モヤモヤの理由
何とか放課後の相談を終え、私は修道院へと戻る為に馬車に乗った。
そしてラウルさんしかいない状態なので、アリアからライバルと言われたことについて考えることにした。今回は、アントワーヌ様や院長には相談出来ないからだ。
……確かに昔は相手が子供だから、あるいは悩みを解消してくれたのを勘違いしているだからと、私は彼らの気持ちを流していた。彼氏無しと年齢が同じではあったけど、それでも私は二十代の大人だったからだ。それなのに、子供(十代も子供は子供だ)をたぶらかすことなんて出来ない。
けれど現在も、私は脳筋達からは特別扱いされている。そこまで鈍感キャラではないので、そう扱われていると理解は出来る。正直、脳筋は恋愛と言うより、子供が年上の相手に懐いてくる感じだと思っていたが、猪と暴風雨は今は敬愛の方が強いが、何かきっかけがあれば恋愛に傾く可能性があると思ってはいた。
そして私も、幼なじみのような関係なので彼らのことが大切ではあるのだ。しかし、いくら成長しても恋愛対象とは見ることが出来ず――でもアリアのように周囲から見ると、恋愛絡みに見えてしまうのか。
(そもそも、私は修道院にいたいのよ。恋愛するのなら、今の生活を捨てるってことになるのに)
(……カナさん? 前に、私が好きな人が出来たら出て行けるように、献身者のままでいるって言ってくれたでしょう?)
(うっ……あ、あれ? もしかしてイザベル、好きな人出来た!?)
(ううん。好きな人は、カナさんのままよ?)
現世の私に言われて、彼女を言い訳にしていたことに気づき、言葉に詰まったが――話の流れで、もしかしてと思って焦った。当の本人には可愛く否定されたけど。
(修道院にいたいのは、私も同じだから……言い訳とか、そんな風に思わないでね? ただカナさんは、何に対してモヤモヤしているの? 私は、その方が気になるわ?)
(……それは)
恋愛ではないのに、恋愛感情だと決めつけられて、押し付けられたから。
現世の私からの問いかけに、そんな答えが浮かんだが――すぐに私は、それは違うかもと思い直した。
(そういう押し付けは、初めてじゃない)
聖女として敬われ、流石に面と向かっては言われないが、そういう視線自体は向けられたことがある。
だったらこの引っかかる感じや、モヤモヤした気持ちは何なのか。
言語化されたことが、ショックだったのだろうか――考え込み、ついつい眉間に皺を寄せた私に、今まで黙っていたラウルさんが口を開いた。
「……聖女様、俺に話してみないか? うまいことは言えないかもしれんが、黙って聞くくらいは出来るぞ」