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幼女が聖女?

 神兵全員が、魔法が使えるという訳ではなかった。

 それでも、ラウルさんを含めて半分くらいは魔法を使えて――神兵はそのまま続けるが、労働に魔法が必要な時はその都度、手伝ってくれることになった。


「今まで、接点がなかったからね……うん、良い傾向だと思うよ」

「そうですよねぇ。しかも、ラウル君? 見た目怖いけど、良い子よねぇ」

「……あの、君付けって」

「同じ年だからね~」


 数日前の夜、淑女教育が終わり、あとは寝るだけになった頃。

 下ろした髪を梳いていたアントワーヌ様は笑みに双眸を細め、寝巻き姿で(これは、私達も同じ白いワンピースだ)伸びをしていたビアンカ様も楽しげに言った。君付けには少し驚いたが、理由を聞くとそういうものかもしれない。素直に納得し、私が寝台に上がったところでビアンカ様が言葉を続けた。


「学園でも、今までの攻撃と防御だけじゃなく『生活魔法』を取り入れようって話があるみたいよ?」

「良いことだ。貴族は魔法属性を持っているが、その魔力の大きさは人それぞれだ。攻撃や防御として使いこなせなくても『生活魔法』は使えるだろう。あれは魔力の大きさより、どれだけ調整出来るかだからな」


 二人が口にしている『生活魔法』とは、私が提案した新しい魔法の使い方のことだ。

 そして学園とは十五歳から三年間、魔法を学ぶ為に通う教育施設らしい。とは言え、そもそも魔法を使えるのは貴族だ。平民はほとんどおらず、実態は社交界デビュー前の令嬢令息の交流の場らしい。


(本当なら、ビアンカ様とラウルさんも通えるらしいけど……義務教育じゃないし、二人とも修道院にいるから行ってないのよね)


 何だか堅苦しそうなので、自分が十五歳になっても同じ理由で免除して貰おう。そう私が心に誓っていると、寝台に腰かけたアントワーヌ様が口を開いた。


「修道院……と言うより、教会も貴族に働きかけ出来る機会が得られて喜んでいるだろう。だからこそ『聖女』の発案だって言って、広めようとしているんだろうな」


 この異世界には神がいて、その信徒が集う教会と、神を敬いつつも世俗との繋がりを断ち、修行に励む修道院とがある。そして、クロエ様が教会へと報告した魔法の使い方は教会にも広まり、発案者の私を『聖女』と呼んでいると言う。


「……それなんですけど。大げさ過ぎませんか?」

「何言ってるのよぉ。今までなかった思いつきなんだから、むしろこれくらいで済んで何よりよぉ」

「……ハァ」


 そう言われてしまうと、何も言えない。せいぜい『聖女』とはつまり女性だから私以外、アントワーヌ様やビアンカ様も当てはまると思うしかない。

 そう自分に言い聞かせながら、私は笑って誤魔化しつつ、いつものように朝、起きる時間の数だけ枕を叩いた。

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