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その後の人生は  作者:
8/8

07:予定外

就職活動のため余裕かできるまでは不定期になります

ギルドに新メンバー募集の登録をしてから一週間。


希望者は一向に現れない。







「そろそろネズミの動きにも慣れてきたぜ」


「それでもたったの銅貨八枚分だけどね」


「うっせー。その内、俺だけでも云十枚分のネズミを狩れるようになってやるさ」


「ネズミに嵌ってネズミだけに特化した専門業者にならないでね」


「ならねーよ!」


アレンとティアが今日も変わらず夫婦漫才を繰り広げてる。


あれから森じゃなくてネズミ狩りを中心にお金稼ぎをする事にしたら、不屈の精神なのか普通に狩った後に腕試しとしてアレン単体でネズミ狩りチャレンジをするのが日課になってる。


余程一度目の失敗がキツかったのか、きちんと防臭魔法の時間内で戻ってくるようになった。


たったの一週間じゃあ大きな成果は出てないけど、逃げ回るネズミを時間内では二匹倒すのが精一杯だったのが今日は四匹。


本人の言う通りネズミの動きに慣れてきたのもあるんだろうけど、アレンの学習能力は意外と高い。


真正の天才に敵う程じゃないけど、一般の基準からしたら頭一つ二つは飛び出してるタイプ。


慢心せずに今みたいな向上心を持っていられたら大きく大成できる筈だ。


ティアの方も信仰心が高く、ネズミ狩りの傍らしっかりと祈りを捧げてるし、ギルドの資料を読んだり私に聞いたりして知識を深めてる。


今はメンバーが増えるまで安全重視でいってるけど、もっと経験を積めるような依頼をこなせばもっと成長出来るんじゃないかとも思う。


難しい依頼を成功させれば新メンバー募集にも人が寄ってくる筈。


(でも今の私じゃ、何かあった時にフォローしきれない)


必要はあったしだからこそ二人とパーティを組んだのだけど、ふとした時に封じた魔力が恋しくなる。


私もまだこの少ない魔力での立ち回りには不慣れだし、まだこのパーティで難しい依頼に挑戦する段階にはなってないと分かってるのに、そうした欲求が湧くのはかつての旅の弊害かもしれない。


……ダメだな、こういう後先考えない行動が危ないのに。


「専門業者って言ったら、別の所でネズミ狩りを生業にしてる人の中には逃げ回るネズミをどれだけ狩れるかに人生を捧げてるって人もいるらしいよ。最初はアレンみたいにネズミで腕試しのつもりだったけど、ドンドン入れ込んじゃって気付いたら、ネズミ以外に興味が―――」


「ニューアまで変な事を言うのはやめろ!俺はなんねーから!俺はドラゴンや巨人とかを討伐して6ツ星になる男だからな!」


「因みにネズミ狩りだけで4ツ星認定された人もいる」


「…………マジで?」


「うん。30年間ずっとネズミ一筋で―――」


「絶対しねーよ!?」


「アハハハハ」


考え過ぎな時はクールダウンの為にアレンへのおちょくりに参加するけど、これが中々に面白い。


ティアが時たまからかいたくなる気持ちも分かる。


「どれにしても、新しい人は中々来てくれないね」


「やっぱ1ツ星じゃあ見向きされねぇんだよな。やっぱ直接勧誘した方がいいんじゃねぇの?」


「まぁ、勧誘した直後のゴタゴタにギルドを仲裁を求めないならそれもありではあるよ。そこら辺は多数決かリーダーの判断で決めたらいいよ」


「ならニューア、どうする?」


アレンがこっちを向いて聞いてくるけど、人の話を聞いてたのかと。


「だから私じゃなくて多数決かリーダーの決定。どうするかは私がアレンに聞きたいんだけど」


「え?リーダーはニューアじゃねえの?」


「なんでそうなる。私は二人のパーティに後から入って来たんだよ。で、話を聞く限りアレンが冒険者になるからティアは付いてきたんだから、リーダーはアレンがやるべきでしょ」


「おいおい、登録前にパーティに入ったんだからリーダーは知識とか能力が高い奴がすべきだろ。おい、ティアはどう思うよ?ニューアだよな?」


「根本的な責任からしてアレンでしょ。ね、ティア?」


「そうだね。二人とも互いを認めてるなら、咄嗟の判断力のあるアレンをリーダーにして知識や経験不足を補うためにニューアをサブリーダーにしたらいいんじゃないかな。緊急時以外は今迄通りに話し合えばいいんだし」


私とアレンに聞かれたティアは、軽く笑いながら言う。


「ほら、やっぱりアレンだ」


「サブリーダーなんだから変わんねぇだろ。お前の顔を立てるためにティアが気を使ってやったんだよ」


「メインとサブの間には大きな隔たりがあるのは明らかでしょ。でもリーダーが言う事だし、『はいその通りです』って言ってあげるよ」


「おーおー、サブリーダーはやっぱ口が回るなぁ。口下手な俺じゃあこうはいかねぇよ。これならリーダー適正はニューアの方が高そうだ」


「一度決まった事をくだくだ言うのは――――――」


「二人とも?」


静かに聞こえる声に、私とアレンは口を閉じる。


二人してゆっくりと首を動かして見る先には、何時もみたく微笑んでるけど目が笑ってないティア。


両手で持つ杖槌メイスが太陽の光で鈍く光ってる。


「まだ言い争う事があるの?」


「「ないです」」


「そう。じゃ、ケンカせずにギルドに行こう」


「「はい」」


体感温度が大部下がった中、アレンとの言い争いを止めてギルドに向かう。


隠れ熟練者の面子と意地?


冒険者に一番大事なのは危機管理能力であって、そんなのは対して重要じゃない。


撤退するべき時に撤退できる能力こそが、冒険者が過酷な冒険で生き残るのに必要不可欠なものだ。


……まぁ、それはさて置いて。


ギルドについた私達は受付に討伐証明となる尻尾の束を提出してその分の報酬をもらった。


普通ならそのまま終わりなわけだけど、今回は受付の人が私達を呼び止めた。


「皆さんが出していた人員募集に参加希望の方がいらっしゃいました」


「マジで!」


「はい。こちらが現段階での開示情報となります。このままパーティ入りを希望されるのであれば一週間以内での顔合わせの段組みを行いますが、如何しますか?」


「うーん……」


開示情報には


『☆1/男性/メルガル皇国出身/闘士』とあり、簡単に自分が出来る技能が幾つか続いている。


技能に関しては自己申告な為、多めに申告したり逆に申告せずに隠していたりするから参考程度に見るのがいい。


正直な所、この段階でパーティに入れるかどうかは判断つかない。


「ニューアはどう思う?」


「これだけだと決められないから、ギルド会館でギルド職員立会いで顔合わせがいいと思う」


「んじゃそれでお願いします」


「ギルド会館での顔合わせは問題はありませんが、職員立会いとなると手数料で銀貨1枚となりますが大丈夫ですか?」


「え?すみません、パーティに関してのギルド依頼には手数料がかからないんじゃ?」


慌てて聞き返すと、受付の人が少し困った顔で返答する。


「すみません。二年前のギルド規約更新で改訂が行われ、職員立会い希望に関して手数料が発生する様になったんです」


「な……」


二年前なら前のパーティと冒険してたけど、その頃にはギルドに立ち会いをお願いする必要もなかった時期。


それにギルド規約は十数年更新が行われてなかったのもあって、チェックを疎かにしてしまってた。


帝国は自国貨幣レートをやたら神経質に管理してるから、今も銀貨1枚は大銅貨5枚分だったはず


当然ながら私達のパーティに銀貨を払う余裕もないし、全員の個人貯金も合わせても大銅貨二枚いくかどうか……


二ツ星なら気合を入れたら払えるけど駆け出しの一ツ星だとかなり厳しい値段設定な辺り、どこぞの幹部が現場の労力を新人に割かれるのを嫌ったのがいたんだろう。


立ち会い無しで会うのも出来るけど、相手が変なのだと色々と厄介でもある。


特に農村から腕っぷし自慢で出てきたのは根拠無く自分を特別だと思ってるのが多いから、トラブルになる確率も高くなる。


同じ一ツ星なら仮に戦う事になっても三人の私達で押し切る事が出来るだろうけど、問題は場所。


大概の場所はそういういざこざは御法度、会うならギルド会館一択だけど職員立会い無しなら戦闘になった時点で両成敗。


下手すれば私達も冒険者資格を失ってしまうかもしれない。


でも、いつまでもアレン一人に前衛を任せきるのも――――


「んじゃ、立会いは無しで会うって事で」


「なにしてるの!?」


「え?だって会わなきゃどんな奴かも分からないだろ」


「でも、何かあったら」


「そんときゃ逃げるさ」


あっけらかんにいうのに、思わず口をパクパクしてしまう。


「ニューア、リーダーがこう言ってるんだから一先ずは会ってみようよ」


ポンと優しくティアの手が肩に置かれると、不思議と余分な力が抜けていく。


思って以上に、自分の身体に力が入ってたみたいだ。


「そう、だね。私も、悪い方向に考え過ぎてたし」


最悪、騒ぎが起きてるのを野次馬してる連中の中に入り込めば、強制的に巻き込む事もできる。


ギルドのブラックリストに載ってしまうかもしれないけど、もしもの時は仕方ない。


「ではギルド会館で顔合わせですね。日時等の希望はありますか?」


「なら―――」


気を取り直して、受付に希望する日時を含めた細かな調整をする。


できたら、二人みたいな良い人だといいんだけど。








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