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ゲームとのズレと、わたしの本音

ヒロイン視点

 推しキャラ・イザベル様は見た目は子供、中身は大人な状態だった。

 正確に言えば、前世の人格が表に出ているのだが――それはまあ、わたしも同様で。しかも事故で死んだ時、高校生だったわたしとは違って、しっかりした大人の女性だった。


「あと、あなたにとっては推しキャラで。王子様ならそりゃあ、私以外にも立候補者がいるだろうけど……あなたに対しても、初回の態度悪かったんでしょう? 過去からの拗らせぶりを知らない子に、一から相手させるの可哀想じゃない?」

「う」


 酷い言われ様だが、確かに惚れた弱みを差し引いても、ユリウス様を始め攻略対象達の態度は悪かった。事情を知っているわたしでさえ思うのだから、何も知らない子だとショックを受けて泣くだろう。


「……でも、それってわたし、ズルくないですか?」


 口ごもった後、わたしはたまらず本音を吐き出した。そして、イザベル様の顔を見られなくて俯いた。

 そう、わたしはユリウス様達の過去を知っている。だから、何も知らずに地雷を踏み抜くことは――ないとは言えないが、多少は回避出来ると思う。


「その理屈で言うと、話を聞いた私もズルくなるわよ?」

「イザベル様は……っ」

「私が良くて、あなたが違うってことはない。まあ、ゲームと違うこともあるから、その時に押しつけたら駄目だけどね……それとも、ネット小説でざまぁされるお花畑な電波ヒロインみたいに、逆ハー狙ってたりする?」

「ないです、ありえませんっ」


 あんまりな内容に、わたしはたまらず顔を上げて首を左右に振った。

 確かにネット小説では、前世の記憶持ちのヒロインが、現実でも乙女ゲームと同じことをしようとして破滅していた。

 そもそも、とぅるらぶに逆ハーエンドはないが――仮にあったとしても、前世でも現世でもそんなことは許されない。貴族以上や富裕層の男性は愛妾を持てるが、女性がやると良くて修道院行き。悪ければ家族の縁を切られ、身一つで家から追い出されてしまう。


「わたしが好きなのは、ユリウス様だけです…そりゃあ、他の皆にも幸せになって欲しいですけど」


 ユリウス様は、愛情担当。自分自身を愛する相手を求めて、それ以上の愛を返したいと思っている。

 ケイン様は、信頼担当。自分自身を見てくれる相手を求めて、その信頼に応えたいと思っている。

 エドガー様は、勇気担当。まだ小さいのに鍛錬を重ねて、周囲の者達を守りたいと思っている。

 アルス様は、希望担当。平民の捨て子だが研鑽を重ねて、周囲の者達に恩を返したいと思っている。

 ……わたしはユリウス様が一押しだが、他の三人の望みも叶えば良いと思っている。


「恋愛じゃなくても、信じたり応援したりは出来ますから」


 そこまで言ったところで、わたしはイザベル様と真正面で向き合っていたことに気づいた。

 固まったわたしの視線の先で、ふ、とイザベル様が微笑む。

 そしてその麗しさに見惚れた私に、イザベル様は予想外のことを言った。


「ヒロインは、あなたに任せるわ……悪役令嬢の私はこのまま、いえ、もっと本気で距離を置かせて頂くわね」

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