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悪役令嬢は本気で距離を置くことにした

 今後のことを話し、エマを修道院の入り口まで送った後、私は一人で院長室へと向かった。

 そのままだと、幼女の身長的に低いところでのノックになるので、闇魔法で作った影人形に持ち上げて貰ってドアを叩いた。


「はい」

「イザベルです」

「どうぞ」

「失礼します」


 クロエ様の返事に促されて、持ち上げられたまま院長室へと入る。そして降ろして貰い、影人形を影に戻して私はクロエ様に頭を下げた。


「院長様、お願いがあります」

「何かしら?」

「……やりたいことが、出来ました」


 そう言って、顔を上げると――クロエ様を見上げて、私はある提案を口にした。



 前世だと教会にあった、告解室。

 この異世界では元々、無いものだったので私は修道院にある聖堂の物置を改装し(幸い、聖堂内の扉の他に、外から物を出し入れする入り口があったので、大規模な工事は免れた)設置して貰えることになった。


「聖女様!」

「……アルス様」


 完成した告解室を見ていると、背後から暴風雨アルスに声をかけられた。

 教会にも話を通したので、私が始めることについて聞きつけたのだろう。予想はしていたので、驚くのではなくやっぱりと思って振り返る。


「あの、新しいことを始めると聞いて……」

「ええ。アルス様達のおかげで、思いつきました」

「……えっ?」


 そう、暴風雨アルス達の愚痴を聞いたことがヒントになったのだ。

 魔法で多少は補えるが、子供だとどうしても出来る労働に限りがある。だからいっそ『話を聞くこと』自体を労働にすることを思いついたのだ。貴族平民問わず、毎日昼から二時間開放する予定である。

 クロエ様に相談したら「上手くいくようなら、非力な女性や年を取った者にもお願い出来るわね」と賛成して貰えて安心した。とは言え、どれだけ人が来るか解らないので、閑古鳥が鳴くようなら刺繍や編み物などをする予定である。

 ……ただし、これは表向きの理由だ。


「皆様の抱えている悩みや不満を、吐き出して再構築出来る場が必要だと思いました。ただ一介の献身者、更に子供である私には、皆様の話を聞くこと『しか』出来ません」

「そんな……」

「卑下している訳ではありません。むしろこんな私にも、出来ることがあると解りました」


 そこで一旦、言葉を切ると私は申し訳なさそうに目を伏せて、言葉を続けた。


「あと、私には他の仕事もあります……だから、これが私に出来る精一杯なのです」

「聖女様……そこまで考えて……」


 感激したような暴風雨アルスの声に、とりあえず彼は大丈夫かと内心、安堵した。

 そう、真の目的は労働にし一般開放することで、暴風雨アルス達を始めとする攻略対象達を特別扱いせず、一線を引く為である。

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