだったよな?」


 「あぁ、まぁな。」


 「なら雑兵はなんとか出来る。アラン、その時になったら手ェ貸せよ?」


 安心しようとさせて言ったでまかせではない。ニックスはなんらかの策を持っているようだ。


 「とりあえずは此処でも気を抜かずにいた方がいいな。出発前に一人でも始末されたら既に薄い望みが無くなっちまうしな。他の情報は無いんだろ?向かいがてらなんとかするしかないな」


 アランはそう言うと席を立ち、歩いていった。



 机に置いてあるユリの本。見覚えのあるニックスはそれを取りあげ、聞いた。


 「これ、悪魔伝か?」


 「ん、知ってるの?」


 ユリは不思議そうにしている。


「まぁ少し、知り合いがな」


 「この本、本屋に一冊だけあっていつまでも買われないから、せっかくだし買ってきたの。……作者の得体は知れないけどね。」


 その裏表紙には、作者 ヒノトリ と書かれている。ユリは60年ほど前に書かれたというその本を閉じ、立ち上がる。


 

 「本を読むのもいいけど、明日早めに出発したいから準備はしといてね」


 リオはそう言い、自室に戻っていった。



 出発は明朝。ボーダー奪還へ。

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