03:下水道
リアルがヤバいので次回は4月になります、
~~~ヒルザス帝国/交易都市ベダン/下水道内~~~
「おお。流石交易都市、スゲェな。こんなとこにも照明魔導具を設置してんのか」
「アレン、あれは魔導具じゃなくて魔法陣よ。ほら、よく見たら何かが付けられてる様子はないでしょ」
流石は帝国随一の交易都市と言うべきか、下水道内は高い天井と壁に刻印された照明魔法陣で隅々まで照らされてる。
当時は魔導具が普及してなかったから火を使わない照明を用意するには魔法陣を使う以外に無かったからだけど、魔導具と違って常に魔力を供給する仕組みを別に用意しないといけない魔法陣をこんなに設置するってなったら、今だと昔以上にコストが凄い事になりそう。
「魔法陣なぁ。アレって用意するの大変なんだろ?それをこんなに用意する必要ってなんだ?」
「全体的に明るくするには単純に数が必要ってのもあるけど、一番は犯罪者や浮浪者の溜まり場になるのを防ぐため」
「は?何で明るかったら防げるんだよ?」
「明るいと下水に潜る以外に隠れる場所が殆どないから。犯罪者の大半はそういう場所を嫌うし、下水道には大ネズミ討伐の他にも2ツ星以上対象で不審者捜索のクエストもあって、冒険者は記録用魔導具を付けて指定された順路を警邏するの。そして、不審者が居た場合は確保するか討伐するわけ。だから浮浪者も冒険者に殺されるかもしれない下水道には住もうとしない」
「なーる。ん?でも下水道にそんなクエだすなら、他の場所にも警邏クエはよ?」
「みんな嫌がる下水道みたいな場所だから冒険者を雇うんであって、普通の所は冒険者を雇わなくても衛士隊が警邏するよ」
「おいおい、衛士の連中は人が嫌がる事を率先してやれって習わなかったのかよ」
「やったらやったであたし達に回るクエストが一つなくなるだけだけどね」
「それに都市からの依頼だから報酬も結構高め。王国だとそれ専門で生計を立てれるぐらい」
「え?マジかよ。こっちだとどうなんだ?」
「2ツ星の依頼は見てないから分からないけど、ベダンはこういうトコにお金を惜しまないから」
「おお……、っていや!俺はドブ浚いじゃなくて一流の冒険者になる為に来たんだ。こんな臭ぇ場所で終われないぜ!」
「そうね。ならそろそろお喋りは止めて仕事しよっか。《守護の祈り》をかけとくから、アレンは準備して」
「あ、はい」
ティアに言われてアレンはいそいそとギルドで貰った密閉されてる袋を取り出した。
「これを開けて放置すればいいんだよな?でも寄せ餌にしては小さいぞ」
「臭いで呼び寄せるんだよ。受け取る時、絶対ギルドと街中で開けるなって言われたのを忘れた?」
「忘れてないけどよ、魔法無しだと数秒も持たないような場所で効果あるのか?」
「使って見れば分かるんじゃない?ほら、近くに居たらニューアの魔法で臭いが消されちゃうから離れて」
「おう」
開けた袋を置き、敵が居ないのを確認してある入口側の角に隠れて見てると、すぐに『ヂュ!ヂュ!』と耳障りな鳴き声が聞こえてきた。
そしてすぐに、大型犬ぐらいあるずんぐりしたネズミが袋に数匹集まってくる。
私は打ち合わせの内容を思い出しながら呪文の媒体となる両手で持つ杖に魔力を流し、ティアも神術の用意をする。
5匹程が一塊状になったのを見計らい、私とティアは《言霊》を開放した。
「《防壁の祈り》」
「《氷結の蔦》!」
「ヂュヂュ!!」
固まっていたネズミ達の周りを薄緑色をした半透明の壁が一部を除いて展開されてる。
壁の無い部分から逃げ出そうとする大ネズミ達を床と壁を伝って伸びてきた氷が全部絡みとった。
大ネズミ達は逃れようと暴れるが、魔力で出来た氷はその程度じゃびくともしない。
「ッシャー!」
大ネズミが拘束されたのを見届けたアレンは一気に距離を詰めて手斧で大ネズミの頭を潰していく。
うん、遠目からみてもグロい。
正直、戦士系の皆さんはよく自分の手で出来るなって感心する。
「うっし、こんなもんだろ」
アレンは手早く五匹の頭を潰し終えた。
拘束する必要が無くなり魔法の制御を止めると、役目を終えた氷の蔦は維持する魔力構成が緩み、そのまま溶けて消えて捕まってた大ネズミの死骸が床に落ちる。
「後は尻尾を刈り取ればいいんだっけか?」
「大ネズミの証明部位が尻尾だから」
「んじゃ、切り落すぞ」
気軽気に大ネズミの尻尾を落してくアレン。
成り立てなのにあの手際、アレンは猟師辺りの生まれ?
ティアも初級神術とはいえ《守護の祈り》や《防壁の祈り》も使えるし、二人とも冒険者成り立てにしては腕がいいし手際もいい。
私が初めてクエストをした時は―――
うん、無駄に過去を振り返っても良い事はないし、止めよう。
それに冒険者は互いの過去を詮索しないのがマナーだしね。
「お疲れ。尻尾は私が預かっておくね」
「おう、よろしく。けど思ったよりも簡単に狩れたな」
「ティアの神術で行動を制限できたから。あれが無かったら倒せたのは1、2匹ぐらいなんじゃない?」
今の私の魔力量だと下級魔法ぐらいしか唱えられない。
そうなると散り散りに逃げる大ネズミ全部を範囲に収められるような魔法は使えないから《氷結の蔦》が外れちゃった奴は逃がしちゃうだろうし、動きを牽制できる火系統はこういう換気の利かない場所では危なくて使えないし。
「ニューアの作戦のお陰だよ。アタシは《防壁の祈り》をあんな風に使うなんて思いつきもしなかったもの」
「魔導士ってのは捻くれてるから。本来の使用法以外でも使えないか考えちゃうだけだよ」
実際は昔のパーティの僧士が便利に使ってたのを見てたからだけど。
神様の奇跡を足場に使ったりするだけじゃなくて野営の時にテーブルにしたりすり鉢にしたりと便利に使ってたな。
挙句は杖槌の先端を囲うように展開して大槌や槍みたいにして敵を倒したり、左右に展開して押し潰したり…………
うん、ティアには全うな僧士でいて欲しいな。
「じゃ、また隠れて他のがくるのを待とうか」
「仲間の血の臭いがする所にくるかな?」
「普通の動物でも共食いするのは居るし、こういう連中なら仲間の死体も喰うだろ。ギルドで貰える寄せ餌が小さいのも、倒したネズミがそのまま寄せ餌になるからじゃねぇの?」
「多分、そうだろうね。倒して引き寄せて倒して引き寄せての繰り返しのパターンで大丈夫だと思う」
「だろ。なら今日の宿代になる程度には狩ってこうぜ」
「調子に乗ってネズミに囲まれて泣いたりしないでよ」
「泣かねぇよ!」
大ネズミに噛まれた場合、その傷の程度に関わらず何もしなければまず感染病で死にます。
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