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魔法がある世界ですけどね?

 通常、女生徒はエマが着ていたような白いボレロとワンピースを着る。

 しかし、令嬢は「これも制服だから」と男子用の制服を着ているらしい。女性にしては背が高く、更に長い髪をポニーテールのように結い上げているので、凛々しい美少年にしか見えないそうだ。

「らしい」や「そうだ」という言い方になるのは、私はまだ会ったことがなくナタリーから話を聞いただけだからである。保健室にやって来た、あの残念三人組も口々に訴えたが、悪口にしか聞こえなかったので令嬢への評価はノーカウントにした。

 ちなみに残念三人組に対しては、先程まで一通り話を聞いていた。そして彼らの視線の先で、私は口を開いた。


「あなた達の気持ちは、解りました」

「「「では……っ!」」」

「殿下達に叱られ、周りから距離を置かれただけでも辛かったでしょうに……ああ、失礼致しました。私のせいですのに……」

「「「そんなっ!?」」」


 同調を示し、言葉同様に申し訳なさそうに目を伏せると、少年達は途端に身を乗り出してくるのが解った。グイグイ来られた時はかなり引いたが、根は悪い子達ではないのだろう。こちらがしおらしくして見せたら、つけ込んだり調子に乗るのではなくこうして気遣ってくるのだから。

 そんなことを思いながら、私は彼らの前で俯いたまま言葉を続けた。


「それなのに修道院に仕える身故、あなた達に応えることも出来ず。更に、その令嬢についても教師間で共有は出来ますが、具体的にどうするかというのも今は言えず……こうして話を聞くだけの、無力な身で申し訳ありません。ただ、今は何を言っても悪く思われてしまうでしょうから……辛くなった時は、いらして下さいね?」

「「「はい!」」」


 元気よく返事をした三人組に、私は心の中で「よし」と頷いた。

 そして適度にガス抜き出来たのか、晴れ晴れとした表情で保健室を後にした彼らを見て、ナタリーは呆然として呟いた。


「……え? 魔法?」

「違います。ただ相手の話を受け留めてから、こちらの状況を伝えただけです」

「受け留め……」

「人や状況にもよりますが、寄り添いはまず相手の話を聞くことから始まります。遮りは厳禁。先にこちらの言い分を押しつけては、聞いてくれる話も聞いて貰えなくなります」

「…………」

「ナタリー先生?」


 黙ってしまった相手に、小首を傾げるようにして見上げると――ナタリーは、パチパチと瞬きをしてから感心したように笑った。


「いや、年下なのにイザベル先生が、すごく頼りがいがあるように見えたから……流石、聖女様だなぁと」

「まあ」


 見た目はともかく、精神年齢は今の年齢に前世が追加するとアラサーなので、ある意味ナタリーの言葉は正しい。

 とは言え、それを言うつもりはないので、私はにこにこ笑って見せた。

 そして、乙女ゲームに噂の令嬢のようなキャラクターは出るのかと、エマに話を聞こうと思った。

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