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目には目を、身分には身分を

 侯爵家の令嬢として生まれ、聖女と呼ばれる私は基本、大切にされている。

 でも子供の頃や、逆に成長してきた頃、新年のパーティーに出た時に会場から連れ出されそうになり――その度に、こうしてラウルさんが盾になり庇ってくれた。

 神兵は修道士、つまりは平民だ。しかし神に仕える剣士という立場な上、見た目の迫力でこれまでは彼に逆らう者はいなかった。

 ……けれど、今回の令息達は違った。怯みこそしたが、負けじと反論してきた。


「平民風情が、余計な口を挟むな!」

「万死に値するだと? 生意気な、貴族に逆らうつもりか!?」

「イザベル嬢は、我々がお守りする! お前は一人で、修道院に戻れっ」

「「…………」」


 暴言の数々に、ラウルさんもだが私も絶句した。

 学園では身分を笠に着るのは、校則違反だと聞いていた。

 けれど目の前の少年達を見ていると、とてもそうとは思えない。いや、それぞれの親に言われて引くに引けないのかもしれないが、それにしても酷すぎる。


(だけど、身分で物を言われるとラウルさんもだけど、私もマズいか)

(カナさん……)

(ああ、ごめんねイザベル。不安になっちゃうよね……でも、そもそも私、講師だから。それこそ立場上は、目の前の彼らより上の筈なんだけど)


 そう思うが先程、ナタリーの言葉を無視したところを見ると、彼らの中では教師より生徒の方が立場が上なのかもしれない。

 思えば前世でも教師に対してそう決めつけ、クレームを言う子供や親がいた。変なところで前世が反映されているのに内心、ウンザリしていると新たな参戦者が現れた。


「……あなた達こそ、黙りなさい。校内で、騒ぐものではありません」

「てか、ラウルさんは俺でも勝てないんだぞ? 何、勝てない喧嘩売ってんだ?」

「そもそも、身分を笠に着るのは校則違反だ」

「「「あ……」」」


 宰相の息子である、ケイン。

 騎士団長の息子である、エドガー。

 そして、この中の誰よりも身分の高い王太子・ユリウス。

 乙女ゲームの攻略対象であり、そもそもが高位貴族である彼らの登場に少年達は絶句した。

 その隙を突いて、エマが駆け寄ってくる。私と仲が良いのは知っているので、ラウルさんも彼女を咎めることはない。


「お姉さま、大丈夫ですか?」

「……エマ。ええ、大丈夫。ありがとう」

「いえ。むしろ、遅くなって失礼しました……『イザベル様』に目をつけるのは解りますが、こんな風に迷惑をかけるなんて」


 ボソリと呟いたエマの目と声は冷ややかで、けれどだからこそ激しい怒りを感じさせた。同担拒否ではなかった筈だが、彼らの迷惑行為は腹に据えかねたようだ。

 すると、殿下ユリウス達との話が終わったのか、少年達は逃げるようにこの場を後にした――そりゃあ、身分で物を言う彼らが敵う相手ではないだろう。

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