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接待の予感と、新たなる展開

 こうしてエドガーとの会話は終わり、彼は修道院の幸せクッキーを定期的に購入することになった。外の店に卸しているので、特に修道院に来る必要はない。


「また来るぞ、聖女!」


 ないのだが、そう言って笑顔を向けてくるエドガーに、私もにっこり笑って言い返した。


「さようでございますか……とは言え、それぞれやるべきことがありますわ。まずはお互い、精進致しましょうね」

「そうか!」


 本音としては「一昨日来やがれ」と言いたいが、修道院の収入に結び付く相手に暴言を吐く訳にもいかない。だから、と私がマイルドに伝えると何かツボに入ったのか、元気良く頷いてエドガーは去っていった。どこまで理解したか解らないが、少しでも訪問の間隔が空くと良いと思う。


「……イザベル? ごめんなさいね。もしまた来るようなら、出来るだけお断りするわね」

「院長様……いえ、貴族の若君ですから。むしろ、無理なさらないで下さいね?」


 クロエ様の言葉に感激しつつも、私はそう答えた。見た目は幼女だが、中身は現世の年齢も足すとアラサーである。つい口が滑ることはあるが、あまり逆らってもいけないことは流石に解る。


(クッキーを買ってくれるお客様だし……また来たら、接待だと思って観念するしかないわよね)

(せったい?)

(今日みたいに、あの子の話相手をすることよ。イザベル)

(まあ! カナさんと話したい気持ちは解るけど、今日みたいにお仕事の邪魔しちゃ駄目だと思うわっ)

(……もう! イザベル、本当に良い子!)


 そしてエドガーの相手をして荒んだ私の心は、現世のイザベルの言葉でほっこり和むのだった。



「アルス! お前の言う通り、聖女はすごかったぞ!」

「エドガー様? まさか、彼女に会いに行ったのですか!?」

「ああ! 俺を否定することなく、受け入れてくれたぞっ。まずは剣の練習を頑張って、成果が出たら会いに行くんだ!」

「そんな……」


 王宮での家庭教師の日。王宮を訪れたアルスに、エドガーは意気揚々と告げた。

 そんなエドガーの言葉に目を見開いた後、アルスがキッと表情を引き締めて言う。


「あの方は、確かに寛大です! ただ一方で、とても謙虚で控えめでもあるのです……今度からは直接ではなく、あの方に会う時は私を通して下さい」

「えー」

「……あの」


 本人知らずフィルターのかかったアルスの言葉に、エドガーが不満げに唇を尖らせると――二人の会話に、別の声が割り込んできた。

 そしてアルスがその声の主に目をやると、黒髪の少年がアルスを見上げて言葉を続けた。


「僕も、その子と話をしてみたいのですが……お願い、出来ますか?」

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