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ズレじゃなく、ズル

『アルス様からは、イザベル様に静かに話を聞いて貰うことで、己を見つめ直せたと……エドガー様からは、イザベル様に自分も気づいていなかった弱みを労って貰えたと。そしてケイン様からは、思い込みに目を曇らせずに周りを、自分を見ることを教えられたと』

『……大げさよ? 私はただ、話を聞いたたけ』

『そ!れ!が! アルス様達攻略対象に、響いたんです……わたしの推しカプは、ユリウス様×イザベル様一択なんですが。他の攻略対象から好かれるイザベル様を見て、新しい扉が開くかと思いました』

『あの、好かれるってお互い、子供だからね?』

『初恋は、子供の頃にするものです。逆に、イザベル様が皆さんの初恋泥棒になってくれたおかげで、わたしはユリウス様以外の方とは、多少親しくなっても友達止まりで終わってます』


 壁の向こうでうっとりと呟くエマに、ついツッコミを入れてしまう。けれど、そんな私にキッパリ言い切ると、人のことを何だか酷い評価をして話を締め括った。

 何だかな、と思いつつも私は別に気になっていたことを口にした。


『……親しくなれたの?』


 主にケインだが、他の面々のエマへの当たりは褒められたものではなかったようだ。

 幸か不幸か、当人はユリウスのことばかり考えて、そこのところは気にしていなかったようだが――私が先に暴風雨アルス達に会ったことも関係していたようなので、少し責任を感じていたのだ。


『はい! ズルもしたので、完璧です!』


 それから人聞きの悪いことを言うと、顔は見えないのに笑顔だと解る声で、その後のことを話してくれた。



 アルス達のイザベルの話で、午前中は終わった。

 エマもだが、アルス達が来る時は軽く食事をして、午後の授業をすることになっている。しっかり食べないのは、午後の授業もあるからだそうだ。それ故、野菜やハムを挟んだパンを食べている。


「たくさん食べると、眠くなりますものね」

「お、解るのか? 居眠りしたら、アルスにすごい怒られるから気をつけろよ」


 サンドイッチと言わないように気をつけつつ(見た目はまんまだが)そう言うと、エドガーが笑いかけてきた。実感がこもっているので、居眠りをして怒られた前科があるのだろう。

 微笑ましく思っていると、ユリウスがわたしに声をかけてきた。


「君が私達と一緒にアルスから学ぶのは、魔法についてとこの国や他の国の歴史についてだ……女子供には、退屈ではないか?」


 ……真顔で言っているので、意地悪ではないと思う。

 そしてこの国では、女性は礼儀作法や手芸、ダンスなどは学ぶが、学問は貴族でも読み書きくらいしかやらない(平民だとそれすらしない)。それなのに王子の婚約者候補とは言え、女子供のエマに勉強など出来ないと思われたようだ。

 とは言え、わたしにも言い分がある。


「……私が勉強するのは、どこまでもユリウス様についていく為です。何があっても傍にいる為には、色んなことが出来る方がいいですよね」


 にこにこ、にこにこ。

 何があってもと言ったのは、王太子だからではなく彼自身を想っていると伝える為だ。

 それに、彼のトラウマ(庶子の異母兄が、ユリウスを王太子とする為に身を引いて城を出た)を考えると――愛情もだが、何かの策略で異母兄が現れたら王位を譲って国を出そうな気がする。


(そうなっても、付いていきますからね! ユリウス様!)


 内心で気合いを入れていると、ユリウス様は青い瞳を大きく見開いて――次いで、戸惑ったように視線を揺らしてわたしを見た。

 推しキャラの素の表情を見られたのに、わたしは万歳三唱するのを必死に堪えた。

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