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ケインとの親密度は?

本日二話更新します。

『そんな訳で、エドガー様とも仲良くなれました!』

『はあ……』

『あ、でも攻略対象って言うより、おと……お兄ちゃんが出来たみたいですっ』


 そう話を締め括ったエマに、私は「今、弟って言いかけたな?」と思った。現世の見た目はともかく、エマの前世は高校生くらいだったようなので、七歳の男の子相手だとそう思っても無理はない。


『……ケイン様は? ツンデレな感じだけど……大丈夫? またキツイこと言われてない?』

『イザベル様が、わたしの心配を……』

『いや、そこじゃなくてね?』

『大丈夫です! デレるまでのケイン様が、ツンデレならぬツンドラなのは知ってましたし! でも、彼の場合はイザベル様が信頼の鍵を握っているので……おかげで、認めて貰えましたっ』

『……え、そうなの?』

『はい! ですから……』


 拗らせキャラだとは思っていたし、デレて貰ってはいたが――乙女ゲームの攻略対象のトラウマを、ヒロインを差し置いて解決していたことに驚く。しかも、当のヒロインが仮にも悪役令嬢な私を利用して距離を近づけるとは。


(何か、盛り過ぎじゃない?)


 そう心の中でツッコミを入れる私に、エマはケインとのやり取りを話してくれた。



「……待って下さい」


 午後の授業が終わり、王宮を後にしようとしたわたしに、ケインが声をかけてきた。足を止め、振り返るとケインもまた彼女の前で立ち止まった。


「さっき、殿下も聞いていましたが……改めて聞きます。今後も王宮に来て、殿下の婚約者になるつもりですか?」

「はい……ただ、殿下の足を引っ張りたい訳ではありません。だからもし、婚約者にふさわしくないことがあれば、遠慮なく仰って下さい」

「……僕が?」


 わたしの言葉に、眼鏡の奥の黒い瞳を軽く見開く。刹那、その目を意味ありげに細めて、ケイン様はわたしに言った。


「良いんですか? 僕に、そんなことを頼んで……平民だからと、つまらないことで言いがかりをつけるかもしれませんよ?」

「ありえません」

「……言い切る根拠は?」


 家柄などで媚びてこられる反動で、自分のことを悪く見せたがる言動についてはゲームで知っていた。

 だからある意味、ケイン様もユリウス様と同じように『彼自身』を見れば攻略出来る――つまり、信頼を得ることが出来るのだと。

 しかし今日、直接ケイン様と話してみてわたしは少し方向性を改めることにした。


「お姉さまを好きな方に、悪い人はいません」

「っ!?」


 刹那、わたしの見ている前にケイン様が真っ赤になる。

 それから、何かを言おうとしばし口をパクパクと動かすと――キッと頬を引き締め、わたしの横を通り過ぎながらボソリと言った。


「……また来週」


 次回を約束する言葉に、わたしは満面の笑みを浮かべて答えた。


「はい! また来週……ごきげんよう!」


 こうしてわたしは、ケイン様の信頼を得ることに成功したのである。

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