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アルスとの親密度は?

『そんな訳で、ケイン様に認めて貰う為にも勉強や、淑女教育を頑張ってます!』

『そうなの……』

『そのおかげで後日、アルス様にも認めて貰えたので一石二鳥ですっ』

『認めるって……殿下の婚約者として? それとも、光属性の持ち主として?』


 ケインはともかく、暴風雨アルスの名前が出たのに私は不思議に思って尋ねた。

 他の面々とは違って、暴風雨アルスは平民なのでエマの出自に抵抗はない筈だ。そしてイザベルと違い、エマは教会に属している訳ではない。だから反発があるとしたら、二人に共通している光属性くらいしか思いつかなかった。

 けれど返されたのは、思いがけない言葉だった。


『いえ! イザベル教の信者としてです!』

『……え、何て?』

『ですから、イザベル教の』

『あの、聞こえなかった訳じゃなくてね?』

『そうですか? あのですね……』


 聞こえてはいたのだが、脳が意味を処理するのを拒否してしまった。

 そんな私を他所に、エマは暴風雨アルスとのやり取りを話してくれた。



 それは、週一の勉強会が、何度か行われた後のことだった。


「……君のことを、誤解していたようだ」

「えっ?」


 わたしがノートや筆記具を鞄に入れていると、アルス様が声をかけてきた。

 他の面々がいるとアルス様は基本、敬語だ。だけど今は二人きりなので、素の話し方をしている。


(誤解だから、悪く思われてたのが違ったってことよね?)


 しかし、悪く思われることが――色々あって、どれなのか思いつかない。だから、ここはアルス様の話を聞くことにした。

 そんなわたしの前で、アルス様が話の先を続ける。


「聖女様の家に入り込み、追い出したと聞いていた……だから、いくら見た目が愛らしい子供でも、油断ならないと思っていた」

「……申し訳ないです!」

「いや……こちらこそ、申し訳ない。賢しいが、悪意や害意はなさそうだ」


 エマが自主的にやった訳ではないが、確かに事実で悪である。だから土下座は何とか堪えたが、わたしは深々と頭を下げた。

 そんなわたしに、アルス様が真面目に酷いことを言う。

 下心がバレていたのに内心、頭を抱えていると――アルス様が、優しい声で話の先を続けた。


「……無力な子供だからこそ、自分の役割や居場所にしがみつくのは当然だ。それに何より、聖女様を想う気持ちは本物だと感じた」

「はいっ! お姉さまのことは、誰よりもお……尊敬していますっ」


 推しと言うのだけはかろうじて堪えたが、イザベルに対しての気持ちが認められたことが嬉しくて、パッと顔を上げて力説した。

 そんなわたしに微かな、けれど確かな笑みが向けられる。

 ゲームのスチルで見たような、神々しくも麗しい微笑みを見ながら、私はしみじみと思った。


(……良かった。アルス様が、同担拒否じゃなくて)

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