表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/113

不自然さはない、筈

 どうしよう、説得力があり過ぎる。現世父も暴風雨アルス脳筋エドガーも、そしてケイン(あだなはまだない)も顔は良いけど中身が酷い。


(……いや、大丈夫。現世のイザベルとか、アントワーヌ様達やラウルさんとか。見た目も性格も良い人も、たくさんいる)


 そう己に言い聞かせたところで、私はふとあることに引っかかった。


(普段は、口にしてないってことは……納得は出来ていないとしても、自分の発言のまずさは解ってるってこと?)


 だが、そうなるとその前の発言との矛盾が出る。

 単なる馬鹿な子供だと思ったが――まずいと解っているのなら、どうして初対面のクロエ様や私に、わざわざそんなことを言ったのか。

 ……しばしの後、その答えに思い至ると、私はにっこりとケイン様に笑ってみせた。


「どうして私が、アルス様達の話をお聞き出来るのかという質問でしたね?」

「……ええ」

「それは、人と話すことで思いがけない発見があるからです……それは、ケイン様も同じでしょう?」

「えっ?」

「『わざと』酷いことを言って、私達の反応を見られて……それで? 少しは、参考になりましたでしょうか?」

「っ!?」

「でも、たとえ得るものがあったとしても、自分を『わざと』悪く見せるのはやめた方が良いですよ?」


 にこにこ、にこにこ。

 笑顔でそう言うと、ケインはしばし見開いた黒い瞳で、私を見て――次いで、その目を据わらせて睨みつけてきた。


「わざとわざとって、聖女様が僕の何を知っているんですか?」


 その反応を見て私は先程、思いついた答えが正しかったことに内心、ホッとした。

 こちらの反応を見ようとしたのが、まず一つ。そして、もう一つは。


(馬鹿ではないけど、それ以上に……この子、自分が『良く』思われるのが、嫌なんだ)


 とりあえず、相手のこだわりと言うか引っかかりは理解した。


(私みたいな転生者って可能性は大分、低くなったかな? 人生二度目なら、それくらいの処世術はありそうだし……まあ、前世からのトラウマかもしれないけど)


 とは言え、私は別にそれらのことについて触れるつもりはない。これ以上、相手と関わる気がないからだ。それ故、私は暴風雨アルス脳筋エドガーの時のように、下手に刺激せずにやんわり受け流すことにした。


「何も?」

「えっ?」

「強いて言えば、一般論……いえ。『私』が悪手だと感じましたので、お止めしました」


 まあ、注意くらいは、初対面でもするでしょう? もっとも、それでお節介だと思われて嫌われようが、私は痛くも痒くもないけどね。

 そう思いつつ、ケイン様の返事を待っていると。


「その発想は、ありませんでした……大変、失礼しました。完敗です」

「…………えっ?」


 そう言われ、深々と頭を下げられたのに今度は私が目を見張る番だった。

 そしてケイン様は、そんな私に更に予想外のことを言ってきた。


「確かにアルス達の言う通り、聡明で謙虚な方ですね……今からでも、遅くありません。還俗し、侯爵家令嬢としてユリウス殿下の婚約者となりませんか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ