表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/113

ゲームとのズレと、わたしの決意

ヒロイン視点

王宮へ行く頻度を週二回→週一回に変更しました。

 わたし、ヒロイン・エマは今年の春から週一回、ユリウス様達と勉強することになった。そんな訳で今日、わたしは一人で馬車に乗り(父に何か思うところがあるのか、王宮側からついてこないように言われた)こうして王宮に来ている。

 達、と言うのは他の攻略対象であるケイン様・エドガー様・アルス様(アルス様は先生だ)がいるからだ。他に女の子がいないところを見ると、自分は無事に婚約者の最有力候補になったのだと思われる。


(これから一年くらいで、見極められて……問題がなければ来年、八歳になったら婚約ってことかしら)


 今のわたしにあるのは、何とかここまで来られたという達成感と――推しキャラであるイザベル様と、立場が入れ替わったのではないかという疑惑だ。

 本来ならイザベル様が、今のわたしみたいに攻略対象達と知り合ったんだろう。そしてゲームでは、ここからユリウス様、あるいは他の婚約者となり(アルスだけは聖職者なので違うが、彼と親しい生徒として)ヒロイン、つまりわたしのライバルになる。


(いや、わたしが婚約者を目指したのは父親に見捨てられたくないからで。別に、悪役令嬢になりたい訳じゃ……あ、でもイザベル様は自分で出ていったから、ゲームみたいにわたしのライバルになることは)


 ない、と自分に言い聞かせようとしたが――攻略対象達から出た言葉に、わたしは驚くことになる。



「あなたが、聖女様の妹君ですか……教師を務める、アルスです。よろしくお願いします」

「何て言うか、普通だな。あ、エドガーだ」

「エドガー、聖女様とは違いますよ……ケインです、よろしくお願いします」

「……エマです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 口々に言われたのに、わたしはカーテシーをして応えた。

 何と、イザベル様はすでにアルス様達と会っていた。

 確かにわたしの素晴らしき推しキャラ様なので、その魅力にメロメロになるのは解るが――反動で、わたしへの対応が雑だ。誰も、名前しか名乗らないのが証拠である。


(同等以上なら、家なり身分を名乗るものね)


 わたしは半分平民だ。しかも、イザベル様の方が好感度が上がっているのなら仕方がない。

 そう思い、ユリウス様を見たわたしだったが――向けられた笑顔に瞬間、全身から血の気か引いた。


「ユリウスだ。よろしく頼む」


 ユリウス様はゲーム内で、何かを諦めたり切り捨てる時、今みたいに綺麗な作り笑顔になる。

 それは、彼の過去に関係していて――ゲームでヒロインに惹かれるのは、エマの性格だけではなく境遇も影響していたのだ。

 だからユリウス様は、ヒロインにだけは本当の笑顔を見せてくれる。

 ……けれど、今更ながら気づいた。

 立場が入れ替わった状況では、わたしはむしろ彼の過去を刺激するだけだ。


(入れ替わったって言うのなら……ユリウス様を癒せるのは、むしろイザベル様)


 だとしたら、わたしがすべきことは婚約者の立場をイザベル様に譲ることだ。

 蔑ろにしていたイザベル様に譲った場合、父親に幻滅されてそれこそ修道院に追いやられるかもしれないが――それよりも、わたしはユリウス様に幸せになってほしい。ゲームでヒロインにだけ見せたように、笑ってほしい。


(まだ、ほとんど話したこともないのに……でも、ユリウス様もわたしの推しキャラ! そして、推しキャラの幸せを願うのが、ファンってものよ!)


「大丈夫ですか?」

「おい?」

「……顔色が悪いですよ?」

「少し休むか?」


 動揺や決意が顔に出たらしく、アルス様達が――ユリウス様まで、気遣って声をかけてくる。


「失礼致しました……貴き方々にお会いするのに、緊張してしまいました。申し訳ありませんが、本日はお暇させて頂きます」


 わたしは何とかそれだけ言って、王宮を後にした。

 そして、待たせていた馬車に乗り――自宅ではなく、イザベル様がいる修道院へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ