表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/113

何故何故、どうして?

 エドガーは貴族であり、男の子だ。それ故、お菓子作りなど初めてだろう。

 けれど、エドガーは頑張ってキッチリ材料を量ってくれたし、心配していたおしゃべりもしなかった。最初は、きつめに脅したからかと思ったが――少なくとも、真面目にやってくれていることは確かだ。


(どうなるかと思ったけど、結果的に手伝い要員が増えて良かった)


 約束しているから、お礼になるかどうか不明だが、手伝いが終わった後に話そうと思う。

 とは言え、私は自分から話題を振って盛り上げるのは苦手だ。そういう意味では、この焼き菓子作りは確かに正解だろう。それだけ気を配れるなら、そもそも貴族の若君が労働すると言い出すなとも思うが。


(護衛らしい人達、私を怒ったりエドガーを止めたりしなかったものね。困ってはいたけど……同じく困ってる私が、考えることじゃないし)


 そう、先程は空気のように存在感がなかったが、エドガーは一人ではなかった。幼児なので当然だが、軍服を着た青年が二人、護衛としてついてきていた。

 ちなみに、今も厨房の隅っこにいる。流石に騎士様(だと思う)に手伝わせる訳にはいかないので、私達はスルーしている。

 しかし身分の問題もあるだろうが、成人男性(この世界では十八歳以上)と思われる二人がいてもエドガーを止められないとは。


(甘やかされてるから、こんなにわがまま……だと、言葉が悪いかな。やりたい放題? いや、これも酷いか)


 そんなことを考えつつ、私も黙々と材料を量っていった。初参加のエドガーが、あれだけ頑張っているのだ。私も、負ける訳にはいかない。

 そんな私達幼児の手を借りつつ、修道士や修道女の面々は焼き菓子を作っていき――おかげで、たくさんのクッキーが完成した。



「何と言うか……素朴だな?」

「家などで食べるものに比べれば、そうでしょうね」


 そして私達は、場所を変えて話をすることになった。

 二人きりになることは止められたので、院長室でクロエ様とエドガーの護衛がいる中、並んで話すことになった。来客用の椅子に座り、皿に分けて貰った焼き立てクッキーをそれぞれ口に運ぶ。


(うん、素朴だけど……優しい味)

(カナさん、美味しいね)


 私と前世のイザベルが甘味に和んでいると、同じようにクッキーを口にしたエドガーがピタリと止まった。

 貴族以上が食べるお菓子は、今回使われていない卵や砂糖、あとクリームが使われている。だから、口に合わなかったかと思ったが――その顔を見ると、怒っていると言うより呆然としていた。


「……本当だ。心が、軽くなった」

「えっ?」

「だが辛いことも、心が弱っていることもないのに……何故だ?」


 随分と、漠然としたことを聞いてきた。相変わらず、無茶振りにも程がある。

 とは言え、幼児が途方に暮れているのを放ってもおけず――少し考えて、私は少しズルい手を使うことにした。


「何故だと思います?」


 秘技・質問返し。

 ただ自分のことなのに、解らないからとすぐ人に聞くのはどうかと思うので、ここはまず考えて貰うとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ