会話は大事だと思うので
……私が、エマに提案したこと。
それは今回、暴走し分裂している一年生達を集めて、話をしたいと言うことだ。
「だったら、まだ新入生歓迎会をされていないので、そこで話をするのはどうでしょう?」
「えっ? 入学してから一か月経つわよね?」
私の出勤は週一回で、今は入学式があった四月ではなく、翌月の五月だ。この世界にはゴールデンウィークのような大型連休はないが普通は学校に慣れた頃、四月の月末頃にやると思う。
「……一年生の不仲のせいで、生徒会の皆様が様子見をされていて」
「ああ……」
闇の壁のせいで顔は見えないが、声だけでエマが恐縮しているのが解る。まあ、確かに今の状況で歓迎会をしても、一年生達の雰囲気が悪くなるだけだろう。
ちなみに乙女ゲームの小説でよく見るが、殿下達、そしてヒロインであるエマも生徒会に所属している。もっとも、今は一年生なので補助と言うか、手伝いのようなものらしいが――そんな訳で、エマは生徒会の動きも把握しているのだろう。
「何かあれば、責任は私が取ります……聖女の私が主催だと示す為、もし歓迎会が決まったら飾る花やお茶菓子は、修道院で用意します」
「えっ、それはありがたいですけど……良いんですか?」
「勿論。あ、でも花はともかく、お菓子は修道院で作るからお貴族様が用意するのより、見劣りするかもだけど……」
「え? バザーで買いますけど焼き菓子、すごく美味しいじゃないですか!?」
「あ、ありがとう」
「いえ! 本当のことですから……ユリウス様達も、気に入ってますよ?」
「脳筋だけじゃないのね……」
寄り添い部屋効果で寄付も増えたので、今の修道院ではクッキーの種類を増やした他、マドレーヌやガレットも作っている。
ちなみにエマも言ってくれているが、焼き菓子を卸している店やバザーでも好評だ。出会った後、脳筋が定期的にクッキーを買っているのは知っていたが、どうやらエマ経由で殿下達も食べていたらしい。まあ、別に好感度アップなどのアイテムではないし、売り上げになるのは素直に嬉しいが。
「まあ、まずは生徒会の許可が下りるかだけどね」
「大丈夫だと……と言うか、むしろ生徒会の皆様も喜ぶかと。とにかくまずユリウス様に伝えて、それから生徒会の皆様にも聞きますね!」
「ええ、お願い」
こうして私の提案は無事、殿下と生徒会の許可が下り――出勤の日に打ち合わせに行った後、例年より遅いが二週間後に新入生歓迎会が開催されることになった。