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自分にとっての彼女は

ユリウス視点

 アルス達から聞いていた聖女への訪問を、無事に果たすことが出来た。

 会話と言うか、話を聞くだけで終わらせるつもりだったが、途中で考えが変わった。


「謝罪は勿論だが、私は君に聞きたかった……君を追い出した異母妹エマを、恨んでいるか?」


 事情を知らないイザベルにそう聞いたのは、王宮を出ていった異母兄のことが頭にあったからだ。本人ではないが、似た立場の相手から答えが聞けたらと思ったのである。

 しかし返されたのは、予想とは違う言葉だった。


「恨む以前のお話です」

「何?」

「エマ達母子のことを知ったのは、昨年のことです。顔合わせをして、その後はすぐ修道院に来ましたので……恨む程、一緒に過ごしておりません」

「恨む以前、か……エマは、あんなに暑苦しく君を慕っているのに……随分と、温度差が激しいな」

「……恨むかどうかという話では、ありませんでしたか?」

「恨むことも慕うことも、根っこは同じだと私は思う……だが、必ずしもそれだけではないのだな。感謝するぞ、聖女」

「はい」


 言われてみれば、その通りだ。確かに生まれてから五年間、一緒に過ごした自分とは違うだろう。拍子抜けしたが、恨むと言われればそれはそれでショックだと思うので少しホッとする。

 ……けれど刹那、浮かんだのはエマの笑顔だった。


「別々に暮らしているので、少しでもお姉さまのことを知りたいのです」


 そう言って笑い、アルス達の語る話を聞いてエマはキラキラと目を輝かせた。小さな体全身から、異母姉であるイザベルが好きだと伝わってきた。

 ……最初、異母兄を追い出した自分と重ねていたが、エマは異母兄を慕っていた自分とも同じなのだ。

 照れ臭くて暑苦しいと言ってしまったが、同じように自分がエマに好かれているからこそそう思う。最初は王子だからかと思っていたが、エマのある言葉により今では違うと解っていた。


「……私が勉強するのは、どこまでもユリウス様についていく為です。何があっても傍にいる為には、色んなことが出来る方がいいですよね」


 王子だと思っていたら「何があっても」とは言わないだろう。そして、たとえユリウスが王子ではなくなっても、エマは傍にいると言ってくれた。更に、それからの行動でユリウスへの愛情を示してくれた。

 恨まれてはいないのなら今後、エマとイザベルは歩み寄れるかもしれないが――それとは別に、エマの一番は自分が良いとユリウスは思った。


「エマのことは私が引き受けるから、安心するように」


 だからイザベルに挑発するように言うと、ユリウスは話を終わったとばかりに呼び鈴を鳴らした。

 そして、寄り添い部屋を後にしたところで――自分が言ったことに照れて、誤魔化すように外で待っていた護衛達と共に馬車へと向かった。

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